配信日時 2025/06/26 06:29

「モチベーションとは何か」を紐解く ー5つの理論と歴史から解説しますー【カレッジサプリ】

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令和7年6月26日(第4140号)


「モチベーションとは何か」を紐解く ー5つの理論と歴史から解説しますー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話  3753字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は、午後から外部人事パートナーとして関わらせていただいている会社様への
コーチング&コンサルティング。

また、大学の授業の動画審査や
夜からは1件のパーソナルコーチングなど。



さて、本日のお話です。

本日も、大著『世界標準の経営理論』の全章レビュー、
引き続きお届けしてまいります。

「モチベーション」という言葉は、多くの人が日常的に使い、なじみのある概念ではないかと思います。

一方で、「モチベーションとは何か」「どうすればモチベーションは高まるのか」といった問いに、体系立てて説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。

実はこの「モチベーション」という誰もが関わるテーマについては、1940年代以降、数多くの理論とともに、多くの研究者が解明を試みてきました。

今回の章では、そうしたモチベーションに関わる5つの主要理論+1を整理しつつ、それらをリーダーシップと掛け合わせて考察する著者独自の視点も展開されており、とても興味深い内容でした。

それでは、早速見ていきましょう!



■モチベーションとは何か?

まず本章では、モチベーションの定義・全体像・種類について整理されています。

日本では「やる気」「動機」「熱量」などと表現されることの多いモチベーションですが、心理学・経営学における定義は以下の3つの要素から構成されます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<モチベーションの3つの要素>
・1.行動の方向性
・2.行動の程度(活力、規模)
・3.行動の持続性
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

つまり、「人を特定の行動に向かわせ、熱意をもって持続させる」ことがモチベーションの本質であると著者は述べています。

また、モチベーションには外発的動機と内発的動機の2種類があり、前者は報酬や昇進など外部要因によって高まるものであり、20世紀前半の心理学ではこちらが重視されてきました。

一方で、内発的動機とは、外部からの報酬がなくても「楽しい」「やりたい」といった内面から湧き上がる動機を指します。



■理論1:ニーズ理論(1940年代〜)

最初に紹介されるのは、マズローの欲求5段階説に代表される「ニーズ理論」です。

「マズローの5段階欲求説」は、生理的欲求→安全欲求→所属欲求→承認欲求→自己実現欲求という5つで成り立つとされます。こうした「欲求」を達成し、次の欲求に向かうようなものがニーズ理論のイメージです。

(ちなみに前半の3つは外発的動機に近く、後半2つは内発的動機に近いとされています。なお、マズローの理論は有名ではありますが、科学的には完全には支持されていないというのが現代の研究の見解です)



■理論2:職務特性理論(1970年代〜)

1970年代にエール大学のリチャード・ハックマンが提示したのが職務特性理論です。

これは「仕事の性質が内発的モチベーションに与える影響」を説明する理論で、以下の5つの職務特性が紹介されています。

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<内発的動機を高める職務特性>
・1.技能の多様性:多様な能力を必要とする
・2.職務の完結性:仕事を最初から最後まで携われる
・3.職務の重要性:他者の生活・人生に影響を与える
・4.自律性:自分で裁量をもって仕事ができる
・5.フィードバック:成果を自覚できる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

たとえば、大企業からスタートアップに転職した人が「以前より、顧客の声が直接聞こえる」「全体に関われる」「自分で仕事を決められる」など感覚を味わい、結果モチベーションが高まった、みたいな話を聞くことがありますが、まさにこの理論で説明できます。

ちなみに私自身、8年前に独立してからモチベーションが下がったと感じたことがほとんどありませんが、それはまさに、上記5つの職務特性がすべて満たされているからだと強く感じています。
(実際、自分で事業をしている人の仕事満足度は高い傾向がある、という研究もあります)



■理論3:期待理論(1960年代〜)

