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令和5年7月24日(第3439号)
263km走った後、人の体と心はどうなるか
~263kmマラソン体験記(最終回)~
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 4651字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
さて、本日のお話です。
本日は長らくお伝えしてまいりました、
7/15(土)~7/17(日)の
「みちのく津軽ジャーニーラン(263km)」
のまとめをお伝えできればと思います。
本日でいよいよ最後となります。
※前回までのお話はこちら
◯「知らないから楽観的でいられる」 ~263kmマラソン体験記(1)~
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4549662/
◯120kmからが本当のスタート(そして絶望の始まり) ~263kmマラソン体験記(2)
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4550245/
◯「股間の痛みとリーダーシップ」海岸線の苦行 ~263kmマラソン体験記(3)~
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4550700/
◯闇の中の天使、私設エイドおじさん ~263kmマラソン体験記(4)~
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4551342/
◯思考を失ったゾンビの行進。「黒石駅」が「白石麻衣」に見えた日。 ~263kmマラソン体験記(5)~
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4552461/
それでは参りましょう!
タイトルは、
【263km走った後、人の体と心はどうなるか ~263kmマラソン体験記(最終回)~】
それでは、どうぞ。
■7/15(土)17:00、
”警報級の雨”と悪天候の中開催された
「みちのく津軽ジャーニーラン(263km)」がスタート。
1日目、雨。
警報級とはならずとも
じっとりと振り続ける雨。
山道を仲間5人とともに、
ヘッドライトを頼りにひたすら進む。
50kmで、足はもう痛い。
2日目も、雨。
明け方、100km地点。
仲間の1名が内臓のダメージにより、
尿の色がおかしくなったとのことで、離脱。
昼には、濃霧と極寒の
津軽半島最北端、龍飛岬を走る。
ノースリーブで寒さに震える。
午後は、海岸線の眠気を誘う波の音を
迫りくる眠気とともに走り続ける。
迫りくる夜では
続く、雨と汗で股擦れを起こし、
股間の激痛と眠気に耐えながら進む。
3日目、曇時々晴れ。
ここまでで2時間の睡眠。
眠い、ただただ、眠い。
すべての場所が「寝れるか寝れないか」で
判断する視点に変わってくる。
到達した200km。
1名の仲間は
関門に間に合わず離脱。
5名いたメンバーが3名になる。
照りつける暑さと睡魔、
股間の痛みと足の痛みの四重奏により
長く辛すぎる3日目。
ひたすら続く国道では
あまりの眠気に失神するように
道端に何度も倒れ込む。
ゾンビのようにくの字に体を折り曲げた集団の中、
自分も、フラフラとしながら走り続ける。
夜、19時半、
制限時間の30分前、
なんとか50時間30分でゴール。
■、、、言葉にすると、
それだけの出来事。
それでも263kmという、
かつてない距離を走破したことは
自分史上、
大きな達成感を
教えてくれる体験でした。
■「経験は最高の教師である」。
なんて名言があった(ような気がする)ものの、
この263kmのレースで、果たして自分は何を感じ、
何を得たのか?
具体的には、
「1)その体には、どんな変化が起こったのか?」
(・体重はどうなったか?
・翌日は動けるのか?
・体はどれくらいで回復するのか? など)
そして、
「2)その心には、どんな変化が起こったのか?」
(・世界の見え方は変わったのか
・どのような学びがあったのか
・どんな知識が増えたか、を含む)
について、
私のケースですが
心身に起こった変化を、
最後にまとめてみたいと思います。
■まず、
「1)その体には、どんな変化が起こったのか?」
について。
レース後色んな方に、
質問を頂いたので、
それを含めてお伝えしたいと思います。
正直、私自身、263km走ると、
人の体がどうなるのか気になっていました。
なので、以下、
セルフ人体実験のレポートです。
*
まず、走り終えた後の
「肉体のダメージ」
についてです。
一言でいうと、
「痛みと眠気」の
ワンツーコンボでした。
どっちもあまり気持ち良いものではなので
あんまり聞きたくないかもしれませんが、
せっかくなので(?)記載してみます。
(お読み飛ばしいただいて大丈夫です!)
