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令和5年8月18日(第3464号)
「強み」と「キャリアを育む力」の関連を調べた論文がありました
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3151字/読了時間5分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日も終日ミーティング、
そして研修の企画、作成など。
最近子供のお迎え時に、
「黄色いランプ」(駐車場の出口にあるやつ)を
探索する旅に連れ回されているこの頃です。。。汗
*
さて、本日のお話です。
昨日のメルマガで
「強みを表現するキーワード118選」
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4572619/
をご紹介しました。
これは強みの尺度の代表的な3種
(=VIA-IS、クリフトンストレングスファインダー、Realize2)
で述べられている強みの概念をまとめたものです。
今日は、ある論文において
「118の強みの概念と
キャリア教育の関連性」
について探索的研究を行ったものがあり
面白く読ませていただきましたので
その内容をご紹介させていただければと思います。
それでは、早速まいりましょう!
タイトルは
【 「強み」と「キャリアを育む力」の関連を調べた論文がありました 】
それでは、どうぞ。
■近年、
「キャリア自律」という言葉を
聞く機会が増えててきました。
社会人はそうですが、
義務教育の小中学生から
キャリア教育は始まっているそうです。
引用をしますと、曰く、
”子どもたちの勤労観や社会性を養い
将来の職業や生き方に資するよう(中略)
小学校段階からキャリア教育を推進する”
(教育振興基本計画,2008)
だそうです。
うーん、ちょっとかたいですが
大事な教育ですよね。。。
■余談ですが、少し前に、
ある大手ものづくりの会社の
新入社員の皆様への研修を行いました。
そこで、こんな質問をしました。
「今の会社で定年まで働くだろう、と思っている人って
どれくらいいますか?」
結果、手を挙げた人は1人くらい。
皆さん遠慮しているのかな?と思い、
「これから先、会社が変わるだろう、
という人は?」
ほぼ全員手が上がりました。
■実際どうなのかは
若手社員の調査などが
示してくれていると思いますが、
「ああ、皆1つの会社に
勤め上げるという感覚は
やっぱりないものなのだな」
と思いました。
そして、それが普通だと思います。
すると、いずれにせよ、
”自らキャリアを発達させる力”
は、万人に求められるのだろう、
とも思ったのでした。
■さて、それらに関連する
「キャリア教育」
というものがあります。
これもまた定義がされています。
中央教育審議会(2011)よると、
こう述べられています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<「キャリア教育」の定義>
”一人ひとりの社会的・職業的自立に向け
必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、
キャリア発達を促す教育”
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
だそうです。
そして、続いて
このキャリア教育で育成すべき力として、
以下4つが挙げられています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<キャリア教育で育成すべき「基礎的・汎用的能力」:>
1)「人間関係形成・社会形成能力」
・他者の個性を理解する力、他者に働きかける力
コミュニケーション・スキル、チームワーク、リーダーシップ
2)「自己理解・自己管理能力」
・自己の役割の理解、前向きに考える力、自己の動機づけ、
忍耐力、ストレスマネジメント、主体的行動
3)「課題対応能力」
・情報の理解・選択・処理など、
本質の理解、原因の追求
課題発見、計画立案、実行力、評価・改善
4)「キャリアプランニング能力」
・学ぶこと・働くことの意義や役割の理解、
多様性の理解、将来設計、選択、行動と改善
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とのこと。
■なるほど、、、。
まあ、どれも大事だな、、
という感じではありますが
これがどのように決まったのかは
定かではありません。
ただ個人的な感想として、
”いろいろ含まれているが
幅広すぎて、なんとも掴みづらい”
と感じます。
そしてそのような批判は
その他にも存在しているようす。
(詳しくは以下の論文にて)
■そんな背景も含めて
本題に繋げたいと思いますが、
以下今日ご紹介する論文、
高橋誠、森本哲介(2019)
『基礎的・汎用的能力と性格特性的強みの関連における一考察
: 強みを活かしたキャリア教育の可能性』
では、
”キャリア教育の基本的・汎用的能力」を
心理学的アプローチに代表される能力指標(=「性格的強み」)
との共通性を見出す探索を行う”
ことを目的として、
