配信日時 2025/06/22 07:25

今週の一冊『人間関係の学び方: 人間性豊かな関係を育む「ラボラトリー方式の体験学習」の理論と実践 』【カレッジサプリ】

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令和7年6月22(第4136号)


今週の一冊『人間関係の学び方: 人間性豊かな関係を育む「ラボラトリー方式の体験学習」の理論と実践 』


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話  2233字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。


私事ですが、先日より名古屋に来ております。
その理由は、南山大学人間関係研究センターの公開講座に参加するためです。

そこでは、「体験学習」という方法を用いて、グループの中で起こる様々な事象をとらえる視点を養うことを目指すコースが開かれており、理論と実践の両方を学ぶことができます。
その教科書的な位置づけとして紹介されたのが、本書『人間関係の学び方』です。



ということで、本日のお話です。

毎週日曜日は、最近読んだ本から一冊をご紹介する「今週の一冊」のコーナーです。
本日は、そんなお話に関連したこちらの一冊です。

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『人間関係の学び方: 人間性豊かな関係を育む「ラボラトリー方式の体験学習」の理論と実践』

土屋 耕治 (編集), 楠本 和彦 (編集), 中村 和彦 (編集)
https://amzn.asia/d/bmtpIqj
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「人間関係を学ぶ」と聞くと非常に大きな枠組みのように思えますが、細かく分類していくと、その関係性にはさまざまなレベルがあります。

個人内、一対一、グループ、そしてさらに大きなシステムとしての関係性。
それぞれのレベルで、どのような関わり方が有効なのか。本書はそれを、理論と実践の両面からひもといていく一冊です。

ということで、早速中身を見ていきましょう!



■ラボラトリー方式の体験学習とは

まず、本書のサブタイトルにもなっている「ラボラトリー方式の体験学習」とは何でしょうか?

それは、「特別に設計された人と人とが関わる場において、“今・ここ”での参加者の体験を素材(データ)として、人間や人間関係を参加者とファシリテーターが共に学ぶ(探求する)方法」(津村, 2010)と説明されます。

この体験学習は、以下の3つのステップで構成されます。

1,関わりの体験
2,個人で振り返る
3,共に振り返る(わかちあい)

たとえば、あるワークを行うとします。
それは、制限時間内でチームとしてミッションをクリアするために情報を出し合ったりするワークです(たとえば「NASAゲーム」のようなもの)。

そうすると、グループ内ではさまざまな言葉や行動が交わされます(見える部分=コンテント)。と同時に、そこには言葉にされていない思いや、沈黙の中にあった怒りや不安、願望などが存在するものです(見えづらい部分=プロセス)。まるで氷山の水面下に隠れている大きな部分です。

そして、参加者それぞれが、自分や他者の言動に対して内面で何かを感じているわけです。その相互作用に気づき、個人としてそれを振り返り言葉にすることで、「ああ、あの時そんなふうに思っていたんだ」と、他の人の理解が深まり、そこから大きな気づきが生まれる。

そんなプロセスこそが、「ラボラトリー方式の体験型学習」となります。



■体験学習の背景にある理念

体験学習には様々な手法がありますが、起源のひとつは1947年にアメリカのNTL(ナショナルトレーニングラボラトリー)で行われたTグループです。

その根底には、「人間的な成長」や「一人ひとりの人間が大切にされること」「人は関係の中で生きる」といった原理が据えられており、いわゆる人間性心理学がベースにあります。

ちなみに、最近私が学んだユングの心理学を元にしたMBTI(性格タイプ論)も、「自己探求による人間の発達」をテーマとしており、またマズローの「人間性心理学」も同様に「自己実現」や「人間の統合」というテーマを掲げていました。

NTL、ユング、マズローがそれぞれが直接的に関係しているわけではないにせよ、どれも「人間のあり方」に焦点を当てている点で、深い共通項を感じます。

また全くの余談ですが、先日セッションにおいてある参加者から「人は成果(コンテント)を高めるために関係性(プロセス)を探求するのか、それともプロセスそのものに意味を見出すのか?」という問いがありました。

この問いは、成果を重視する”経営的な視点”からの問いかけにも感じられ、興味深いなあ、とも思ったのでした。私たちは”目に見える成果を出すべき”という無意識の前提があるようにも感じました。



■本書の構成

さて、本書は、ラボラトリー方式の体験学習を中心に据えながら、人間関係をとらえるための様々な視点や理論が紹介されています。たとえば、

――――
第一部:フィードバックや内省といった体験学習に欠かせない概念
第二部:システムの様々なレベル(個人内、一対一、グループ、構成グループなど)における見方
第三部:カウンセリングの観点(傾聴、フォーカシング、自己概念、ゲシュタルト療法など)とのつながり
第四部:心理臨床の視点(語る、洞察、無意識)との接点
第五部:ファシリテーターとは何か、プロセスにどう働きかけるのか、話し合いをどう進めていくのか
第六部:「体験学習の設計と実践」について、より現場で活かすための知見
――――

などが網羅的に書かれています。この本の魅力は、実践的な知識だけでなく、そこに裏打ちされた理論的な基盤が丁寧に描かれている点にあると感じました。



■まとめと感想

本書は、いわゆるテクニック集ではなく、人間関係――個人・一対一・グループ――をどう見つめるか、そのために必要な視点と理論、そしてその歴史が重層的に語られています。

特に、その人間関係における教育機関の先生方の知見を凝縮した一冊で、実践者や専門家にとっては、「教科書」として手元に置いておきたい一冊だと感じました。

流行のワークショップというと、「人を集めて体験をさせ、振り返らせる」という流れが定番化していますが、その背景にある思想や理論にまで目を向けると、ワークの深みや質がぐっと変わってくる、そんなことを改めて感じさせてくれる学びの多い一冊でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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 【編集後記】
 ◯強み文献おかわり100本ノック:90本目
◯今月の健康&運動習慣:6月のランニング距離68km

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