配信日時 2022/11/28 09:40

管理職に対するコーチングトレーニングの9つのポイント ー論文『管理職のコーチング:課題、機会、トレーニング』より【カレッジサプリ】

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令和4年11月28日(第3203号)


管理職に対するコーチングトレーニングの9つのポイント 
ー論文『管理職のコーチング:課題、機会、トレーニング』より


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3043字/読了時間4分)


■おはようございます。紀藤です。

昨日は大学院メンバーと
朝から皇居ランニング10キロ。

その後、皆で大学に移動し
同期と共に論文を書いておりました。

周辺で頑張っている人がいると
良い意味で緊張感が生まれて進捗します。

環境は大事ですね。



さて、本日のお話です。

これまでマネジリアルコーチングについては
いくつかの研究を調べてみました。

一方、

「コーチングスキルのトレーニング」については
まだ調べきれていないところが多かったことに
気づきました。

ということで先日より

キーワード「Coaching development program」

でGoogle Scholarで調べてみると、

オーストラリア、イギリスなどの
コーチング心理学の学位が取得できる大学で

コーチングスキルのトレーニングについて
いろいろな論文があることがわかりました。

(論文が後半に差し掛かっている
 今更ではありますが、、、)


今日はそんな中で出会った論文からの学びを
ご共有させていただければと思います。


今日参考にさせていただく論文は、


邦訳『管理職のコーチング:課題、機会、トレーニング』

McCarthy, Grace, and Julia Milner. 2013.
“Managerial Coaching: Challenges, Opportunities and Training.”
International Journal of Management & Enterprise Development 32 (7): 768–79.

でございます。

それではまいりましょう!

タイトルは



【管理職に対するコーチングトレーニングの9つのポイント 
ー論文『管理職のコーチング:課題、機会、トレーニング』より】



それでは、どうぞ。



■1on1を始め、

管理職によるコーチングの活用は、
これまでもいろいろな研究があります。

そして職務満足やパフォーマンス、
個人の学習などにも繋がることがわかっており、

総じて

「管理職によるコーチングには
 メリットがある」
 
と言えるかと思います。



■一方、

そもそもコーチングという領域自体、

使われる分野もスポーツから企業まで
扱う領域もライフコーチングからビジネスコーチングまで
定義も解釈もそれぞれあったりして、

大変、学際的な分野です。


そして考えてみれば

スポーツにおけるコーチングと
人生全般を扱うライフコーチングと
ビジネスにおけるコーチングは
求められるスキルが違ってくる、

ということも想像に難くありません。



■そんな中で、

特に”管理職が行うコーチング”の場合、

(すなわち外部のプロのコーチや
 社内の専門コーチではない場合)

果たして、どのような方法論や
トレーニングがあればよいのでしょうか?

このことについて

今回ご紹介する論文で、
いくつかのスキルについて
触れられておりましたので、

以下まとめてまいります。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
論文『管理職のコーチング:課題、機会、トレーニング』まとめ


●{論文の目的}
・本論文の目的は、成長中の管理職向けコーチングの実践に関する洞察を提供することである

●{論文のアプローチ}
・本論文では、マネジャーのコーチングに関する文献を検証する。
 また、コーチングトレーニングの実用的な意義についても議論する

●{論文の価値}
・コーチングを行うマネジャーの課題を概観し、
 コーチング研修プログラムの開発/検討領域を特定し、
 マネジャーがコーチングスキルを適用することを支援するための実践的な提案を行うものである。


●{内容まとめ}
(1)関係
・コーチと被コーチの間の関係はコーチングの重大な成功要因である。
(Bluckert,2005)

(2)傾聴
・コーチングに期待される傾聴は、正式なコーチングでなくとも
 マネジャーとチームメンバーの関係を強化する可能性が高い。(Dubrin,2005)
・傾聴は信頼と真正性の両方を生み出す(Scoular,2010)。
・話を聞くことによって、人々がエンゲージされ、関心を持ち、仲間に囲まれ
 大切にされていると感じられるようになる(Alvesson and Sveningsson,2003)
 
(3)質問
・コーチングを行うマネジャーは、被指導者に考えさせ、
 目標や前提を振り返らせ、気付きと成長を促すような質問の仕方を
 学ばなければならない。
・コーチングマネージャーは、質問に対する答えを聞くことで、
 従来のマネジャーよりもはるかにチームメンバーの思考やモチベーションを
 理解することができる(Whitmore 2009a)
 
(4)目標設定
・多くのコーチング理論において、目標設定に強い焦点が当てられている(Garvey et al.2009)。
 これは、明確な期待を設定するという管理職の役割によく合致している(Yukl,2010)。

