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令和5年6月13日(第3398号)
玄人ランナーは、毎日フルマラソンを走っても疲れない?!
ー論文「マラソンレースが身体に及ぼす影響」よりー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3053字/読了時間3分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は休暇をいただき、
岐阜県飛騨より約5時間かけて
東京まで帰宅でした。
自宅に帰るまでが、マラソンです(たぶん)。
*
さて、本日のお話です。
走った後は、
肉体の疲労(筋肉の損傷)が著しいものです。
特に、ウルトマラマソン翌日は
やはり疲れが残っており、
ひたすら眠い、、、。
、、、とはいいつつ、
疲れたー、眠いー、では
社会人として心もとないです。。
ゆえに、
気持ちも肉体も新たに、
早めのリカバリー(回復)が大事。
そうしてこそ、
社会人ランナーとしての務め(?)も
果たすことができるもの、、、
そんな風に思っております。
*
そんな中で
「果たして
マラソン後のリカバリー(回復)には
どのような要素があるのか?」
「どうすれば早い回復を
期待することができるのか?」
がきになって
Google Scholarの論文検索で、
「マラソン 回復」
と入力して、
いくつかの論文を
パラパラと眺めてみたのでした。。
結果、回復についてもそうですが
何より、「人間の身体の可能性」を感じる
興味深い情報が得られました。
、、、ということで、
今日はそのお話について学んだことを
皆様にご共有させていただければと思います。
それではまいりましょう!
タイトルは、
【玄人ランナーは、毎日フルマラソンを走っても疲れない?!
ー論文「マラソンレースが身体に及ぼす影響」よりー】
それでは、どうぞ。
■人の体は、正直です。
脚を酷使すれば、
”筋肉の張り”を感じます。
それでもなお走ると
その張りは痛みや”つり”という
現象に続きます。
カロリーが不足してくると
回復のために体が重くなったり
眠たくなったりします。
マラソンを始めるまでは、
「走る最中に眠くなる」という人は
謎でしかなかったのですが
(だって走っているのですから)
先日のウルトラマラソンでも
栄養補給ジェルを落として
そのまま走ったら猛烈に眠くなり、
「肉体とは正直なものだなあ」
と感じたのでした。
(落とすなよ、という話ですが)
■一方、体感覚として
”肉体の正直さ”を感じる背景には、
より生理学的なメカニズムが
働いているようです。
(なんとかターゼや、なんとかテーゼという
酵素が増えるとか減るというやつです)
そして今まさに、自分自身が
肉体にダメージを負っており、
回復しようとしている中で、
自らの肉体の中で
どのようなことが起こっているのか、、、
が気になり、
いくつかの論文を見てみた、という話。
■まず1つ目の論文。
『筋硬度の変化から見た腓腹筋における
サポーターの疲労回復効果についての研究.』
杉本(2020.)
という論文を見てみました。
いわゆるランナーの人が
よくつけている
「ふくらはぎサポーター」
が筋肉の張りに与える影響について
調べた論文です。
8名の実験群と、
8名の対照群に行い、
マラソン大会前、
マラソン大会の1日後
マラソン大会の3日後、
マラソン大会の7日後
に「筋硬度測定器」を使って、
張りを調べたという内容。
結果からすると、この論文では
”マラソンの1日後の筋肉の張りは
他の群と比べて低い傾向があったものの、
3日後、7日後は特に変化がなかった”
となりました。
よって、
”ふくらはぎサポーターは
おしゃれでやっているのではなく
翌日の筋肉の張りを軽微にする影響がある”
というのが示唆されます。
(あれはファッションで
やっているだけではないのです)
■そして、読んでみた
2つ目の論文。
こちらは
『マラソンレースが身体に及ぼす影響』
体力科学 67 (4): 269–79.
髙山,鍋倉.(2018).
