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令和7年6月9日(第4123号)
名経営者たちの教訓は理論化できる?!「カーネギー学派の企業行動理論」からの学び
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2758字/読了時間4分)
■こんにちは、紀藤です。
昨日日曜日は、茨城の妻の実家へ。
また朝から16kmのランニングでした。
昼からは子どもとダンゴムシを集めていました。
むかし、私はダンゴムシを食らっていたそうですが(母談)、
私の息子は、ダンゴムシを恐る恐る触っており、性格の違いを感じました。
その他、大学の授業の打ち合わせなどなど。
*
さて、本日のお話です。
先日より続けております60万字の対策『世界標準の経営理論』の全章レビュー、引き続きお届けしてまいります。
本日の内容は「第11章 カーネギー学派の企業行動理論」です。
さて、本日から第二部「マクロ心理学の理論」 に入っていきます。マクロ心理学ディシプリンというのは、組織単位、つまりマクロのメカニズムを説明するのに適している理論群となります。
ここまでの「第1部 経済学ディシプリン」では「人は合理的に判断する」という考え方をもとに、理論を紹介してきました「(SCP理論、リソース・ベースト・ビュー、エージェンシー理論、取引費用理論、ゲーム理論、リアル・オプション理論など)。
しかしながら、実際に人が合理性だけで判断するには限界がある わけです。そこでカーネギー学派は、こうした経済学への批判を含みつつ、人が複雑な状況の中でどのように意思決定するのかを考えていきました。
面白いのは、このカーネギー学派の企業行動理論が、松下幸之助氏や稲盛和夫氏などの「名経営者の教訓とも通じる内容」になっているという点です。
まずは、理論の前提となる考え方である「カーネギー学派の企業行動理論」とそのキーワードに触れながら、早速見ていきましょう。
それでは、どうぞ!
■「経済学への批判」から始まるカーネギー学派
まず、経済学ディシプリンのおさらいなのですが、経済学における一般的な企業の意思決定プロセスは、以下のような前提に基づいているとのこと。
――――――――――
<経済学による意思決定プロセスの前提>
・合理性:人は合理的に意思決定を行う
・認知の無限性:意思決定者は無数の選択肢や、それぞれの選択肢に対する顧客・競合の反応を事前に十分に見通せる
・最大化:多くの選択肢の中から自社の利益を最大化するものを1つに絞り込める
・プロセス軽視:数学的に最適解を瞬時に導き出せるため、選択肢を徐々に探る「プロセス」は重視しない
―――――――――――
しかし、言われて見ればそうなのですが、実際のところ「人が計算機のようにこのような前提で全てを見通すことは不可能」なわけです。
意思決定には時間的制約もありますし、人間の認知には明確な限界があります。
なので「実際のところ、そんな前提で意思決定、ムリじゃね?」ということで、カーネギー派が、現実には異なる認知により意思決定が行われている(なので認知心理学)として、理論を打ち出しました。
■キーワードは「限定された合理性」
ここで登場するのが、認知心理学に基づくカーネギー学派の最重要前提であるキーワードです。その名も 「限定された合理性」 です。
――――
「限定された合理性」とは:
「人は合理的に決定するが、その認知力・情報処理力には限界がある」 という考え方のこと
――――
1947年に発表された『Administrative Behavior』で ハーバート・サイモン が主張した意思決定の特性は以下のようなものでした。
(ここから)
――――――――――――――――
<サイモンらの主張した「意思決定」の特徴> ー認知心理学よりー
(1)合理性:
・人は与えられた条件下で最適な選択肢を求める
(ここは経済学と共通。ただし「与えられた条件下」がポイント)
(2)認知の限界:
・組織や個人の認知には限界があり、意思決定者はすべての選択肢を事前に把握できない。
(例:100の選択肢があっても、実際には10程度しか認知できず、その範囲内で選択・行動する)
(3)サティスファイシング(満足化):
・事前にすべての選択肢を比較して利益を最大化するのではなく、現時点で認知できる選択肢の中から「とりあえず満足できるもの」を選ぶ
(4)プロセス重視:
・少ない選択肢から行動を起こし、その結果として 新たな認知が広がる → 新しい選択肢が見えてくる。そして、プロセス全体を重視し、段階的により良い結果を目指していく。
――――――――――――――――
(ここまで)
人は認知の限界があり、少しずつ見えている範囲を広げつつ、見えている範囲で、最も良さげなものを選ぶという意思決定。そうしたプロセスこそが現実的であるというのは、ものすごくよくわかる!と感じました。
■「サーチ」と「アスピレーション」
さて、こうした意思決定に続く「実際の人や組織の行動」として、サーチとアスピレーションというキーワードがあります。
わかりやすい事例として紹介されていたのが、ホンダが50ccバイクを米国市場に展開したエピソードです。
ホンダは50ccバイクを米国市場に展開することに、結果として成功したエピソードが有名ですが、当時、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG) は後にこれを分析し、「中産階級向け低価格・小型オートバイという新しい市場セグメントを創出し、コストリーダーシップ戦略をとった結果だ」と位置づけました。
しかし、実際には ホンダは「アメリカで何かをする」以外は特に明確な戦略がなかった わけです。試行錯誤しながら選択肢が広がり、結果として成功に至ったのが実態なのでした。
このような意思決定の循環プロセスを説明する概念が、先程の「限定された合理性」そして、続く「サーチ」と「アスピレーション」です。こんな定義がされています。
――――
サーチ:認知の範囲を広げ、新たな選択肢を探す行動のこと
アスピレーション:将来の目標水準(自社の評価基準・目線の高さ)のこと
――――
そして、人や組織は、目線が高ければ(アスピレーションの高さ)満足せず「サーチ」行動を継続していきます。逆に、目線が低い or 成功体験に満足してしまうと、サーチ行動が鈍化することになります。
市場は常に変化していくため、成功している時こそ高い目線を維持し、サーチ行動を続けることが重要(=成功に慢心しない)と名経営者はよくいいますが、高いアスピレーションを持ち、サーチをし続ける姿勢は、「勝って兜の緒を締めよ」よろしく、まさに多くの有名経営者の発言とも重なります。
■まとめと感想
改めて今回の話はとても納得感がありました。
まず、「限定された合理性」は 組織だけでなく個人にも当てはまる と感じます。私自身も、自分が知っている範囲の中から最も満足できる選択肢を探して行動しています。これはキャリアにおいてもそうですし、小規模な会社運営 においても同じです。
また、「サーチ」行動は自分が満足してしまうと鈍化してしまうのもそう。
逆に、自分の周囲に「すごいな」「尊敬できるな」と思える人がいると、「アスピレーション」において目線が上がり、もっと努力しようという意欲が湧きます。逆に目線が低ければ「これくらいでいいか」となってしまうことも、よく理解できます。
成長がすべてではありませんが、市場が変化し続ける中で自分を高めていくには、刺激的な環境に身を置き、「まだまだだ」と思える場にいることが、中長期的に自分のスキルや資本を高めるリスクヘッジにもつながる、と改めて感じた次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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【編集後記】
◯強み文献おかわり100本ノック:90本目
◯今月の健康&運動習慣:6月のランニング距離36km
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