配信日時 2024/03/21 21:48

ピアノ発表会で、膝から崩れ落ちるほどに失敗して手に入れたこと【カレッジサプリ】

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令和6年3月21日(第3680号)


ピアノ発表会で、膝から崩れ落ちるほどに失敗して手に入れたこと


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 4458字/読了時間6分)

■こんにちは。紀藤です。

さて先日、大人になって人生3度目のピアノの発表会に参加してきました。
結果から申し上げると「膝から崩れ落ちるほど失敗した」です。

振り返りでは、GOODとMOTTOの両面からみましょうね、なんていいますが、GOODはただ一つ「最後まで逃亡しなかったこと」(汗)。改善点は、「恐ろしいほどのミス」「その要因となった事前準備不足」「3度目の油断」(他多数)です。

見に来ていた妻コメントは「よくこれで出ようと思ったね」「ほんと、勇気もらった」と褒めているのかバカにされているのかわからないようなコメントでした。

言葉を覚えたての3歳の息子は、私(紀藤)の崩壊した演奏のさなか、終盤「バスのうた」を歌い始め、私がお辞儀をした際に子どもが「終わったー」と声をあげていました。色んな意味で「オワタ-」という感じがハモって、哀愁漂う舞台になったのでした。

なんて、自虐的に書いてみましたが、とはいえ大人になってこんなに緊張する経験もないもの。また実はその裏側で、手に入れたこともたくさんありました。記憶が新しいうちにこの貴重な体験を振り返りたいと思います。

ということで、よろしければお付き合いくださいませ。

タイトルは、


【 ピアノ発表会で、膝から崩れ落ちるほどに失敗して手に入れたこと】


それでは、どうぞ。


■私のピアノのレベル
最初に私のピアノのレベルですが、地力としては「中級:くらいだと思います。
その根拠は、小学校のとき5年間習っていました。楽譜は読めるし、両手でひけますが、キーボードしかなかったので、強弱やペダルは苦手です。3年前から大人になって習い始めましたが、そこから比較的真面目に始めた人です。

私の場合、「目標」があると燃えるタイプです。
「音楽そのものを愛している」というよりも「発表会という舞台に向けて1年かけて1曲を完成させる」というプロセスがゲームのようで性にあっています。自分のレベルだと、すいすい曲が弾けるわけではありません。ゆっくり譜読みをして、なんとか1年で1曲だけ弾けるという感じです。地味です。

そんな形でゆっくりやれば、地力がなくともある程度の曲は弾けるようになるものです。
2年前に初めて「幻想即興曲」という曲を、昨年は「革命」という曲にチャレンジしました。

自分の腕前だと多分かなりストレッチ気味な曲でしたが、スポーツのように1曲だけ何度も反復して指に覚えさせるような練習を繰り返すことで、勢いで押し切る形で発表会をクリアしてきました。
「演奏」という意味では、全然イケてないのですが、素人の発表会で「弾く」レベルではありかも、というイメージだと自分では認識しています。
(ピアノを弾いたことがない人は、すごーい!で、やっている人からすると、ふーん、という感じでしょうか)


■「愛の夢」という曲
さて、今回は「愛の夢」というリストの曲を選びました。9月から本格的に練習をはじめましたが、メロディアスで情緒的な曲調が特徴で、曲が一つの物語になっている曲です。シンプルなメロディラインが聞きやすく、一見簡単そうに聞こえるのですが、結構難しいのです。「勢い&押切り系」はあまり通用しそうもありません。


◯発表会に至る軌跡
発表会までの時間は半年。仕事が立て込んでいると、仕事の方に集中してしまい、ピアノの練習も疎かになってしまいがちです。特に今年は何かと立て込んでいる年末年始を過ごしており、練習を積み重ねることが例年よりできていませんでした。

しかし、「発表会に出る」と言った手前、やるしかありません。

あっという間に、2月、3月と経過し、基本、発表会前日までミスなく弾けたことは一度もない。なんなら暗譜もしきれておらず、記憶を飛ばして、途方に暮れることも1週間前までザラでした。本番の緊張する環境では更にミスが出ることが予想されます。

そんな状態でしたので、表面の感情では「やりたくなかった」のです。「仕事でトラブルがあった」とかにして、出ないほうがいいんじゃないか、この状態で出て、一体何が得られるのか?とも思いました。

わざわざお金を払って、人前で痴態をさらして何が楽しいのか?勇気を持って挑戦をすることが大事だというけれど、流石にこれはないのでは?

てか、そもそも自分は音感もリズム感もないし、向いているわけでもないし、ただ繰り返して一曲をやり続けて、そして最後が「ひどい演奏」で終わって、悲しくはないのか?というかそもそも何でこんなに時間を使ってピアノをやっているのか?なども考えてしまいました。不安になると、まあ、ネガティブな感情もよぎるものです。

しかし、時間は過ぎていくもので、発表会の夜20時は刻一刻と近づいていきます。当日は祝日だったので、昼からスタジオを借りてグランドピアノで練習していました。
長時間借り続けるのを見て「追い込みか何かですか?」とスタッフさんが聞きます。「はい、今日の夜発表会なんです」「そうですか、がんばってくださいね」なんて会話もかわされるくらい、神妙な面持ちになっていたのかもしれません。そして、一応練習するだけして、本番を迎えたのでした。



◯本番の4分30秒
発表会は、夜19:30から成人の部が始まりました。基本は子どもが昼、中学生、高校生と続き、大人は数名です。なので、観客はほぼいないのがせめてもの救いでした。

スポットライトを浴びた、都内の文化センター舞台のピアノは、思ったよりも古めのYAMAHAのグランドピアノでした。前の人(尋常じゃないレベルの高さ!)が終わり、自分の出番が来て、椅子の前に座ると、もう弾くしかありません。

