配信日時 2023/11/30 10:30

「強み」を活用すると、人生でも仕事でも幸福感が高まる?! ポジティブ感情を媒介とした強み介入の研究【カレッジサプリ】

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令和5年11月30日(第3567号)


「強み」を活用すると、人生でも仕事でも幸福感が高まる?! ポジティブ感情を媒介とした強み介入の研究


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3901字/読了時間6分)


■おはようございます。紀藤です。

昨日は1件のアポイント。
また仕事後は、15kmのランニング。

また、その他某製薬会社の部門の皆さまへ
独自のアンケート調査とインタビュー調査を行った
組織分析のフィードバックミーティングの実施でした。

組織の現状をデータ(定量)とインタビュー(定性)の両面から見て、
主要な関係者である部長・課長と見て、どういったところが強みなのか
どういったところが伸びしろかを見て語る行為そのものが、
組織の未来を描くことに繋がるのだな、、、と感じた時間でした。

皆様、たいへん前向きかつ建設的で、
素晴らしい時間だと感じました。
(そして引き続きよろしくお願いいたします)



さて、本日のお話です。

引き続き、「強みの論文」のご紹介です。

今日は「強みと幸福の関係」について
改めてお伝えできればと思います。

それではまいりましょう!

タイトルは



【「強み」を活用すると、人生でも仕事でも幸福感が高まる?! ポジティブ感情を媒介とした強み介入の研究】



それでは、どうぞ。



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<今日の論文>
『一般的幸福感、仕事に関連した幸福感への強みの介入の効果:ポジティブ感情を媒介として』
Meyers, Maria Christina, and Marianne van Woerkom.(2017).Effects of a Strengths Intervention on General and Work-Related Well-Being: The Mediating Role of Positive Affect.”Journal of Happiness Studies 18 (3): 671–89.
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■論文のざっくりポイント

・従業員の幸福感を高めるツールとして「強みの介入」が使えるのかを検討した。

・「自分の強みに取り組むこと」は、喜び・誇り・感謝といったポジティブな感情を引き出すことに繋がり、幸福感や満足感に影響を与えると考えられる。

・本研究では「強みの介入によって、一般的な幸福感(心理的資本&人生満足感)と、仕事に関連した幸福感(ワークエンゲージメントの増加&バーンアウトの減少)が高まる」、加えて「これらの効果にはポジティブ感情が媒介する」というか仮説を立て、検証した。

・116名のオランダの社会人にフィールド実験を行った結果、強み介入に参加することで、(1)従業員のポジティブ感情が短期的に増加、(2)心理的資本が短期的・長期的に増加することが示された。

・一方、強み介入は、人生満足度、ワークエンゲージメント、バーンアウトに対する直接の効果は見られなかった。しかし、ポジティブ感情を介した間接的な効果を示していた。

とのことです。

なるほど。幸福感を「一般的な幸福感」と「仕事に関する幸福感」に分けて研究しよう!という点がポイントと感じます。
それでは実際にどんな事が書かれているのか、詳細を見てまいりましょう。



■2つの幸福感

さて、「幸福感」と一言でいっても、いくつかの尺度でわけることができるようです。
特に「人生全般として幸せですか?」と「仕事で充実して幸せを感じていますか?」の2つは、似ているようで違いそうです。
本論文では、この色々な幸福感について、2つの幸福感に分けて考えています。

■一般的な幸福感について

一般的な幸福感に当たるものとして、以下の3つが紹介されていました。

(1)ポジティブ感情
・「人が熱意、活動性、注意力を感じる程度」のこと。
”ポジティブ感情が高ければエネルギーが高く、全神経が集中し、快楽的に関わっている状態と言えて、逆にポジティブ感情が低ければ、悲しみや無気力が特徴となる(Wastonら, 1988)とされます。
・また、時間や状況によって変動するため「安定性は低い」(=変わりやすい)ものとされます。

(2)心理的資本
・自己効力感・希望・楽観主義・レジリエンスの4つの要素から成り立つものです。
これらに基いて、”成功する確率に対する肯定的な評価をしている”とするので、幸福感に近いと考えられます。
・なお、ポジティブ感情に比べてゆらぎの程度は小さく、「安定性は中くらい」(=やや変わるとされます。

(3)人生満足度
・「個人が自分で設定した基準と比較した、生活全般に対する個人的な判断や評価」と定義されます。
自分が高いレベルの生活を求めて、現状がそうでなければ低くなり、自分がそこそこの生活で、そこそこの生活をできていたら幸せ、ということで自己評価に紐づくものとなります。
・ちなみに、人生満足度はわずかな変動しか示さないため「安定性は高い」(=あまり変わらない)とされています(Fujita and Diener, 2005)。

ちなみに、「強みと幸福感」の研究については、強みの取り組むと以下の影響があるそうです。(論文から引用します)

”強みに取り組むことで、
(1)人生における苦難や挫 折を克服するために利用できる個人のリソースに対する個人の意識が高まり(レジリエンスの向上)(Park,2004)
(2)自己効力感を誘発する課題遂行や習得体験の成功につながり(Linley, 2006)、
(3)将来に対する前向きな期待が生まれ(楽観主義の構築)(Luthans et al, 2010)
(4)自己一致した目標を設定し追求するよう個人を刺激する(希望を増大させる)(Luthans et al)”

