配信日時 2025/06/27 08:53

「強みの介入」は大学1年生にどのような影響を与えるのか?【カレッジサプリ】

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令和7年6月27日(第4141号)


「強みの介入」は大学1年生にどのような影響を与えるのか?


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話  3153字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は10kmの早朝ランニング。
その他、研修プログラムの企画、1件のアポイントでした。
8月から書籍の出版に向けた、「強みの見つけ方・活かし方」実践プロジェクトを行います。
実際に、論文に基づいてやると、強みは見つかり活かせるのか?をデータも含めて検証する実験企画。ぜひご興味がある方はご参加くださいませ。
(後日ご案内させていただきます)



さて、本日のお話です。

本日は「強み論文」のご紹介です。

私ごとですが、春から大学1年生・2年生に関わる機会が増え、実際に授業で共に関わる中で「そもそも彼らがどのように自己を形成しているのか」「大学生はどんな強みを日常に活かしているのか」に、以前にも増して関心を持つようになりました。

そんな中、東京都内の大学1年生114名を対象に行われた、性格の強み(Character Strengths)に関する介入研究です。

この研究の面白いところは、実験群・対照群を元にした研究というデザインだけでなく、具体的に、「親切心・愛情・向学心」といった大学生らしい強みが日常的にどう使われたかという「リアル感がある結果」であったところでした。

強み活用の介入が、キャリア教育や初年次教育にどう活かせるのか、非常に実践的なヒントが詰まった研究です。それでは早速見ていきましょう!



■今回の論文

タイトル:Increasing the Self-formation Consciousness of First-year University Students based on Individual Character Strengths(「強み(Strengths)」を活用する介入が大学1年生の自己形成意識に与える効果)
著者:Yoshiyuki Morimoto / Yukiko Watabe
ジャーナル:Journal of School Mental Health、2014年
所属:明星大学人文学部福祉実践学科(Department of Social Work, School of Humanities, Meisei University)



■30秒でわかる要約

・この研究は、大学1年生114名を対象に「性格の強み(Character Strengths)」を活用する介入を実施し、自己形成意識(特に努力主義)への影響を検証しました。

・上位5つの強みを使った群(SS群)では、1週間の課題後に「努力主義」と「強み活用感」が有意に高まりました。

・また、親切心や向学心、愛情といった大学生らしい強みが日常の小さな行動に落とし込まれていることがわかりました。



■研究の概要

◎研究目的/背景

大学初年次の学生は、自分の将来像を描くことや、学びへの意欲を持続させることに難しさを抱えやすい傾向があります。
こうした「自己形成意識」のサポートとして、ポジティブ心理学の知見、特に「性格の強み(CS)」の活用が有効なのではないかという視点から本研究が行われました。

特に焦点が当たったのは、「可能性追求」と「努力主義」という2つの側面です。将来に対するビジョンや目標(可能性追求)と、日々の努力に向かう姿勢(努力主義)が、性格の強みを活用することで変化するのかを検証しています。


◎  方法

<方法概要>
・デザイン:3群比較実験(上位CS群・ランダムCS群・コントロール群)、介入期間は3週間
・参加者:東京都内の大学1年生114名(SS群=24名、RS群=28名、Control群=62名)
・尺度・測定ツール:
 - VIA-IS(VIA Inventory of Strengths/48項目版)で性格の強みを測定
 - 自己形成意識尺度(2因子:可能性追求・努力主義)
 - 強みに関する主観的評価(当てはまり感・活用感・重要度)
・介入内容:
 - SS群:上位5つのCSをフィードバック → 1週間、新しい方法で強みを活用する課題
 - RS群:ランダムに選ばれた5つのCSをフィードバック → 同様の課題
 - Control群:介入なし
・分析手法:対応のあるt検定・分散分析(ANOVA)など

< 全体構成と流れ(3週間)>
本研究は、2012年5月〜8月、10月〜12月、および2013年5月〜7月にかけて複数回に分けて実施されました。

第1週(Step 1)
・すべての群に対して「pre-test」
・測定内容:自己形成意識尺度(可能性追求・努力主義)、VIA-IS(SS群・RS群のみ)
第2週(Step 2)
・SS群:上位5つのCSをフィードバック → 課題「自己の強みを新たな方法で活用」
・RS群:ランダム5つのCSをフィードバック → 同様の課題
・Control群:介入なし
※主観的感覚(CS当てはまり感・活用感・重要度)を「fb時点」で測定

第3週(Step 3〜4)
・Step 3:1週間のHW実施(SS群・RS群) → 活用内容を毎日記録
・Step 4:post-test(すべての群)
→ 自己形成意識尺度・CS活用感・重要度の再測定


■主な結果

<主な結果>
・努力主義得点:SS群のみ有意に上昇(M=25.9→27.6, p<.05)
・CS活用感:SS群のみ有意に上昇(p<.05)
・RS群・Control群:有意な変化なし
・活用された強み:約50%が親切・向学心・愛情・感謝

<活用例>
・親切心:友人にノートを貸した、誰かを手助けした
・愛情:家族に気持ちを伝えた、プレゼントを贈った
・向学心:授業での学びをさらに深掘りした
・感謝:身近な人に「ありがとう」を伝えた


■結論:研究からわかったこと

<結論>
・上位の性格の強みを意識的に活用すると、自己形成意識のうち「努力主義」にポジティブな変化が見られた
・「その人ならではの強み」を新しい形で使ってみるという行動が、自己認識や自己効力感を高めることにつながった可能性
<研究の限界>
・参加者が女性に偏っており、サンプルの多様性に課題あり
・介入期間が1週間と短く、持続的効果の検証が未実施
・「教育的価値の高い強み」に偏った可能性があるため、文脈に応じた強み選定が必要



■まとめと感想

強みの研究は数多くありますが、「日本の大学一年生」に対する研究で、上位5つの強み or ランダムに割り当てられた5つの強み or 何もしない群という具体的な研究は、実際にまさに自分がやってみたい!と思っていたものでもありました。

それが10年前にこのように検証していただけたことは、まさに先行研究のありがたみの極みだなあ、と感じるものでもありました。

特に思ったのは、「あなたらしい強み(TOP5の強み)を新しい形で使ってみよう」というシンプルな介入の効果です。親切心や向学心といった、実に“大学生らしい”強みが選ばれ、日常の行動に変化が生まれたという実例も、納得感があります。1週間ではありますが、そうしたアクションが、努力主義という自己形成意識が高まった点も印象的でした。

私自身も、若かりし頃(今も若いつもりですが)、「自分はこれが得意かも?」と感じた瞬間が、後々まで支えになっていたことを思い出します。こうした介入を、もっと一般的にできたら面白いだろうなあ、そんなことを思った次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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 【編集後記】
 ◯強み文献おかわり100本ノック:91本目
◯今月の健康&運動習慣:6月のランニング距離95km

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