ここからは認知心理学ベースの3大モチベーション理論です。最初は期待理論です。この理論は、「人は合理的に判断をするが、その判断はあくまで“認知”によって規定される」という前提に立ちます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<モチベーションを左右する3要素>
・1.期待:行動が成果に結びつく確率
・2.誘意性:成果に対する価値
・3.手段性:行動が成果に結びつくかの認識
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私が前々職の、営業時代に「新規獲得キャンペーン」を全力で頑張れたのは、1.目標が現実的で達成できそう(行動を達成できる期待がある)、2.インセンティブが魅力的だったから(期待以上の見返りがある)でした。

もし「がんばっても達成できなさそう」とか「達成しても見返りがしょぼい」とかだったら、モチベーションはわかなかったでしょう。このように、「見返りの期待値」が高いほど、モチベーションも高まるわけです。



■理論4:ゴール設定理論(1960年代〜)

1960年代後半、エドウィン・ロックらが提唱したのがゴール設定理論です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<ゴール設定理論の2つの命題(ルール)>
・1.より具体的で難易度の高い目標は、モチベーションを高める
・2.明確なフィードバックがあることで、さらにモチベーションが高まる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

こちらは感覚的に良くわかります。たとえば、私の場合、ウルトラマラソン(100km)というチャレンジングな目標を立てたほうがモチベーションが上がります。
そして、完走したときの達成感(フィードバック)があると、また次のレース(177kmとか263kmとか)に挑戦したくなりました。

仕事においても、難しい課題に挑戦し、参加者からのフィードバックを受けることで、大きなモチベーションにつながるな、というのはきっと皆様も経験があるのではないでしょうか。



■理論5:社会認知理論(1960〜1970年代)

3つ目の認知心理学ベースの理論が社会認知理論です。スタンフォード大学のバンデューラが発展させたもので、キーワードは「自己効力感」です。

自己効力感とは、「自分がある状況において、必要な行動をうまく遂行できるという認知」であり、「自身の能力に対する自信」ともいえます。

自己効力感が高い人は、高い目標を設定し、自分を律しながら努力を続けることができ結果として成果も上がり、その成功体験がさらに自己効力感を高めるという上昇スパイラルが生まれます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<自己効力感を高める要因>
・成功体験(過去の成果)
・代理経験(他者の成功を見る)
・社会的説得(周囲の励まし)
・生理的状態(精神的・生理的な影響)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(そして、これらの社会認知理論とゴール設定理論が組み合わされたメカニズムが以下の図となります)



■新しい理論:プロソーシャル・モチベーション(2000年代〜)

そして本章で特に面白かったのが、6つ目の理論として紹介されたプロソーシャル・モチベーション(PSM)です。これは「他者の視点に立ち、他者に貢献することに動機を見出す」という理論です。

ペンシルバニア大学のアダム・グラントが提唱し、研究を発展させてきました(著書『GIVE & TAKE』でも有名です)。

PSMが高い人は、「誰かの役に立つこと」を自分の楽しみとして感じることができるのが特徴です。
ゆえに、このPSMは独りよがりではなく、「新規性(新しい)」と「有用性(誰かの役に立つ)」の両立を促すため、創造性(クリエイティビティ)にプラスの効果があるとされています。

ちなみに、企業例として紹介されていたのがリクルートです。
同社では「自分は何をしたいのか」という個人の軸と、「徹底的に顧客に乗り移る(顧客のイタコ化)」という他者の「不」(不安や不満)を両立するから、新しいビジネスを生み出し続けているといいます。



■まとめと感想

章の最後では、モチベーション理論とリーダーシップの関係性についても述べられていました。

著者は、これからの時代に求められるのは「変革型リーダーシップ」や「シェアド・リーダーシップ」であり、それは「一人ひとりが自分は何者かを問い続け、互いに啓発し、知識や意見を交換し合うこと」を促すと述べています。

そのようなリーダーシップスタイルは、「内発的動機やプロソーシャル・モチベーションを高め、結果的に個人のクリエイティビティや組織パフォーマンスの向上につながる」という好循環を生み出すと、著者は述べています。

大学院では、モチベーションやリーダーシップというそれぞれを学んできた内容を、こうした経営学の観点において、相互作用し合う構造として整理するのが新鮮で、勉強になる章でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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 【編集後記】
 ◯強み文献おかわり100本ノック:90本目
◯今月の健康&運動習慣:6月のランニング距離85km

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