配信日時 2024/10/20 13:11

おすすめの一冊『文系研究者になる―「研究する人生」を歩むためのガイドブック』【カレッジサプリ】

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令和6年10月20日(第3890号)


おすすめの一冊『文系研究者になる―「研究する人生」を歩むためのガイドブック』


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2718文字/読了時間3分)


■こんにちは。紀藤です。

引き続き沖縄に来ております。

子どもが熱を出したため、家でゆっくりしながら、
2件のミーティングにオンラインで参加でした。

昼からは大学院の仲間の「出版勉強会」の参加でした。
すでに出版をされている先輩が、どのような思いで出版をされたのか。
またそのプロセスはどのようなものだったのか。
そんなことを聴く、非常に貴重な機会でした。

私、来週末はいよいよ出版ゼミのプレゼン大会なので、頑張りたいと思います。



さて、本日のお話です。

毎週日曜日は、おすすめの一冊をご紹介するコーナーです。本日の書籍は、「文系で大学院に進み、研究の道を歩む人のための本」のご紹介です。

結論から申し上げると、めちゃくちゃ良い本でした。特に、文系大学院を検討している人(MBA等含む)、修士課程で学んでいる方、博士課程へ進むなど、研究の道を考えたことがある方には、大変参考になる本かと思います。

それでは、早速まいりましょう!

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<今週の一冊>

『文系研究者になる―「研究する人生」を歩むためのガイドブック』

石黒 圭 (著)/研究社
https://amzn.asia/d/iUSL9wO
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――――――――――――――――――――――――――
<目次>
・本書の概要
・研究とは「恋」である
・日本語のエネルギーを感じる一冊
・読んでみた感想
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■本書の概要

書籍には、色々な対象者に向けた本があります。今回の書籍は、比較的ニッチな対象者と言えるでしょう。

 具体的に、どんな本かというと、「大学の学部を卒業して、大学院に入学し、博士学位を取得したのち、研究者として本格的に歩んでいくことを目指す文系、とくに人文系の研究社を応援する本(P3)」と説明されています。

著者の石黒先生は、様々な大学で大学院生と接する中で、多くの大学院生が、”大学院で研究するとはどういうことか、将来研究者になるのにどのような道を歩めばいいかといった本質的なことを深く考えず、ともかく大学院に進学すればなんとかなるという思いで進学してくるという事実(P3)”があったと述べています。

 そうした課題に対して、”「研究する人生」を歩む上で、研究者の世界がどうなっているのか、そのために必要な知識は何なのかについて、網羅的に示されたガイドブック”があれば役に立つのでは、ということで本書が書かれました。

 大学院の受験生から大学院の修士・博士課程、そして任期無教員になるまでのプロセスと、その際に必要な情報が、この世界に馴染みがない人でもわかるような表現と構成で書かれています。
 大きな流れとして、落語家の一緒と、ひよこが親鳥になるプロセスになぞらえて、それぞれのステージで必要な情報を章ごとに説明をされていきます。

<研究者の一生>
・受験生(弟子入り志願)・・ひび入り卵
・修士院生(見習い)・・・ひよこ
・博士院生(前座)・・・若鶏(中びな)
・任期付教員(2つ目)・・・成鶏(大びな)
・任期無教員(真打ち)・・・親鶏(子連れ)

また各章では「博士課程のゼミでは、どんな準備をすればよいのか?」「担当教員とテーマは近いほうがいいか、遠いほうがいいか?」や、
「学会での査読を依頼する際の心得とは?」「学会の内情と査読者の本音とは?」など、実体験がある方でなければ決してわからない情報も詳しく書かれていて、ほー!へー!と、頷きが止まりませんでした。



■研究とは「恋」である

とはいいつつ、そもそも「研究」なんていうと、縁遠く感じる人もいるかと思います。
 私も大学院にいったものの「どんな研究されていたのですか?」なんて聞かれると、「いやいや、研究ってほどのものでもないんですけど・・・」とつい無意識に謙遜してしまいます。

