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令和6年2月23日(第3654号)
仕事よりプライベートのほうが「強み」は発揮しやすい?!
~強み適用の研究からわかったこと~
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3545字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
先日より沖縄にてリモートワークです。
半袖で過ごせるくらい暖かいです。
*
さて、本日は先日の記事の続きをご紹介したいと思います。
テーマは「強みには発揮されやすいものと、発揮されづらいものがある?!」というお話です。
言われてみたら分かる気がするのですが、「勇敢さ」のようなものはいつ何時も発揮できるものとは限りません(現実はドラマのようにいつもピンチばかりではない)。でも「誠実さ」みたいなものは、比較的日常生活で活用しやすい感じがします。
じゃあ、実際のところ、どうなの? このことについて実査に調査をしてみました!という研究です。
うん、気になりますね。ということで、早速まいりましょう!
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<今日ご紹介の論文>
『特徴的な性格的強みとポジティブな経験を仕事に活かす』
Harzer, Claudia, and Willibald Ruch. (2013).
“The Application of Signature Character Strengths and Positive Experiences at Work.” Journal of Happiness Studies 14 (3): 965–83.
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■30秒でわかる本記事のポイント
・性格的強みの中には「『トニック』は”持続的なもの”」『フェイジック』は、”相動的なもの(たまに現れる)」があるとVIA開発者のセリグマン&ピーターソンは述べた。
・このことについて、1,111名の対象者への調査から分析したところ、24の強みの中で現れやすいものとそうではないものがあることがわかった。
・また、研究者らは「職場の方がフォーマルな環境であるため、私生活より、個人の強みの発揮が制限されるのでは?」と仮説を立てた。
・その結果を、同様に検証したところ、職場に比べて、私生活のほうがより強みを発揮しやすいことがわかった。
という内容です。では具体的にどのようなことが書かれているのか、詳しく見てみましょう!
■「トニックな強み」と「フェイジックな強み」
強みアセスメントのゴールド・スタンダードVIAを開発したセリグマン&ピーターソンは、このように言いました。
~~~~~~~
・強みの中には『トニック(tonic)』と『フェイジック(Phasic)』がある。
・『トニック』は”持続的なもの”であり、ユーモアや優しさなど「様々な場面で安定的に現れるもの」である。
・一方『フェイジック』は、”相動的なもの”であり、勇敢さのように「余裕がある場面でのみ意味を持つため、現れては消えるもの」がある。
セリグマン&ピーターソン(2004)の内容より
~~~~~~~
なるほど、VIAで定義されている、24種類の強み単体を見比べても、現れやすい強みと、そうではないものがあるようです。
ゆえに、「どの強みを使っていますか?」という質問に対しても、トニックかフェイジックかによって平均スコアが変わってくることが予測されそうです。
■仕事よりも私生活のほうが強みを発揮しやすい?