考察がなされていました。
その内容が、
”考えてみたかったけど
考えたことはなかった”
というような内容で、
個人的に面白く読ませていただきました。
■論文の内容は、以下のようなお話です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『基礎的・汎用的能力と性格特性的強みの関連における一考察
: 強みを活かしたキャリア教育の可能性』まとめ
<本研究の目的>
・ポジティブ心理学の領域で開発されてきた「性格特性的強み」が、
キャリア教育の「基礎的・汎用的能力」と
どのように関連が見られるかについて探索的に検討を行う。
・そして、今後のキャリア教育で育成すべき能力を育てる上で
「性格特性的強み」をどのように活用しうるかについて考察する。
**
<論文の背景>
・キャリア教育は小学校の義務教育から
育成されるべきものと定義された
・そして、キャリア教育の「基礎的・汎用的能力」を
4つのカテゴリと具体的要素を示された。
・しかし、それらを見ると各能力に多様な要素が内包されている。
また、それらをどう測定し、促進するかも、詳細に検討されていない。
キャリア教育の現場での使用に於いて混乱することが予想される。
・よって、心理学的アプローチに代表されるような
ある一定の科学的根拠に裏付けられた能力概念、構成要素が
求められると指摘されている(中川,2016)
・その心理学的アプローチの1つとして、
「性格特性的強み」との関連を探索してみたい。
**
<性格特性的強みと、キャリア教育の基礎的・汎用的能力の関連>
・それぞれの内容を見ると、性格特性的強みと、
基礎的・汎用的能力には共通する部分が多いと見られる。
・よって、性格特性的強み尺度から
(VIA-IS、クリフトンストレングスファインダー、Realize2)
強みを表す118のキーワードを抽出する。
・そして心理学者2名によって、関連性を検討した。
**
<仮説>
・『VIA-IS』は、
倫理・道徳的価値観が反映されている強みが多い。
一方、『クリフトンストレングスファインダー』『Realize2』は
職業・競争的価値観が反映された強みが多い。
・よって、それぞれに対応する基礎的・汎用的能力が
示されると予測された。
<結果>
・結果は、118の強みのキーワードと
基礎的・汎用的能力の関連を検討すると以下のようになった。
1)人間関係形成・社会形成能力・・・49個
2)自己理解・自己管理能力・・・29個
3)課題対応能力・・・27個
4)キャリアプランニング能力・・・9個
※その他、18個
**
<考察>
・『クリフトンストレングスファインダー』『Realize2』は
職業的な成功を収めた人々の性格特性的強みを網羅している中でも
人間関係形成・社会形成能力と関連する強みが多く占めている事実から
社会的成功には人間関係や社会を形成する力が必要とされる可能性が示唆された。
・一方、論文の限界として
今回は探索的検討であり、尺度を使用した相関分析は行っていない。
また他の強み尺度は数多く存在していることもある。
・キャリア教育の研究や実践にそのまま使用することは困難であるため、
新たな性格特性的強み尺度の開発も求められるだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
とのこと。
■いやはや、
なかなか興味深い論文でした。
実際の論文には、
テーブルの表の形で
118の強みのキーワードと
基礎的・汎用的能力の関連を検討した結果が
「◯」で示されて記載されています。
■しかし、この論文の考察でも
述べられているように、
あくまでも研究者が
その関連を検討したものであり
様々な限界があります。
そもそも、
キャリア教育の基礎的・汎用的能力も、
その定義に対する批判もあります。
また、心理学者2名が検討したものも
どうしても主観の域を超えない感も否めません。
しかし、
キャリア教育の能力が言葉にされ
展開されている中で、
それらをどのように育めばよいのかを検討する上で
『クリフトンストレングス』『VIAーIS』などを活用して
”自分が伸ばそうなキャリア発達につながる
能力はココかもしれない”
と見つける指針となるなら、
大いに価値を持つものだな、、、
とも感じました。
”なんとなく気になっているけど
自分ではやらないこと”す。
それを研究者が探索してくれて
結果を共有いただけるのはありがたい限りだな、
そんなことを感じた論文でした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
欠点の中には美点に結びついているものがあり、
矯正しないほうがよい欠点がある。
ジョセフ・ジューベル
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【編集後記】
強みに関しても、まだまだ論文があります。
コツコツ、1つ読み進めていきたいと思います。
【メルマガのご感想について】
メルマガのご感想は、このメールに直接ご返信いただければ紀藤にのみ届きます。
どんなことでも、お気軽にご連絡くださいませ。
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