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令和5年12月10日(第3576号)
今週の一冊「別冊NHK100分de名著 読書の学校 若松英輔 特別授業『自分の感受性くらい』」
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2653字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
さて、日曜日はお薦めの一冊をご紹介する「今週の一冊」のコーナー。
今回の一冊はこちらです。
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<今週の一冊>
別冊NHK100分de名著 読書の学校 若松英輔
特別授業『自分の感受性くらい』
若松 英輔 (著)
https://amzn.asia/d/eGHN8bv
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■『自分の感受性くらい』の読み方を拡げてくれる一冊
さて私、少し前に、改めて『自分の感受性くらい』(茨木のり子)という詩集を読みました。そして、ごくごく短い詩なのに、想像以上に心揺さぶられ驚きました。
「ことばの力とは、一体なんなのか」。
同じ言葉なのに、ChatGPTで量産される言葉とは、全く違う重みがある。
自分が書く言葉とは、全く質が違う洗練された匂いがする。
茨木のり子さんの書く言葉の迫力に圧倒されつつ、そうした性質を持つ「ことば」というものにゆるかやかな疑問と興味が湧いたのでした。
そんな中、たまたまKindleで見つけたのが『100分de名著』で同書を解説したこの一冊でした。本冊子は、中学生あたりの学生を聞き手と想定して、「詩とはなにか」から始まり、「読むとはなにか」「書くとは何か」と、言葉の持つ深遠なる世界に読者を誘います。
茨木のり子さんの言葉も、シンプルなのに素晴らしいインパクトを感じますが、本冊子の解説者・若松さんの言葉も、感覚にフィットする美しい言葉でまたまた唸らされるばかりです。たとえば、こんな表現とか。
”詩は、書く人のおもいの表現であるだけでなく、誰の心にもあって、なかなか光を浴びることのないおもいを、人生という海からすくい上げることでもある。”
、、、
「詩とは、光を浴びることのないおもいを、人生という海からすくい上げることでもある」。こんな表現、そうそうでてきません。まいりました。
***
■「ことば」とはなにか
さて、「詩」は「ことば」です。
そしてこの冊子は、茨木さんの詩を理解する上で、「言葉とは何か」まで深く考ることが大切だと言います。
人は、言葉を使って世界を認識し、言葉を使って思考し、言葉によって他者と理解し合うためです。
言葉とは様々な昨日があります。「自分で書いた言葉で自分の道を照らすことができる」と表現されるように、海の中の灯台のように、言葉によって自分を導くこともできます。
あるいは、古今和歌集のように、今と使われる言葉が違う時代、そのときの時代にあった環境も含めて、その短い言葉に含まれる想いを読み解くことで、時を超えて思いの保存したり、繋いでいくこともできます。
では、そんな「ことばの力」をどうすれば高めることができるのか。
そのために、解説者の若松さんは「読むことと書くこと」の重要性を説きます。「読むことと書くこと」は、「呼吸(吸うと吐く)」の関係性のようなものといいます。読んでどう感じたのかもそうですが、自分で書くことで感じ方が変わるというわけです。
このことは、私の浅薄な体験からも感じるところです。
どんな文章であれ、一生懸命書くと、表現することの難しさをもれなく知ります。言葉にできない感覚、言葉が見つからない感覚にもがきます。ゆえに、他者が表現した言葉に対して敬意を覚えるのです。
素晴らしい言葉に出会った感動は、その行為に対する尊敬と憧れとともに、自分の言葉の幅を拡げてくれます。書くことは読むことの感度を高めてくれます。
また「コトバ」の意味をもっと広く捉えると、何も”言語”だけではないとも述べています。例えば、「絵」によって表現できる人は、絵がコトバになるし、「音楽」で表現できる人は、音楽がコトバになります。自分の心を表現し通ずる手段はコトバである。
「ことば」という記号を考えても
・「言葉」は、意味を持つ記号としての文字や単語、文章
