配信日時 2024/03/12 12:25

「強み活用」は欠勤を減らす ~オランダ832名の調査からわかったこと~

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令和6年3月12日(第3671号)


「強み活用」は欠勤を減らす


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2350字/読了時間3分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日は午前からストレングス・ファインダー研修の実施。
また午後からは2件のアポイントでした。



さて、本日のお話です。

久しぶりに「強み論文」のご紹介でございます。
本日ご紹介させていただく論文は、「強みの活用によって、職務上の要求による欠勤率の影響を緩和することができる」ことを示したものです。

働いていると、ときに「この一週間、こんないっぱい仕事やんなきゃなんないの?!」とか、「またクレーム対応。ほんと疲れちゃう」みたいな仕事の負荷を感じることがあります。短期ならガマンできても、それが蓄積すると疲れる、そして欠勤へ繋がる・・・。

こうなることは、想像に難くありません。
しかし、組織にとって「欠勤率」は由々しき問題です。

そんな中、今回の研究では「強みの活用と欠勤率」を掘り下げた内容となっています。ということで、早速内容をみてまいりましょう!

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<今回ご紹介の論文>
『蓄積された職務要求とt強み活用支援:資源保存理論を用いた職務要求ー資源モデルの微調整』
Woerkom, Marianne van, Arnold B. Bakker, and Lisa H. Nishii. (2016). “Accumulative Job Demands and Support for Strength Use: Fine-Tuning the Job Demands-Resources Model Using Conservation of Resources Theory.” The Journal of Applied Psychology 101 (1): 141–50.
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■1分でわかる論文のポイント

・「仕事の負荷が積み重なると欠勤につながる」のは、ありがちな問題である。

・この現象は「職務上の要求の蓄積が相まって、従業員の欠勤率を悪化させる(OCR理論)」から説明ができる。

・職務上の要求を、リソース(職務資源)で打ち消すことの利点を示す先行研究(JD-R理論)があるが、まだ活用されていない職務上の要求を緩和するリソース=「強みの活用」ではないかと考えた。

・この仮説を検証すべく、96部門832名の従業員を対象に調査をしたところ、強みの活用サポートが、職務上の要求と欠勤率を緩和することが示された。

という内容です。なるほど、興味深いです・・・!


■研究の目的

まず、本研究の目的は以下の2つです。

1)職務上の要求と欠勤率の正の関係を弱めると期待される「新たな職務資源(強みの活用)」を導入すること

2)強み活用支援が「欠勤率と職務要求の関係」を緩和する職務資源としてどの程度作用するか調査すること

■研究に関する理論

以下、本研究に関わる3つの理論です。1つずつ見ていきましょう。


◯1,職務要求-資源モデル(JD-Rモデル)

職務要求-資源モデル(JD-Rモデル)は、仕事のストレスと動機付けの理論で、職務要求(ストレス源)と職務資源(仕事を効果的に行うための支援やツール)のバランスについて述べているモデルです。

職務要求には、量的な性質なもの(例:一定期間にどれだけの仕事をこなさなければならないか)と質的な性質のもの(例:感情的な要求:職場での感情的に困難な状況、出来事、状況)の2種類があるとされています。(関連記事はこちら↓↓)

◯2,資源保存理論(Conservation of resources theory)

資源保存理論(COR理論)(Hobfoll, 2001)は、人々がストレス状況で自分の持つ資源を保護しようとする心理学的な動機付けに焦点を当て、資源の損失を避け、新たな資源を獲得することを目指すと提唱した理論です。

仕事のある側面で高い職務要求がなされると、エネルギー資源が失われます。そして別のタイプの職務要求に立ち向かうための資源の備蓄が弱まる、というわけです。よって人は、仕事の要求に対処できるように、個人特性や条件などを鑑みた上で、自分自身のエネルギーを保持しようと努力するのです。

◯3,知覚された強み活用の組織的支援(POSSU)

組織が従業員に対して、強みを効果的に活かすこと支援すると、従業員は自分の仕事に強みを活かす可能性が高まります。そして、従業員がそのような支援を認知しているかというのが「知覚された強み活用の組織的支援(POSSU)」となります。

そして、自分の強み発揮をサポートされていると感じる従業員は、自尊心が高まり、ストレス耐性が高まり、病欠などの可能性が低下すると考えられます。このことから、JD-R理論の拡張として「強みの活用支援」があげられるのでは、と研究者らは考えました。


■研究の全体像

では、この研究はどのように調査がされたのでしょうか。以下、研究の詳細についてまとめてみます。

◯方法
精神医療を提供するオランダの組織(看護師、意志、セラピストなど)で働く832名

◯調査内容
調査項目は以下3つの尺度に、「欠勤率」を加えて4項目で測定しました。

(1)強みの活用に対する組織サポート(Keena and Mostert, 2013)(詳しい質問項目は以下記事より)
(2)仕事量・オランダの「仕事の経験と評価に関する質問票」の7項目(例:あなたは非常に早く仕事をしなければなりませか?など)
(3)感情的職務要求・「仕事の経験と評価に関するオランダ式質問票」7項目(例:仕事上、困難なクライアントや患者と接することがありますか)


◯分析
分析については、97部門の入れ子構造になっており、マルチレベルの階層回帰を実施したとのこと(詳細は、これから勉強します・・・!)


■結果

●わかったこと1:「職務要求」が増えると欠勤率が高まり、「強み活用サポート」が高まると欠勤率は低下する

分析の結果、「職務上の要求は欠勤率と正の相関を示し、強み活用のサポートは欠勤率と負の相関を示す」ことがわかりました。

●わかったこと2:強み活用のサポートが低い場合、仕事量が増えると欠勤率が高まる

分析の結果、「仕事量と強み活用支援の交互作用が欠勤率に負の相関を示した」ことがわかりました。これは、強み活用サポートが高い状態では仕事量は欠勤率に影響はないものの、強み活用のサポートが低いと欠勤率への負の影響があることを示しています。


■まとめと個人的感想

「強みの活用」が自己効力感に影響を与える、エンゲージメントに影響を与えることは示されていましたが、強みの活用が職務資源の一つとなり、仕事の要求(仕事量)に影響を与えていることを、定量的に読み解いた、説得力がある論文だと感じました。

このように具体的に「欠勤率」に影響があると、組織としても「強み活用のサポート」に取り組む価値が明確になるようにも感じます。

具体的な方策として、POSSUを高めるためにどんな介入ができるのか、も探求してみたいな、とも思った論文でした。そうした論文もありそうなので、探してみたいな、と思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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<本日の名言>

仕事が面白い「ふり」をすると、
それだけで仕事が本当に面白くなるから妙だ。
疲れをあまり感じなくなるし、緊張も解け、心配もやわらぐ。

デール・カーネギー
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 【編集後記】
強み論文、100本ノックプロジェクト。
現在76本目です。
あと24本。

<今月の健康&運動習慣>
・3月のランニング距離:51km

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