ちなみに肉体のダメージとは
具体的には、
・足の痛み
(足首周りを中心にむくみがすごく、
3割くらい膨れ上がってりました。
足首より下が、痺れたようで感覚がなくなっていました。
長時間正座をしたときの感じに似ています)
・擦り傷系ダメージ ~お股編~
(主に、股擦れです。
股間、おしりの割れ目が何度となく摩擦され、
皮がむけて、炎症を起こしていました。
温水で洗浄し、ガーゼを当ててて処置しました。
しみるし、服が擦れて痛すぎて、股擦れを舐めてました・・・)
・擦り傷系ダメージ ~その他編~
(特に、腰のパンツライン、脇腹、背中が
擦りむいたような傷✕湿疹のようになっていました。
肌が弱いので、荒れに荒れておりました汗)
です。
太ももや、肩周りや、ふくらはぎも
当然痛いのですが、
肉体は同時にいくつもの痛みを
感知はできないらしいです。
私は普段は腰痛や、骨盤付近の痛みがありますが、
それ以上に痛い箇所があるため、
それらの慢性痛はどうでもよくなっていました。
*
ちなみに仲間では、
・足の裏の皮が向ける人、
・爪が剥がれる人(10枚中6枚・・・エグすぎる涙)
などもいました。
これらの症状は割とポピュラーです。
今回は、完走率40%でしたが、
リタイアの原因がこうした箇所の怪我、
故障であることが多く、
いかにして致命的ダメージを避けるかという対策が
263kmレースでは重要であることがわかります。
ワセリンを塗る、
擦れづらい着衣をする
(私は擦れづらくするためランニングスパッツを履き、
”走る猥褻行為”と仲間から揶揄されましたが(苦笑)
それが逆効果となり、逆にスレが広くなりました。
他者にも迷惑、自分もつらく、完全に戦術の失敗です)
■そして次に、
「体重の変化」
です。
レース直後に
体重を測ったわけではないので
具体的な数値はわかりません。
しかし、おそらくレース直後は
体重が相当減っていたと思います。
1日7700kcalを消費していた
計算になるのですが、その量は
・おにぎり(170kcal) 48個分、
・ラーメン(430kcal) 18杯分、
・トースト(233kcal) 33枚分、
となります。
しかし、当然そんなに食べて
走っていたらお腹が
タプンタプンになってしまいますので、
そんなに食べていません。
ただ、それくらいカロリーは消費している。。
レースが終わって
シャワーを浴びた時に、
全身を見てみると、
胸筋など体の筋肉が
著しく減っていました。
人は栄養が足りなくなると
筋肉を分解してエネルギー元にするのですが、
それを体感したのでした。
また、3日くらいは
とにかくお腹が空いて、
また体がむくんでいました。
体重がレースから2日後は
64kgになっていて、
レース前から3kg増えていました。
多分、しぼんだラクダのコブが
急激にエネルギーを吸収するような現象が
肉体にお来たのだと思われます。
■そして次に、
「睡眠」
についてです。
今回のレースでは
3日間の合計睡眠時間は2時間30分。
それ以外は基本、走っています。
ただし、睡眠が断たれると
極めて厳しい状態になるため、
「マイクロスリープ」とでも呼べる
20~30秒だけ眠る、ということで
強烈な睡魔をマネジメントしていました。
ごくわずか、時間にして20秒。
座っって目を閉じて頭を空っぽにする。
これだけでも一時的に回復するのです。
また10分だけ横になって眠ることで、
足の疲れは、明らかに回復したのでした。
人は、必要に迫られると
「動き続けられるようにできている」と感じました。
*
またレース後は、睡眠負債が溜まっており、
翌日は1日くらい目を覚まさないのでは、、、
と私も思っていました。
しかし意外にも、
翌朝朝8:00に普通にホテルで目覚めました。
寝たりなさを感じるかと思いきや、
思ったよりも、普通で自分でも驚きました。
そのまま、11時発の新幹線で
東京に戻り、その後、片付けをして
その日は休みました。
ちなみに、私は普段は睡眠がないと、
著しくパフォーマンスが下がる人で
7時間はしっかり睡眠が欲しい人です。
昼間は若干眠くなりましたが、
それでもまあ、想像できる範囲内。
翌日からは仕事を再開しました。
(ちょっとだけ誇らしく思ったり笑)
また、
2日目の夜からは
2時間起きに目が覚めてしまいました。
理由は「お腹が空いて、目が覚める」のです。
とにかく、腹が減る・・・。。
ゆえに、レースが終わって3日間くらいは、
枕元にプロテインバー(200kcal、プロテイン15g配合)をおいて