というタイトルで、
マラソンレースが与える影響について
生理学的指標とパフォーマンス指標を用いて
より精緻に調べられていました。
そして、まさに
「人の身体の可能性と、
奥深さを感じさせる内容」
だったのでした。
詳細は割愛しますが概要として、
(1)マラソンレースが筋損傷や生理・パフォーマンス変数に及ぼす影響を調べた
先行研究を要約する
(2)マラソンレースが体調に及ぼす
中長期の影響について考察する
(3)短期間に連続してレースに参加する一部のランナーに対する
実践策を提案する
という論文です。
■そして論文の結果、
・筋損傷・筋肉痛は
「マラソンレース2日後」まで発生。
その後は概ね回復している
・レースパフォーマンスと
密接な関係を持つ生理学的能力は
「マラソンレース1週間以内」に回復する
としています。
なるほど。
筋損傷や筋肉痛を考慮すると
レース後翌日は休息をし、
翌々日もあまり無理はしないほうが
人間の肉体的には望ましいようす。
■一方、ここで
面白い話が紹介されています。
論文の中に
サラリと書かれていましたが、
個人的に興奮をしてしまうものでした。
まさに
「人間の肉体の可能性を感じる」内容として、
”フルマラソンを連続で走る
ランナーの調査”
がなされていました。
以下、引用をいたします。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
トレーニングやレースの経験が豊富なランナーでは、
マラソンレース後の筋損傷が軽微であることも報告されている。
レース経験が豊富なランナー8名
(マラソンレースの平均完走回数:108回)が
1週間にわたりマラソンレースに
毎日出場(42.195 km×7日)した前後に
血液検査を実施した報告によると,
最後のレースから
20-24時間後のCK(クレアチンキナーゼ:筋肉がダメージを受けると放出される酵素)の変化は
1回のマラソンレースを対象とした報告に比べると些細なものであった。
筋損傷には「繰り返し効果」と呼ばれる筋損傷抑制効果があり,
事前に同じような運動を行った対象者では
筋損傷は軽減されることが知られている。
※引用:髙山,鍋倉.(2018).
“マラソンレースが身体に及ぼす影響.”体力科学 67 (4): 269–79.
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
とのこと。
■うーん、すごい。。。
7日間✕42km(フルマラソン)
でもダメージがほぼないそうです。。。
まさに人体の神秘。
現代の足軽。
走る佐川急便です。
もちろん、これは
経験豊富なランナーの話。
まさに練習の
積み重ねによるものですが、
その積み重ねた距離によって
”筋損傷が起こりづらい身体になる”
という生理学的な変化が訪れる、
というのはまさに可能性と感じます。
■この結果から見ると、
”健康的な男性ランナーを対象とした場合,
繰り返しのマラソンレース出場は,
無症候性の血管損傷の追加的な危険因子にはならないと結論づけた”
とあり、その他にも
”48歳のときに最初のマラソンレースを完走し,
その後91歳までに627回のマラソンレースと
117回のウルトラマラソンレースを完走した男性ランナーを対象とした研究"
などが紹介されており、
マラソンによる肉体的な
パフォーマンスの向上は
年齢も中年層からでも問題ないことがわかります。
■もちろん、走りすぎると
”加齢によるパフォーマンスの低下を
加速させる可能性もある”
という研究もありますし、
”練習不足の人が
オーバーリーチ(過負荷)状態で練習すると
ダメージからの回復が遅くなる”
という研究もあります。
ゆえに、ランナーとして
この論文を活用するのであれば
自分の身体と対話をしながら
・何を目標として
(タイムか、出場回数か)
・どれくらい時間を投資して
(練習時間もかかる)
・どのような自分でありたいのか
(肉体的・精神的に)
も含めて、参考にする必要もあるのだろう、
と思います。
■しかしながら
こうした研究結果を見ることで
(基本的には同じ構造である)
人間の肉体の特徴(損傷と回復)を
理解することができますし、
同時に、
「人間の肉体が持つ可能性」
についても感じさせられて、
もっともっとできることがありそうだ、、、
と思わせてくれる、
そんな事を感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
純粋な喜びのひとつは
勤労後の休息である。
イマヌエル・カント
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【編集後記】
津軽みちのくジャーニーラン(263km)まで、あと33日
確かに、前回の野辺山マラソンよりも
回復が若干早い気がします。
そして7月がまさに本番、、、!
みちのくジャーニーの完走に向けて
ここから準備を重ねていきたいと思います。
ああ、楽しみ。。。
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