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令和6年3月23日(第3682号)
幼児に「強み」はあるか?の研究論文
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3157字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は宮崎の企業の経営チームへの
組織開発プロジェクトの実施でした。
*
さて、本日のお話です。
本日も「強み」に関する論文をご紹介をしたいと思います。テーマは「幼児に強みはあるのか?」です。
私事ですが、3歳になる息子がいます。気の向くまま泣いたり笑ったり怒ったりしていますが、ときに素敵な面も見せてくれます。
たとえば、私がリビングで椅子に足の小指をぶつけて悶絶していると「だいじょうぶ?」「よしよししよっか」と『優しさ』のようなものを見せることも(自分で母や父の頭をはたいて、その後「だいじょうぶ?」という、ツンデレは「優しさ」なのかはわかりませんが・・・)。 あるいは「もうすぐご飯だから、お菓子はガマン」と耐えられることも。これも『自律心』の萌芽とも言えそうです。
では、こうした「幼児期の強み」にどういったものが観察されるのか?、そしてそれが幸福度と繋がりがあるのか?このことに関して、本論文は680名の親の記述を元に分析をした研究です。
親としても実に気になる内容です・・・!
ということで、早速内容をみてまいりましょう!
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<今日ご紹介の論文>
『幼児期における性格の強さと幸福感:親の記述の内容分析』
Park, Nansook, and Christopher Peterson. (2006). “Character Strengths and Happiness among Young Children: Content Analysis of Parental Descriptions.” Journal of Happiness Studies 7 (3): 323–41.
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■30秒でわかる論文のポイント
・本研究は、幼児期(3~9歳)の子どもの性格的強みと幸福度の関連を調査したものである。
・ウェブサイト上で、3歳から9歳までの子どもに関する「保護者の記述」を収集し、その内容を分析した。
・結果は、保護者の記述は、子どもの性格に関する表現が豊富に含まれており、平均211語の中に、平均3.09の「強み」が言及されていた。
また青少年や成人の先行研究と同様に、『愛情・熱意・希望』という性格的強みが幸福と関連しており、特に年長の子どもは『感謝』が幸福と関連していた。
という内容です。
■子どもの「強み」が大事な理由
子どもの「強み」に関する教育は、重要な要素の一つと考えられているようです。たとえば、
・子どもが良い人格を築き、それを促進することは、家庭や学校、社会の主な目標の一つとされる(Ispa, 2002)。
・また、特定の性格的強みは、うつ病、非行、暴力といった問題と負の関係があり、学校での成功、向社会行動、能力向上など望ましい結果と正の関係があることが知られている(Scalesら, 2000など)
など。
しかし、子どもの強みを理解するためには、「アセスメント(質問紙)」に回答する必要があるなど、難しいところがありました。よって、10歳児のみを対象としてきた等、特に幼い子どもについては、アプローチの難しさから調査されてこなかった、という背景がありました。
そこで「幼い子どもたちの性格的な強み、そして幸福度の関連は、どの程度早い時期に築かれるのか?」これを調査しようとなったわけです。
■研究の全体像
とはいえ、3歳の子どもに「ねえ、◯◯くんの強みってなあに?」「今、しあわせ?」と聞いても、カオスな答えが帰ってきて終了・・・となりかねません(うちの息子なら絶対そう)。ゆえに、これらを明確にするために、何を/どのように研究したのかが、本研究のポイントの一つです。
以下、研究の概要について整理してみたいと思います。
◯参加者と方法
●参加者:3歳から9歳までの子どもを持つ成人 680名
(米国にてウェブサイト上で回答者を募集)
●回答方法
1,デモグラフィック情報(年齢、性別、民族性、社会階層など)