(5)フィードバック
・フィードバックに 続いてコーチングによる目標設定が行われた場合には、より 顕著な改善が見られるとされている McDowall and Millward、2010)
・コーチングを受けたマネジャーは、効果的 なフィードバックの与え方について、新しいメンタルモデルを開発する (Steelman et al. 2004)。
 実際、コーチングは、特に、自分自身をどう見ているかということと、自分の行動 を他の人がどう見ているかということの間にギャップがある場合、
 人々がフィードバック を受け入れるのを助けることから始まることが多い (Folkman 2006)
 
***

(6)マッチング
・信頼関係が構築されていない場合、
 または、チームメンバーがマネジャーからコーチングを受けることを望まない場合、
 コーチングは効果的ではない(Ellinger et)

(7)パワー
・コーチングは、平等であるという前提で始まるが(Rostron 2009)、
 マネジャーがチームメンバーにコーチングを行う場合は、そうとは限らない。
・コーチングマネージャーとの関係では、マネジャーの地位や権限には あまり重点を置かず、
 従業員の考えを聞き入れ、受け入れようとするマネジャーの意欲に重点を置く。

(8)守秘義務
・守秘義務はコーチングの成功の基本であるが(Garvey et al.2009)、
 正式なコーチング関係と同じレベルの守秘義務を期待するのは非現実的であるとした(Anderson et al.2009)。
・コーチングマネージャーは、チームメンバーと事前に守秘義務について明確に話し合い、
  チームメンバーが後で自分の開放性を後悔する可能性があると感じた場合は、必要に応じて会話を中断することもある
  
(9)ロールスイッチング
・コーチングはマネジャーの主要なアプローチだが、コーチングの非指示的役割とは異なり、
 ティーチング、トレーニング、メンタリング、コンサルティングといった、
 情報、指示、助言を与える役割を担う場合もある(Ellinger et al.2010)。
・役割の選択は状況に依存する。例えば、危機的な状況など時間が重要な状況では、指示的なスタイルが最適かもしれないし、
 品質や学習を高めることを目的とした他の状況では、最適なアプローチはコーチングであるかもしれない。
 個人とグループの両方にとって、コーチングが最も効果的な状況を特定するためには、さらなる研究が必要である。
 
 
※参考:McCarthy, Grace, and Julia Milner. 2013.
“Managerial Coaching: Challenges, Opportunities and Training.”
 International Journal of Management & Enterprise Development 32 (7): 768–79.
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。



■ふむふむ、なるほど。

個人的な感想としては、

「コーチングという領域で
 大事なことは基本変わらない」
 
と率直に思いました。

もちろん厳密に見ていけば
もっと細かい定義もあります。

しかし、ベースとなる基本スキルとしては
ここで述べられているような

・関係性
・傾聴
・質問
・目標設定
・フィードバック

などになるのだろう、ということ。

仕事の割当とか
期待を明確に伝えるなど、

上下関係がある管理職だからこそ
重要な行動も管理職コーチングでは言及されますが、

今回の論文を見て、
やはり土台となる一階の部分は揺るがないものがある、

そんなことを感じます。

同時にコーチングが完全なものでもなく
シャバでは、「(9)ロールスイッチング」のような
適時ティーチングやメンタリングなど
必要に応じて変えることも求められる、
というのも現実的でした。



■また、この論文では

組織におけるコーチングに関する
オーストラリアのガイドラインを紹介していました。

以下引用します。


”コーチングには一連の複雑なスキルが必要であり、

「短期間のコーチとしてのマネジャー養成コース」では、
 組織内に完全なコーチング能力を持たせるために必要なレベルの複雑さと高度さを備えた
 これらのスキルを習得できないことを強調しています(SAI 2011 p.26)。
 
 マネジャーが個人をコーチするだけでなく、
 チーム全体をコーチすることを期待されている場合、
 この役割を効果的に果たすために、グループダイナミクスと
 チームコーチングのトレーニングが必要です(Thornton 2010)。”


とのこと。


、、、確かに。

継続的なトレーニングが必要であり
かつチームをコーチングするためには
また別の知識やスキルも必要になる、

実にもっともな話であると共に、

「学び続けること」の大切さを
改めて感じさせられるそんな一節だな、

と感じた次第です。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

性に合わない人たちと付き合ってこそ、
うまくやって行くために自制しなければならないし、
それを通して、我々の心の中にあるいろいろ違った側面が刺激されて、
発展し完成する。

ゲーテ(ドイツの詩人・劇作家)
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【編集後記】
論文を丁寧にまとめるメルマガは時間がかかります。
しかしこれがまた一つの資産となると思うと、
書き終わったときには書いて良かったな、と思えます。
まあ、一週間もすれば忘れるのですが(苦笑)

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