配信日時 2023/07/26 09:29

「アカデミック・プラクティショナー」に憧れた日。 ~『人材開発・組織開発コンサルティング』/第二章 人と組織の課題解決を読んで~【カレッジサプリ】

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令和5年7月26日(第3441号)


「アカデミック・プラクティショナー」に憧れた日。

 ~『人材開発・組織開発コンサルティング』
  第二章 人と組織の課題解決を読んで~


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 4344字/読了時間5分)


■おはようございます。紀藤です。

引き続き、宮崎に来ております。
おじいちゃんのお見舞いなど。



さて、本日のお話です。

今日も引き続き、
人材開発・組織開発の「日本初の教科書」である


『人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の「課題解決」入門』
(中原淳/著)
https://amzn.asia/d/0Mkjxwt


を題材に、まとめと感想を
記述していきたいと思います。

本日は”第二章 人と組織の課題解決”です。
それでは早速まいりましょう!

タイトルは



【「アカデミック・プラクティショナー」に憧れた日。

   ~『人材開発・組織開発コンサルティング』
   第二章 人と組織の課題解決を読んで~】



それでは、どうぞ。



■2020年の秋。

立教大学大学院 経営学研究科
リーダーシップ開発コースの説明会に参加した際に


『アカデミック・プラクティショナー』
 

という言葉を初めて聞きました。

聞いた率直な感想は
横文字でなんかカッコいい!でした
(頭悪そう・・・笑)


その時の説明では
「アカデミック・プラクティショナー」とは

”片手に「科学知」、片手に「臨床知」を持って
 現場の課題解決に向き合うことができる人物”

そんな表現をされていたように思います。


しかし、

人と組織づくりに関する「科学知」なんて
何があるのか全く知りませんでしたし、
どう勉強すればいいかわかりませんでした。



■とはいえ、当時も私は

クライアント企業の課題を考えて
提案をしている仕事をしていました。

そこでは
ビジネスパーソンとして
人に納得してもらえるような、

・As is(現状の姿)
 ↓
・To be(ありたい姿)

を、いろいろと考え
企画書に落とし込み、
問題を列挙して対応する解決策を提示する、

などは行ってはいました。



、、、しかし、

その問題の捉え方や解決策について
「科学知(理論)」などを活かしていたか、
というと、そうは思えません。

また、問題や課題を紐解く解像度も、
”主観のみ”に依存しており
いまよりももっともっと荒かった、

と言わざるを得ません。



■しかし、そんな私のように、


”「現状の姿」と「ありたい姿」を書き出して、
 「課題解決」をいくつか書いてみる」
 
という基本フレームだけで
課題解決に向き合いつつ、

そこから先に、どのように
人と組織の課題を深掘りすればよいかわからない、、、

そんな人事の方やコンサルタントの方も、
決して少なくないのでは

、、、とも思うのです。

(私もまだまだ勉強中で
 偉そうなことは全く言えませんが)
 


■さて、そんな前置きの上で

本書の

「第二章 人と組織の課題解決」

についてお伝えしたいと思います。

本章ではいわゆる

”課題解決”というよく使われる言葉

同時に、その深い意味を
海賊度高く理解できていないであろう言葉の意味を、

丁寧に紐解いていきます。


そして、特に

「人と組織における課題解決」

について、どのように考えればよいのか?という
思考の補助線を明確に示してくれます。



変わりやすい「人」、
掴みどころがない「人」、
常に変わっていく「組織」。

ぐにょぐにょ、うねうねする
人と組織の課題に対して

”我々が実現しうる説得力があり、
 妥当な「課題解決」のお作法”

とは一体どのようなものなのかを、

「科学知」と「臨床知」

というキーワードから、
道筋を示してくれている章となります。



■、、、ということで、

早速本章について
ポイントをまとめてみたいと思います。

以下、著書の言葉をおかりしつつ、
一部抜粋しながら、記載しております。


(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【第2章 人と組織の課題解決 のまとめ】

<1,そもそも課題解決とは何か?>


◯課題解決の基本的な考え方

・課題解決の基盤は「現状(As is)」「理想(To be)」、
 そのギャップである「問題(Problem)」である。
 そして、そのギャップを埋めるためのいくつかの要因が「課題」である。

・まず課題解決において取り組むべきことは、
 この「課題」を思いつく限り全て挙げ、並べることである。
 次に、この課題に対して、
 どのような「解決策」が考えられるかを検討する。
 (いわゆるMECEに考える)
   
・何を「課題と「解決策を決める上でのポイントは、
 1,実現可能性
 2,コスト・投資・時間
 3,期待できる効果 である。
 一定の労力・コストで最大限のインパクトを期待できるものを選ぶこと。
 
 
◯実世界における課題解決

・しかし、実世界では「現状(As is)」「理想(To be)」も
 常に変わりうるものである。

・また、人と組織に関わる問題は、つかみどころなく、
 ”現状と理想がそもそも見えない”という
 定義がしづらい「不良定義問題」場合が多い。
 
・この中で”課題と解決策を「仮決め」して実行していく”。
 これが実世界の課題解決のイメージである




<2,人と組織のコンサルティング>

◯クライアントのための課題解決

・そのように「課題」も「解決策」も移ろいやすく
 定義がしづらい中で、とても重要なことが
 「クライアントのための課題解決」であることだ。
 
・コンサルタントが一方的に考え、行うものではなく
 課題を持つクライアントに”寄り添い”、
 クライアントと”ともに”課題解決を行う。
 そしてクライアントが”自ら解決できるよう支援”する。
 
・「(クライアントという)宛先」のないラブレターは
 意味を持たない。
 

◯科学的な知見は「魔法の杖」ではない

・人材開発・組織開発コンサルティングとは
 「人と組織にまつわる科学知・臨床知」を有するコンサルタントが
 専門性を発揮し、クライアントの課題を解決することである。

