配信日時 2025/06/10 08:21

組織が学ぶための「3つのプロセス」とは? ー知の探索&知の深化の理論ー【カレッジサプリ】

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令和7年6月10日(第4124号)


組織が学ぶための「3つのプロセス」とは? ー知の探索&知の深化の理論ー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話  2345字/読了時間3分)

■こんにちは、紀藤です。

昨日は、人・組織に関わる経営者仲間や、
また企業の人事の方などを含めた勉強会でした。

ひさしぶりに鎌倉に行きましたが、
風情がある雰囲気がとてもよく、移り住みたくなる人が多い理由も、
なんだかわかるような気がしました。
(Iさん、Kさん、いつも企画ありがとうございました!)



さて、本日のお話です。

本日も、60万字の対策『世界標準の経営理論』の全章レビュー、
引き続きお届けしてまいります。

本日のテーマは、「第12章 知の探索・知の深化の理論」です。

1991年に発表され、2万3000件という膨大な引用数を誇るジェームズ・マーチの論文からの知見であり、後の研究に大きな影響を与えた、エポックメイキング的な内容だそう。

なんだか聞き慣れないようですが、読んでみると「わかるわかる!」という内容で、非常に身近に感じるものでした。

ということで、早速中身を見てまいりましょう!



■人も組織も「学び続けること」が大事

第12章からの、軸となるテーマは「イノベーション」と「組織学習」です。この言葉の意味は、いずれも”何かを経験することで学習し、新しい知を得て、それを成果として反映させる(P223)”ことを指します。

私たち、個人の学びにも「経験学習」という言葉が有名です。私たちは何かを”経験”し、振り返って”省察”し、”教訓”を得て、次の”実践”に活かすというループを行いながら、知を獲得し、そして成果に繋げていきます。

まさに同じことを、組織も行っていく、というわけです。



■組織が学ぶ「3つのプロセス」

では、どのように組織は学ぶのでしょうか?

本書で引用しているのが、アールゴーティ(2011)による、組織学習の骨組みをまとめた3つのプロセスです。簡単に言うと、こんな流れです。

――――
●サブプロセス1:組織・人・ツール → 経験
・組織・人は「限定された合理性」を前提とする。組織がその限られた認知を広げるために、「サーチ(探索)」を行う。

●サブプロセス2:経験 → 知
・組織は経験を通じて、新たな知を獲得する。以下の3つのルートがある。
(1)知の創造(例:SECIモデルなど)
(2)知の移転(例:技術提携など)
(3)代理経験(例:同業他社の経験などを観察するなど)

●サブプロセス3:知 → 主体
・「組織の記憶」と呼ぶ。新しく生み出された知は組織に記憶される。
・組織メンバーに記憶される、書面やITツールや製品に記憶されるなど。(トランザクショナル・メモリー・システム)
――――
(P225-226を参考に著者編集)



■イノベーションとは「知の探索と知の深化」

このような大きな3つの枠組みで「組織学習」は行われます。

次に考えたいのが、組織学習の一部でもある「イノベーション」です。
ここで重要なキーワードが「知の探索(exploration)」と「知の深化(exploitation)」なるものです。

「知の探索」(サーチ)とは、「認知の範囲の外に出ること」です。
人も組織も認知に限界があるため、他に良い選択肢があっても、知っている範囲でしか選ぶことができません。だから「外に出る(知の探索)」が必要なわけです。

一方、「知の深化」は、「持っている知をそのまま活用すること」です。
これは見通しの確実性は高く、コストも小さいので、収益性のあるビジネスを構築することができます。

そして、この探索と深化のバランスをとることが「両利きの経営」とも呼ばれ、経営の本質である、とされました。つまり「今しっかり稼ぎつつ、将来のために探索をし続ける」事が大事、ということですね。



■知の探索がおろそかになる「コンピテンシー・トラップ」とは

このように「知の探索」と「知の深化」のどちらも大事なことは、言われてみれば当然のように思えます。しかし、実際には、なかなかこのバランスをとることが難しいようです。

現状は、「ついつい知の探索がおろそかになる」ものです。
なぜ、こうした事が起こってしまうのかというと、それは「知の探索」はリスクがあり、コストもかかるからです。

――――
”知の探索=risk taking”と論文でも定義されているように、知の探索をしても、それがすぐに実を結ぶとは限りません。新しい知を獲得し、それが既存の知と新結合を果たし、まさにイノベーションが生まれれば大金星ですが、それがいつになるかは、わからないのです。

だから、短期の合理的な視点により「知の深化」に力を入れてしまう。
そしてその結果、長期的なイノベーションが枯渇し、自己破壊が起こる。

これを「コンピテンシー・トラップ」と呼ぶそうです。
――――

たとえば、企業の「新規事業部」「イノベーション推進室」などが例に挙げられています。企業は、両利きの経営における「知の探索」のために、こうした事業部を立ち上げます。

「知の探索」はコストがかかります。時間も、お金も、労力もかかり、赤字です。しかし、いつまで立っても、新しい芽は出てこない。1~2年はよいけれど、3年も経つと、「この事業部は、本当に意味があるのか?」と物言いがはじまる。そして予算がつけられなくなる。

そして、その予算を本業として利益を生み出している「知の深化」に当てたほうがいいんじゃないか…というように、「知の深化」に”合理的に”傾倒することになる。そして長期的なイノベーションが枯渇し、組織の持続性が減退していく…。

まさに、「コンピテンシー・トラップ」です。



■まとめと感想

読みながら、全部「私たち個人にも当てはまる話じゃん」と思いました。今、自分が必要とされる能力に、つい私たちは傾倒します。

今いる場所は居心地が良く、また確実性もあるので、そちらに時間とエネルギーを投資する傾向があります。

ただ、そうした「今」だけを見ていて、「今の環境」でしか使えない知識やスキルだけになっていると、将来の見通しは実は危うくなります(知の深化ばかりで、知の探索がおろそかな状態)。

私たちは「学び続ける」ことが必要だと言われますし、納得感があるものですが、それはこうした「コンピテンシー・トラップ」を乗り越えるような行動とも言えるのかもしれません。

私も、「強み」という領域に対して、現在は「知の深化」をしていますが、同時にその分野以外もサーチする「知の探索」を2~3割は常に労力を割いていく必要があるのだろうな、と改めて思うのでした。

組織も個人も、「両利き」が大事。

そんなことを改めて感じさせられた次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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 【編集後記】

 ◯強み文献おかわり100本ノック:90本目
◯今月の健康&運動習慣:6月のランニング距離37km

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