・「ことば」は、広辞苑に書かれた情報だけではなく、人の心や表面的な意味意外の重みを持つもの。
・「コトバ」は、絵や音楽を含めた、表現方法、共有方法すべて
というような意味を持つようです。
そんなふうに、ことばの世界は実に広いのだと認識させられました。
***
■言葉の円形を取り戻す
また、本書で「なるほど」と特に学びになったお話があります。
それが「言葉の円形を取り戻す」というおものです。
言葉の円形の、上の半球は「生活の言葉」とします。
これは、他者の考えを学ぶ、考えの伝え方を学ぶというような、”評価がある世界”の言葉です。
私達が生きる上で、言葉は道具です。そしてその道具は、主に「生活の言葉」として、情報や他者の考えを理解したり、他者にわかりやすく情報や考えを伝えたり理解してもらうために使います。「生活の言葉」を求められるほうが多いです。
そして、もう1つ。下の半球は「人生の言葉」です。
自分に向けて書き、自分が読む、”評価を拒む世界”の言葉です。他者に伝わらずとも、自分が自分の形にできない思いを理解するために、振り返るために伝える言葉も、意味があるのです。そして、若松氏はそれを「人生の言葉」と表現しました。
***
■「人生の言葉」も大事にする。
自分は「生活の言葉」と「人生の言葉」、どちらの言葉をより使っているのか。こう考えてみると、やはり「生活の言葉」のほうが多そうです。
これは、とても大切なことです。
自分の考えていることを、誰かに伝わるように「生活の言葉」を磨くことはも大事です。仕事をする上で、コミュニケーションの上で、そして世界を広く理解する上で。
これまた私の例で恐縮ですが、このnoteで論文を書いて、わかり易く説明する行為は、生活の言葉に軸足を置いて書きます。言葉の一般的な意味をできるだけ曲解せずにできるかぎり正確に、しかしわかりやすく書こうします。
これはベクトルが外にあります。
一方、誰に伝わらずとも、自分にとって意味がある「人生の言葉」があります。自分の内側に目を向けて、内省するような言葉、日記に書くような言葉で、一般的な意味ではないかもしれないし、人に伝わらないかもしれない。しかし、自分なりに言葉にして外に出すと、自分を見つめなおすことができたり、気持ちに整理がついたり、自分を認めたり、癒やしたりできます。評価はされないかもしれないですが、自分にとっては意味があるものです。
生きていると、わかりやすく説明することを求められます。
そして、外向けの言葉を量産するような印象もあります。
しかし自分のための「人生の言葉も大切にする」。
このことを大事にすると、もっと豊かな心を潤わせることができるのではないか、そんなことを感じさせられた解説書でした。
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<本の紹介より>
生きづらさを抱える人へ
なぜ人には詩が必要なのか? 国民的詩人・茨木のり子が遺した素朴な詩は、なぜ日本人の心に響くのか? 「詩」を感じることができれば、言葉は人生を支える糧となる。詩と出会う大切さを知ることで、自分を励ますための言葉が見つかる一冊。累計15万部突破の「読書の学校」シリーズ最新刊!
第1講 詩とは何か
第2講 感受性とは何か
第3講 生きるとは何か
第4講 言葉とは何か
◆生徒と講師、言葉を贈り合う
◆詩と出会うためのブックガイド
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※本日のメルマガは「note」にも、図表付きでより詳しく掲載しています。
よろしければぜひご覧ください。
https://note.com/courage_sapuri/n/na1a114fd45e7
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<今週の一冊>
別冊NHK100分de名著 読書の学校 若松英輔
特別授業『自分の感受性くらい』
若松 英輔 (著)
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【編集後記】
自分にご褒美を上げることは大事。
一人で美味しい晩ごはんを食べに行きましたが、
実に元気が湧いてきました。
外の世界に出たり、話をするのは大事ですね。
<今月の健康&運動習慣>
・12月のランニング距離:10km
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