配信日時 2023/05/30 09:35

隠された対立の要因:「ゴースト」の存在【カレッジサプリ】

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令和5年5月30日(第3383号)


隠された対立の要因:「ゴースト」の存在


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2315字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

さて、本日も昨日に引き続き、

『対立の炎にとどまる』
(アーノルド・ミンデル/著)
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4506062/

の書籍から、
「プロセスワーク」の話の一端を、
皆様にご紹介させていただければと思います。

それではまいりましょう!

タイトルは、



【隠された対立の要因:「ゴースト」の存在】



それでは、どうぞ。



■「対立」には様々な種類があります。

個人から国家まで

地域社会の問題、
民族紛争、
企業の主流派(花形部門)と非主流派

などなど。


そしてこの対立の原因としては、
先日もご紹介したような、

・価値観・信念の違い
・リソースの限定性
・コミュニケーションの不備
・恐怖や不安
・人間関係のパワー

などを挙げることができます。



■しかし、

もう一つ、
対立の原因となるものに

『ゴースト』

と呼ばれるものがあるのです。

今日はこのお話に
スポットを当ててお伝えしたいと思います。


俯瞰をしてみると

私たちは脈々と続く歴史に
個人が組み込まれている事に気づきます。


例えば、

「価値観・信念」の対立も、
生まれ育った環境が影響しています。

例えば著書で紹介されるケースでは
こんなお話がありました。

あるカップルにおける対立で、

「キリスト教徒とユダヤ教徒」

という宗教の違いが
ゴーストとして対立する形で立ち現れた、

というお話。


具体的にお伝えする上で、
以下、本書より引用いたします。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 数年前、私はあるカップルとワークした。
 
一人はユダヤ教徒で、もう一人はキリスト教徒だった。
彼らは長い間一緒に暮らしていた。
 
彼らは互いに愛し合っていたが、ときどき退屈になると訴えた。
何か社会的な問題があるかと尋ねると、ないと答えた。
 
 
 それから私は民族的な違いについて訪ねた
二人ともはじめは不意をつかれたように見えた。
 
実は、キリスト教徒のほうが、
ユダヤ教徒の家族が裕福であることに苛立ち、
知っていることが明らかになった。
 
ユダヤ教徒の男性は立ち上がってあるき出し、
自分自身は金持ちでなないと主張した。

彼は傷つき、激怒していた。
 
彼はしばらく沈黙したあと、
キリスト教徒のパートナーに対して、
感情を抑えすぎると批判した。
 
 (中略)
 
『ゴースト』が現れたのだ。
 
彼らは、「金持ちのユダヤ教徒」と
「感情を抑制したキリスト教徒」について
数分間わめいた。
 
(P109~110)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)


とのこと。



■さて、どのように感じれらましたでしょうか。

ここでは

「あるカップルの対立」

の中に、

「金持ちのユダヤ教徒」と
「感情を抑制したキリスト教徒」の対立が

『ゴースト』として
代弁する形で立ち現れている様子が
描かれています。



■いや、そんなの
こじつけじゃないか、、、

と考えることも
できなくはありませんが、

一方、

「人が持つアイデンティティは
 所属する文化、団体などの影響を受ける」

ものです。

人と人の中で起こる対立は
ある意味”文化間の対立”を
象徴して起こしている、、、

とも考えることができます。


そういった、
普段は意識していないけれども
我々が組み込まれている、

この世界に存在してきた
構造的な対立の原因となる「ランク」を
象徴したものを、


『ゴースト』


と本書では呼びます。

(例えば、
 キリスト教とユダヤ教、
 人種の違い、異性愛者と同性愛者
 学歴、階級、年齢など)



■日本は同一民族であるため、
こうした人種の違い、宗教の違い
などはなかなか意識しづらいもの。

しかし、

階級や教育においては
「家柄」などの表現にもあるように、
ランクの違いは存在します。

そうすると

例えばある夫婦において
ランクにより抑圧されている感情の背景には、

「教育に恵まれなかった家柄」
 VS
「教育にゆとりがある家柄」

が『ゴースト』として立ち現れて、
その対立を引き起こしている、

という可能性もある、
と考えるようです。



■このように

対立の構造に関わる存在を
『ゴースト』として切り分けると、
色々と便利なことがあります。


それは

”起こっている対立を
 個人対個人の問題ではなく、

 もっと大きなシステムとして
 捉える事が可能になる”
 
ということ。



■例えば、私自身の例ですが、

このプロセスワークを
参加者として参加をしたときの話。

そこでは対話のテーマが、

「女性活躍」

という話で繰り広げられました。



そこに存在した『ゴースト』は、
いくつか存在していましたが
例えば、

・家父長制こそが日本の文化だ、
 と考える伝統的男性

・自由を抑圧されていると感じる女性

・その間で取り残されており(周縁化されている)
 寂しさを感じている子供
 
などが出てきました、


そして次に、

そのゴーストのロール(役割)を
お互いに意見を対話し合う、

ということを行ったのですが、

そうすることで、
自分が「どのゴーストの役割」に
意見がよっているのかを理解することになります。


同時に、他の人の意見も、
そうしたゴーストの役割を
代弁して言うのです。


すると、

自分の立場、
相手の立場
自分と相手だけでは気づかない立場

すなわち、

”周縁化されたゴースト”
(焦点を当てられていない、
 抑圧された感情を持つ存在)
 
の存在も見える化されます。


すると、

放置していた問題を含めて、
俯瞰してその対立を捉えることができて、
「アウェアネス(新たな気づき)」が生まれる

そんなプロセスがありました。

言葉にすると平坦になってしまいますが、
そこには感情の渦があり、
涙する人もいるような刺激的な場でした。



■何かの本で、

大人の発達とは、

”自分よりも更に大きな視点で
 自分のことを捉えられるようになる”
 
とありました。

つまり、自分だけではなく、
相手の置かれた状況も想像し、

またそれを生み出す社会的な構造にも
目が行くようになること、

さらにはそれを
私事と考えられるのが大人の発達である、

といいました。



■そうした意味でも

『ゴースト』という表現を
思考の引き出しに入れておくこと、

それはそのような俯瞰した視点を持つ
象徴的なキーワードになるのではなかろうか、、、

そんなことを著書を読みつつ
感じた次第です。


自分の中の「ゴースト」にも
自覚的でありたいな、と思いました。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

みずからと対立するものは、みずからと調和している。
逆方向に引っ張り合う力の調和というものがあるのだ。
たとえば弓や竪琴の場合がそれである。

ヘラクレイトス
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【編集後記】
飛騨高山ウルトラマラソンまであと12日。
(5月の走行距離160キロ)

昨日は10キロのランニングでした。

道に、突然穴が空いていて
足首を捻ってしまい、大きくバランスを崩しました。

大事には至らなかったのですが、
驚いたのが、スポーツ用ウォッチ(Garmin forrunnner )では
「事故検知センサー」があり、それが反応をして
妻に自動的に居場所を知らせる連絡がスタンバイされました。

そうした機能がどのように発動するのか知りませんでしたが、
確かにこうしたテクノロジーがあると実に安心だよな、、、
と感じさせられました。

スポーツも、科学の力に支えられていると感じます。


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