なるほど。
先行研究では、「一般的な幸福感」に定義された心理的資本の構成要素等に影響を与えることが示されているのですね。



■仕事の幸福感について

さて、では次に「仕事の幸福感」について見ていきたいと思います。
ここではワークエンゲージメントとバーンアウトを仕事上の幸福感に関連あるもの(Schaufeli, 2014)という考え方に従って、フォーカスをしています。

(1)ワークエンゲージメント
・”「活力・熱意・没頭」を特徴とする前向きで充実した仕事に関連した心の状態”と定義されており、ワークエンゲージメントが高いと、仕事に多くの努力とエネルギーを注ぎ、誇りとインスピレーションを見出し、仕事に没頭する、としています。

(2)バーン・アウト(燃え尽き症候群)
・一方、バーンアウトは、”仕事上の慢性的な感情的・対人的ストレス要因に対する長期的な反応であり、情緒的消耗感・脱人格化・個人的達成の3つの側面で定義される”とします。

また、「強みを活用する」と、活力を高め、消耗感を打ち消す効果があるとされ、バーンアウトに関連する症状を低減させられたり、あるいは、強みにと自分の価値観を理解することで、意義ある生活を送っているという感覚が伝わりエンゲージメントが高まる、としています。



■どんな研究を行ったのか

<2群事前事後デザイン>

さて、本論文の研究手法は、”2群事前事後デザイン”と呼ばれる手法を使って介入効果を分析しています。
2群事前事後デザインとは、

1)介入対象者を実験群(実践群)と対照群(非実践群)にわけて調査する(2群)
2)介入前の状態と、介入後の状態の変化を測定する(事前事後)

という方法になります。

そのようなデザインにすることで、
「今回の”強みの介入”が影響をもたらしたのかどうか?」がわかります。

(こうすることで、”たまたま選ばれた参加者がそうだったんじゃね?””働きかけの内容よりも、選ばれたという高揚感がスコアを挙げたんじゃね?”みたいなツッコミを防ぐことができます)



■研究のプロセス

<仮説>
・「強みの介入」に参加することで、一般的な幸福感(「心理的資本」と「人生満足感」)、および仕事に関連した幸福感(「ワークエンゲージメント」と「バーンアウト」)が増加し、「ポジティブ感情」がこれらの効果を媒介する

<研究方法>
・オランダ人 116名(社会人、71%が女性、平均年齢42歳)
・介入前、介入後、1ヶ月後のアンケートに回答した

<調査項目>
・人口統計的情報(性別/年齢・教育レベルなど)
・心理的資本(一般的な幸福感)
・人生満足感(一般的な幸福感)
・ワークエンゲージメント(仕事に関連した幸福感)
・バーンアウト(仕事に関連した幸福感) 

<研究の結果>
以下、3点が本研究で得られた成果となります。

(1)強み介入により、ポジティブ感情と心理的資本が高まった

・強み介入に参加することで、
(a)「ポジティブ感情」が短期的に増加した。 
(b)「心理的資本」が短期的・長期的に増加した。


(2)強み介入により、人生満足度・ワークエンゲージメント・バーンアウトは直接的には高まらなかった

・一方、強みの介入により「人生満足度」「ワークエンゲージメント」「バーンアウト」、それぞれに対する直接的な効果を示さなかった。

(3)ポジティブな感情を介して、人生満足度・ワークエンゲージメント・バーンアウトは高まった

ただし、媒介因子である「ポジティブな感情」を介した間接的な効果を支持する結果が得られた。



■まとめ(個人的感想)

個人的に興味深かったことは、「ポジティブ感情を媒介して、ワークエンゲージメントとバーンアウトに影響を与える」という点です。
(もちろん、強みの介入がポジティブ感情と心理的資本に影響を与えるというのはなるほどと思いましたが) 
 しばしば職場でネガティブな言動を撒き散らす人を聞きます。しかし、本研究からすると、そうしたネガティブな空気感を出すことは、ポジティブ感情と逆の感情を促し、ワークエンゲージメントにも良い影響はない、、、とも言えるのかもしれません。
 仕事をただこなすだけではなく、前向きに楽しくやろうとすること。それがエンゲージメントを高め、バーンアウトを低下させる、そしてパフォーマンスも高める秘訣なのかもしれませんね。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>
幸福とは、そのまま変わらないで欲しいような、そのような状態である。

(フォントネル 「幸福論」)
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【編集後記】
ランニングをすると、色々と頭の中に
ねばねばとした感情(己の至らなさ、失敗したなーと思うことなど)
が沸き起こりますが、一定程度走ると、汗とともに流れ落ちていく感じがします。
(あるいは、内省をして、ポジティブな感情に変換される)

運動は、本当に素晴らしい。
ランニング後のスイーツ、コレがまた美味しいのです。


<今月の健康&運動習慣>
・11月のランニング距離:85km

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