・しかし、「科学知」の信頼性はどれほどあるのか?
 「科学知」とは、以下の特徴を持つ。
 1,客観性(主観ではない)
 2,論理主義(現象を言葉によって表現し、説明する)
 3,普遍主義(基本的に他の場所に適用可能)
 
・、、、ただし、ここに落とし穴がある。
 「人材開発・組織開発では科学知では対応でいない部分が多分にある」ことだ。
 
 その理由の一端は、こうした研究の多くが米国で行われていること。
 研究対象者は、米国のMBAの学生だったり、軍人であることも多い。

 そこで得られた原理・原則が日本企業でそのまま当てはまるかと言うと、
 ある程度は利用可能かもしれない。しかし当てはまらない事も出てくる。 

・すなわち、「人・組織の領域では、原理・原則を得られても、
 その精度はあまり高くない(よくて3割くらい)」と言える。
 
・科学知で説明できる、この3割を
 良いと思うか、大したことがないと思うか。これは人によるだろう。
 
 ただ著者は「科学知が3割手助けをしてくれるなら、
 おそらく課題解決において派手ゴケは避けられるはず」と考える。


◯「科学知」と「臨床知」を組み合わせる

・上記のように科学知には限界がある。
 全てが科学で説明がつかない状況で、
 「私たちが何に、どのように向き合うか」は
 クライアントとコンサルタントが考えるしかない。
 
・そこで必要なのが「臨床の知」である。
 臨床知は以下の3つの特徴を持つ。
 1,シンボリズム(立場によって様々な意味を持つ)
 2,コスモロジー(世界のあらゆる場は固有の場でそれぞれ違う)
 3,パフォーマンス(わたしが、自ら能動的に環境に働きかけ、行動を行う「知」である)
 
・つまり、色々な「わたし」がいる「固有の場」で、
 それぞれ固有の意味や環境、出会いを通じて、
 ”その場”にフィットする科学知の助けを借りながら、
 ”その場”にフィットする実践を私が組み上げることが、臨床の知である。
 
・科学知に忠実に行ったとしても、
 経営状況、経営者の考え方、管理者の状況、職場の状況、
 メンバーの思い、様々なものが影響するため、原理・原則どおりにはいかない。

 科学で解決できるのが「3割」であるならば
 残りの「7割」がコンサルタントの手と足でクライアントに関わり、
 探索をしていくしかない。
 
 
◯アカデミック・プラクティショナーというあり方

・人と組織に関するアカデミックな「科学知」を持ちながら
 実践的な「臨床知」を発揮し、
 経営と現場にインパクトを与えることができる「アカデミック・プラクティショナー」である。

・アカデミック・プラクティショナーは、
 野生を生き抜くために、「科学知」を片手に持ち、先人の肩の上から現場を見つめる。
 同時に「ひとりの人間」として現場の人々と向き合い、語り合い、関わることである。
 
・必要なのは、「科学知」と「臨床知」を共に抱きしめること。
 現場の人々と、「ともにいる覚悟」である。


※参考・引用:
 『人材開発・組織開発コンサルティング 人と組織の「課題解決」入門』(中原淳/著)
 P48~P73
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)



■いやはや、、、

なんだかまとめながら
勝手に感動してしまいました。

そして、私事ながら
この大学院で学べたことも、
本当に良かったな、と噛み締めてしまいました。
(はい、独り言です)



■なにかの授業で中原先生が、

「科学知はよくて3割くらいの説明力である。
 だって、人の心ってわからないじゃないですか」

と言っていた記憶があります。


自然科学など
物理的な世界を研究するものでは
それは99%くらいの再現性が求められるそう。

でも、人文科学
すなわち、社会学や心理学、人間の経験など
主観的な現象を科学しようとする場合、
よくて30%くらいである、

というのはなんだか納得できます。


そもそも「科学」は
検証可能なものを扱いますが、

多次元宇宙や、人の心など、
完全に科学で説明がつかないことも
ままあることが実際ですし、

そうした領域に「科学」が
貢献できることは一部なのかもしれません。


しかし、

「科学知」の限界を認めつつも

「科学知」として先人の知見から
最大限に学ぶという知性を持ちつつ、

科学地を抱きしめながら、
それらを武器として活用する。



■その上で、非合理な7割、
説明がつかない「臨床」については


主役は「実際の現場」であり
課題は「クライアント」にあることを

”現場とともにいる覚悟”

を持ちつつ、
専門家として向き合うこと。



そうした

「科学知」と「臨床知」の融合こそが
人と組織という定義が難しい問題を支援する
「アカデミックプラクティショナー」である。


このことに改めて、

そうありたいという思いを新たにすると共に、

当時、その言葉になんとなくのカッコよさと
憧れを感じた説明会のあの時を思い出した章でもありました。


そして改めて、
立教大学大学院 経営学研究科リーダーシップ開発コース(LDC)、
素晴らしい大学院だな、としみじみ思った章でした(笑)
(本当に、おすすめです)


ということで、また明日、

”第3章 人材開発の理論と実践”

へと続けたいと思います

最後までお読み頂き、ありがとうございました。


=========================
<本日の名言>

たとえ自分ではどんなに気に入っている仮説でも、
それに反する事実が明らかになれば、すぐにその仮説を捨てられるよう、
常に心を自由にしておく努力を重ねてきた。

チャールズ・ダーウィン(イギリスの自然学者)
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【編集後記】
『君たちはどう生きるか』を観てきました。
口コミにもあったように、色々な解釈ができる作品で
観終わった後のあれやこれやの解釈の話し合いがおもしろかったです。
いずれにしても、宮崎駿さん、すごいですね。。。

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