目が覚めた時はそれを食べて、また床についていました。
体が修復を求めていました。
■以上のことから、
「1)その体には、どんな変化が起こったのか?」
について、総括してみます。
私の結論は、
『人の体は、
意外と丈夫にできている』
です。
(雑なまとめでスミマセン・・・)
ただ、本当にそう思っていて
おそらく災害時とか、
なんとか移動しないと命の危険があるとき、
人の体は追い込み続けても
なんとか回復しようと工夫するのです。
また疲れても、目的があれば
次の日でも動けるように回復してくれる。
比較してはよくないかもしれませんが、
戦時中、何キロも子供を背負いながら
ほぼ寝ずに逃げてきた人などの話を
聞いたことがありましたが、
体に刻まれた太古の記憶、
狩りをしていたであろう時代のDNAは、
誰もの中に息づいているように感じましたし、
それを短期間で目覚めさせたような
50時間であったようにも思いました。
これはトレーニングをした/していないを
超えた話のようにも感じます。
■そして、
「2)その心には、どんな変化が起こったのか?」
です。
まず、細かいこと(知識などを含め)から
どんな変化があったのかをお伝えすると、
私の場合は、
今回の263kmプロジェクトを通じて
『流れがくるまで待つこと/耐えること』
が一番大きな気づきでした。
なんだか大げさなようですが、
人生、様々な「波」があります。
順境もあれば、逆境もあります。
楽なときもあれば、
苦痛のときもあるのが人生。
しばし「マラソンは人生のようだ」
と例えられますが、
263kmという旅路は、まさに
そんな人生によく似ています。
フルマラソンだと4~6時間などですが、
今回の超ウルトラマラソンでは50時間。
距離が伸びた分、
リアルな「人生感」を味わえます。
*
例えば
「自分の体が苦しい」と言っていたら
その体の声に休憩するところは無理せず
しっかりと休む。
逆に、体が軽く調子が良いと感じる時は
その追い風に乗って、できるだけ頑張って
距離を稼いでおく。
あるいは本当に眠たく、辛いとき。
早く動けずとも、完全に泊まることはしない。
諦めず、足を動かし続けること。
そうすると、
またやってきた元気な時を活かすことができる。
また辛い道のりの中で出会うサポートに
心から感謝を覚えたり、感動ができたりする。
263kmの旅路は
”流れに身を任せること”と
”自分の足で歩むこと”という2つの行為を
どのような心構えで向き合うのかを、
教えてくれたようにも感じたのでした。
これからの10年、20年、
同じように辛い時楽な時、
ノっている時ノっていない時、
色々来ると思います。
その時の状況に合わせて、
時に頑張り、時に休み、
自分なりに歩みを進めつつも、
流れに合わせて生きることのあり方を
身をもって学ばせてもらったように思います。
■、、、と大変長くなってしまいましたが、
このあたりでこの263kmプロジェクトも
幕を下ろしたいとおもいます。
こうしたことはこれまでも
どこかで見聞きした”教訓”でした。
でも自分がその足で、
その体で体験して感じたことは
「確かな教訓」
として我が身と心に
刻まれたと思います。
旅の素晴らしさ、
走ることの素晴らしさ、
それができることの感謝。
気持ちを揺さぶられた263kmのランニングの旅路と、
それに至る5月、6月の100kmマラソン、
仲間たちとの練習、
振り返ってみれば
楽しい思い出しかないのが
本当に不思議です。
苦痛は忘れ、
素敵な記憶だけが残っています。
お祭りが終わって
寂しさを感じていますが、
また次の挑戦を見つけて
踏み出していきたいと思います。
長文、最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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<本日の名言>
努力の成果なんて目には見えない。
しかし、紙一重の薄さも重なれば本の厚さになる。
君原健二(1964年オリンピックのマラソン選手)
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【編集後記】
これにて、本年のウルトラマラソンプロジェクト終了です。
本当に楽しい時間でした。恐ろしかったですが、
参加して本当に「良かったな、と思います。
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