 「研究」とは、なんだか一部の人の高尚なもので、一部の選ばれし者のみが使うことを許される言葉・・・そんな印象すら感じるほど。
 その中で、著者の石黒先生は、研究について、このように述べられていました。これを見て「自分も研究してます!」と言っていいのだ、と思えるシンプルな説明でした。以下、引用いたします。

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Q,研究とは、難しい特別なことのように思えます。私にできるのでしょうか。
A,研究は、難しいことでも特別なことでもありません。研究は恋と同じです。研究する対象への熱い思いと鋭い洞察力があれば、きっとうまくいきます。
P18
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研究とは「恋」である。
ある人に恋をすると、その人のことをもっと知りたくなる。相手がどんな人で、どんなことに興味があるのか、外見やしぐさをつい目で追ってしまう(観察)。
好きな相手を観察する中で、好きな趣味や特徴などをつい色々と考えてしまう(分析)。相手が自分といるときの言動が、スマホばかり見ているのか、または視線が合うかどうかなどから、自分のことをどう思っているかを色々考えてしまう(考察)。
まさにそんな行為、すなわち「観察」「分析」「考察」の3点セットが、研究にとって不可欠なものであり、研究に必要な洞察力を支えるものだ、と述べます。

なるほど・・・!とこの表現を聞いて、ぐっと研究が身近なものと感じられるました。研究は恋。恋っていいなあ。



■日本語のエネルギーを感じる一冊

もう一つ、本書の魅力について、声を大にしてお伝えさせていただきたいのが、「文章が丁寧かつ洗練されている」ことです。

本書は、マニアックでやや難解そうなテーマなのに、たいへん読みやすく、そしてグイグイ引き込まれてしまいました。「え、なんでこんなに読みやすく、言葉がすいすい入ってくるんだ?」と読みながら、疑問に思ってしまうほど。

理由を調べててみると、本書の著者・石黒圭先生(一橋大学大学院教授、国立国語研究所教授)の専門は「日本語学」とのことでした。なるほど、、、と納得してしまいました。
 日本語を知り尽くした人が、丁寧に言葉を扱い、文章を編み上げると、こんなに体に溶け込むような文章が作れるんだ・・・と、感動させられました。
 自分自身、日本語のポテンシャルを、まだまだ使いこなせていない、、、そう感じさせられる本でもありました。



■読んでみた感想

私事で恐縮ですが、今後のキャリアについて、実はしばらくずっと考えていました。
私(紀藤)は3年前大学院に入り、そして修士課程を修了しました。大学院を修了してからも、自分がテーマとする「強み」は、常に頭の中にあり、惹かれ続ける自分がいる、とも感じていました。

自分なりに論文を読んだりしていましたが、「大学院の博士課程は、魔境である」という噂に二の足を踏んでいました。
 二の足を踏む理由は、その道に進んだときの状況がイメージできなかったからです。そもそも自分の場合「研究者になる」という選択肢はありなのか? またその道に進んだ場合、一人で論文を読むことに比べて、どんなメリットがあるのか? また、仕事への影響、家族の時間はどうなるのか?その後、どのような世界が広がるのか・・・?

そんなことを想像しては人づてで聞くものの、体系的に理解することは、まだ見ぬ道であるため、ぼんやりとしかわかりませんでした。

その中でこの本に出会うことで、大学院の修士課程の復習にもなり、博士課程のゼミの選び方、得られそうなこと、その後のキャリアについて「研究者の道の全体地図」を教えていただくことで、自分の未来をイメージすることに大変役立ちました。

改めて、こうした本を世に出していただいたことに感謝したくなる一冊でした。ぜひ関係があるかも、と思われた方は手に捉えることをおすすめしたいと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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 【編集後記】
◯強み文献おかわり100本ノック:43本目
◯今月の健康&運動習慣:10月のランニング距離:98km

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