2,子どもの強みや幸福度についての親の自由記述
~~~~~~~
「私たちは、お子さまの個性や資質に興味があります。お子様のことをよ く知るために、どんなことを教えていただけますか?些細なことでも結構です。下のボックスに答えを入力してください。スペルや文法は気に しないでください。
少なくとも数百字の回答が私たちにとって最も有益 ですが、お好きなだけお書きください。もしよろしければ、お子さんに ついてのエピソードをお聞かせください」
~~~~
●分析方法:
判定員の専門家が、 記述された内容から、強みや幸福度を抽出しコード化しました
1)「VIAの24」の強みの説明文を参照に、強みをコード化した
2)「子どもの幸福度」を7段階評価でコード化した
※補足「幸福度のコード化」の方法は以下の通り。」
7 =幸せ(喜び、陽気さ)を最上級表現で明示(例:非常に 幸せ、いつも幸せ、信じられないほど楽しい)
6=付加的資格で記述された幸福(例. 大満足、大満足)
5=無条件で記述された幸福
4=限定的な資格(例、 やや満足、たまに満足)
■結果
分析の結果、以下のようなことがわかりました。
◯幼児の「強み」についてわかったこと
・親の記述には、平均3.09の「強み」が含まれていました。
・親の記述には、VIAの24の性格的強みのすべてが見られましたが、『愛情』『好奇心』『優しさ』『創造性』『ユー モア』などが頻繁に言及されました。
・一方、対照的に『知的柔軟性(オープンマインド)』『感謝』『許し』『謙虚さ』『誠実さ』など、ある程度の認知的成熟を必要とする性格的強みについては 、あまり言及されませんでした。
◯幼児の「幸福」についてわかったこと
・平均幸福度は2.89(標準偏差=2.21)でした。
・記述の54%が2以上であったため、ほとんどの子どもは少なくともいくら幸せであることがわかりました。(この結果は、大人のものと同等)
・人口統計学的特性は、年齢、性別、民族性といった幸福度評価とはほとんど無関係でした。また母親と父親のどちらの記述であったかも、幸福の評価とは無関係でした。
・一方、「社会階層」は幸福度と関連していました。具体的には低階級の子どもは、 他の子どもよりも幸福度が低い結果となりました(F=2.87、p<0.05)。
◯幼児の「強みと幸福度の関係」について
●予想通りだったこと
幸福感と『愛情』『希望』『熱意』の強さとの関連は、幼い子どもたちの間でも明らかでした。
●予想通りではなかったこと
一方『感謝』の気持ちは、青少年や成人にとっては人生満足度の強い相関関係がありましたが、今回の幼児サンプルでは違いました。
・そもそも『感謝』の強みの出現は、そもそも非常に低く、幸福度との相関も見られませんでした。(しかし、7歳以上の子ども(n=288)の記述だけを見ると、『感謝』と『幸福感』の間には、わずかだが相関関係が現れていました)
■まとめと個人的感想
親目線での記述を680名集め、「強みと幸福度は相関しているか?」を調査するという方法があるのか!というのも興味深く、また実際に記述内容をしかるべき手段でデータ化した際に、幼児でも「強み」が現れており、またそれが幸福度にも関連しているというのは、興味深い結果でした。
曰く、『愛情』の強みは、乳児と養育者との間の安心できる関係によって素因が形成される(Bowlby,1969)、そして愛着された子どもは、生涯を通 じて心理的・社会的に適応しやすい(Kochanska, 2001など)という、人生の各ステージの発達課題にも似たお話であることも、色々と繋がりがありそうで面白いな、と思いました。
幼児期(特に7歳未満)には『愛情』『希望』『熱意』など、人生満足度と相関がある強みを育てるような形で関わること。それが親としても、子どもにできることの一つなのかもしれない、そんな事も思った次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
「一体どれだけ努力すればよいか」という人があるが、
「君は人生を何だと思うか」と反問したい。
努力して創造していく間こそ人生なのである。
御木徳近
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【編集後記】
強み論文、100本ノックプロジェクト。
現在82本目です。
あと18本。
<今月の健康&運動習慣>
・3月のランニング距離:86km
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