上記に加えて、論文の著者らは、こんなことも考えました。
それが「職場での”性格的強みの適用可能性”は、私生活よりも小さい」という仮説です。
人は置かれた環境の中で行動を変えます。家庭内と職場内、まるで全く同じ行動をする、という人は少ないはず。それは役割や求められていることが違うからです。
その中で、よりフォーマルな状況である「職場」においては、インフォーマルな状況である「私生活」よりも、役割や機能が制限されると想定されます。つまり、職場ではその文脈での”望ましい行動”がありますから、多くの人が”大人として行動すること”が予測されます。
これが見方によっては「強みの発揮を制限している」ことになるのでは、と考え、このことを検証しようとしたのでした。
■研究の結果
では、実際にどのような結果になったのでしょうか。以下内容をみてまいりましょう。
◯わかったこと1:職場と私生活における「強みの適用の内部一致度」は低かった
1111名を対象に、強みがどれくらい使えているのか?を測定する尺度である「性格的強みの適用可能性評価尺度(ACS-RS)」を活用して、調査を行いました。
その結果、興味深かったのが、参加者の「職場と私生活における強みの内部一致度が低かった」ことでした。
つまり、ある人が「職場ではリーダーシップつかってるけど、私生活では全く使っていない」と答えたり、「家庭では愛情を使っているけど、仕事では使ってない」と答えていた、ということです。
人は様々な役割を持ちますが、仕事で求められる強みと、家庭内で求められる強みが違っている感覚を持っているは多いようです。
特に、多くの人は何かしらの組織などで働いていると思われるので、そうすると職場に求められる振る舞いをすることも想定されます。
(ちなみに、今回の対象者1111名は、医師、販売員、エンジニア、機械工、事務職などで、一番多い職業は「教師」でした)
◯わかったこと2:性格的な強みは仕事よりも私生活で使われていた
次に、24の強みについて分析をしたところ、「性格的な強みの適用可能性評価」のスコアは、全体として仕事よりも私生活のほうが高いという結果になりました。仕事でより使われている強みと、私生活でより使われている強みを整理すると、以下のようになりました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<「仕事」でより適用されている強み>
【知恵と知識(Wisdom)の美徳】に含まれる全ての強み
・創造性(Creativity)
・好奇心(Curiosity)
・知的柔軟性(Judgement / Critical Thinking)
・向学心(Love of Learning)
・大局観(Perspective)
その他
・リーダーシップ
・慎重さ
・自律性
<「私生活」でより適用されている強み>
【勇気(Courage)の美徳】に含まれる全ての強み
・勇敢さ(Bravery)
・忍耐力(Perseverance)
・誠実さ(Honesty)
・熱意(Zest)
【人間性(Humanity)の美徳】に含まれる全ての強み
・愛情(Love)
・親切心(Kindness)
・社会的知性(Social Intelligence)
【超越性(Transcendence)の美徳】に含まれる全ての強み
・審美眼(Appreciation of Beauty & Excellence)
・感謝(Gratitude)
・希望(Hope)
・ユーモア(Humor)
・スピリチュアリティ(Spirituality)
その他
・寛容さ
・謙虚さ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ちなみに、公正さとチームワークの強みについては、仕事と私生活で適用可能性に差はありませんでした。
◯わかったこと3:強みには現れやすいものとそうではないものがある
また、24の強みそれぞれの性格的強みの適用可能性をみたところ、「勇敢さ」「宗教性」が最も適用する頻度が少なく、「誠実さ」「社会的知性」が最も頻繁に適用できる、という結果になりました。
■まとめと個人的感想
VIAとは違う強み診断ツールですが、ストレングス・ファインダーを用いて研修をやっていても、参加者の方から「仕事とプライベートですが、仕事モードで受けたのでそういう結果だなあって感じます」とおっしゃられる方に、しばしば出会います。
今回のVIAのテストでも、仕事と私生活の強みの適用の調査で内部一致度が低かったという結果から考えても、人は多面的な存在であるのだなあ、と感じさせられます。
一方、「強みとはアイデンティティに紐づくもの」という話もありますので、個人的には両者で発揮される強みを違うものとするよりも、統合させつつ合させていくプロセスも大事なようにも感じたのでした。
自分のことしか引き合いに出せませんが、「向学心」「好奇心」など、自分の中核的な強み(特徴的な強み=Signature Strength)はやはり、仕事でも私生活でも、どちらでも主エンジンとして働いていると感じます。
そしてそれを使っているときのほうが、幸せなのです。
そして年を経るごとに(特に独立してから)「仕事も私生活も垣根がなくなっていて、強みの発揮はどちらも同じものを使っている」という感覚と、自己一致感が高まっている(ような気もする)のでした。
このあたりはまだ整理ができていないので、引き続き探求して参りたいと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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<本日の名言>
もし事実と理論が合っていないとしたら、
捨てるのは理論の方ね。
アガサ・クリスティ
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【編集後記】
強み論文、100本ノックプロジェクト。
現在71目です。
あと29本。
<今月の健康&運動習慣>
・2月のランニング距離:93km
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