一呼吸して、一打目を押すと、タッチ感はやや軽い感じがしました。「ああ自分緊張して手が震えているな」と、もうひとりの自分が観察をしています。やっぱり練習不足によって何を弾いているのか一瞬わからなくなりつつ、体が覚えている範囲内で動くのに任せて、弾き続けました。

4分30秒の演奏の中、最初の1分半くらいの序盤はなんとか1~2ミスくらいで終了。そこから、盛り上がって一気にスピードが上がり始めます。そこから、崩壊の始まりでした。

緊張する中で、指の動きに任せて弾くには、体に染み込ませるための練習量が圧倒的に足りていませんでした。音をちょっとずつ外す。他の鍵盤に触る。打鍵が安定せず、崩れ始めます。

そしてついには、完全に別の場所を弾いて、弾いている場所を見失い、ゼロから弾き直すという、最も大きなミスも発生しました。しかし、もう始まっているから「ごめんなさい、無理っす」と逃げるわけにはいきません。無理やり近くのところから再開して、曲を続けるということを選択しました。

その後、最も盛り上がる主題の部分も、指が浮ついて、打鍵ができません。ミスが一小節に1回のペースで訪れます。後でそれを聞いていた妻にその状況を聞くと「主旋律はわかった」と言っていました。言い換えれば主旋律がかろうじて分かるレベルなので、ノイズが恐ろしいほど入っているラジオみたいな感じ。聞くに耐えません。

そして、メインの盛り上がるパートが終わり、早いパッセージで駆け下りる場所に差し掛かりました。最も不安が大きいところでしたが、不安通りれも案の定崩れ、これもどうしようもなくなり、丸まんま10個位の音を飛ばして無理やり着地させました。もはや着地しているのかも不明です。

そして最後の終盤は「真っ白になったあしたのジョー」ばりの虚脱感が、夢の儚さを表現しているとも言えなくもない感じ、終了。そして4分30秒の演奏が終わったのでした。

◯アイデンティティが崩壊した思春期の「愛の夢」
見ていた妻に感想を聞きました。我が家のルールに則って「GOODポイントを中心に、感想をお願いします」とフィードバックを求めました。そのまま素直な感想を聞くと、痛すぎるフィードバックになるため『GOODポイントを中心に』をことさらに強調しておきます。このあたりは、普段の合意形成が取れているので安心かと思いつつ、聞きました。妻コメントは以下の通りでした。

妻「いや、いい感じで『思春期の愛の夢』って感じだったよね!アイデンティティが確立していないゆえの不安定な精神を、見事に表現していたとも言える演奏でした」

~~~~
(解説)「急に盛り上がってきたと思ったら、なんとミスが連発して曲がが止まる」、この状態を「思春期の夢」と解いてみる。その心は、「一方的な片思いを愛と勘違いして、関係もできていないのに告って、ドン引きされる中二病の愛の夢」とも捉えられる(そうなのか?)。
~~~~~

我ながらいいこと言った、と妻自身がホクホクした表情で語るのを聞きつつ、演奏らしきものが終結をした安堵感と共に私の発表会も幕を閉じ、笑った後に、なんともいえない寂しさが残りました。

先生方は本当に美点凝視がお上手で、こんな下手っぴな私に対しても、「ペダルもできていましたよ」「メロディアスな曲もいけますね!」と、承認をしてくれるのが救いでした。



■発表会を終えた感想
さて、ただその後妻からは、もう少し真面目なフィードバックももらいました。帰って録画した演奏を一緒に見返していました(毎年恒例でipadで撮影をするのです。せっかくなので)。

リアルに、見ながら3回くらい椅子から転がり落ちました。「もっとがんばれよ!」と自分で自分にツッコミを入れていました。それくらいズッコケるレベルのミスが多発していました。改めて見終わった妻曰く、

「いや、よくこの状態でチャレンジしたよね」
「これは逆に、勇気もらうわ」

とのこと。挑戦しましょうというのは簡単だけど、限られた時間で暗譜をして、仕上がってないのに舞台に経って、ボロボロでも舞台に一人に立ち、そして結果を引き受けて演奏を終える、これはすごいことだよと。実際、こうしたチャレンジを毎年やっているからこそ、私(妻)も「ダンス」を習いはじめて発表会に出たんだよ、との話もしてくれました。(いいやつ)

◯チャレンジしたから出会えた経験がある
たぶん、やらないほうが、ストレスもないし、楽だったのでしょう。
でも、やったからこそ、チャレンジしたからこそ、やらねば出会えない経験と、それに伴うたくさんの感情と出会う事ができました。

今回の発表会の椅子から転がり落ちるほどの失敗経験がなければ、

・緊張や悔しさという感情も、
・今できる範囲で何とか頑張ったという達成感も、
・失敗した経験と練習の大切への教訓も、
・妻へ与えたであろう勇気も、
・また発表会を通じてつながった別の生徒さんとの繋がりも、

何一つ得られませんでした。

やらなければストレスがない平穏な日が続いたかもしれません。しかしその裏にある「やっていたら出会えかもしれないチャンス」を見ていたいし、これからも大事にしたい、と思ったのでした。

今回は、反省ばかりでしたが、これからのピアノを趣味として付き合う上で、大いに思い出になる経験でした。また来年も、この体験を教訓に、良い思い出を作っていきたい。そのように思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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<本日の名言>

一度も間違ったことのない人はいないだろう。
いるのであれば、それは、何にも挑戦しなかった人だ。

アルバート・アインシュタイン
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 【編集後記】
強み論文、100本ノックプロジェクト。
現在80本目です。
あと20本。

<今月の健康&運動習慣>
・3月のランニング距離:86km

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