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令和4年10月21日(第3165号)
ナラティブ・セラピーとは(前編) ー社会構成主義の活用ー
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2122字/読了時間3分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は終日研修の企画、作成でした。
同じプログラムでも実施するたびに、
もうちょっとこうした方が良いと見えてきます。
今年は理論中心に、
来年はワークショップのデザインも
学びたいと思ってまいりました。
*
さて、本日のお話です。
昨日「構築主義(constructionism)」のお話をさせていただきました。
(構成主義、または社会構成主義
ともいわれます)
※昨日のお話はこちら↓↓
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4325014/
その中で
”構築主義の3つの基本的前提”という
というお話をお伝えいたしました。
本日も、
構築主義のお話をより掘り下げて、
現実的な活用方法として
どのように使われているのかについて
ご紹介させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【ナラティブ・セラピーとは(前編) ー社会構成主義の活用ー】
それではどうぞ。
■病は物語のかたちで存在している。
、、、なんて聞くと、
どのように感じますでしょうか。
「病」も焦点を当てて
その定義を考えてみると、
曖昧なゾーンがあることに気が付きます。
■医療社会学の領域で、
「医療化論」
という分野があるのですが、これは
”かつて病気とみなされていなかった現象が、
病気とみなされるようになり、
医療の管轄下で統制されるようになる過程”
を指すそうです。
例えば、
・精神病
・アルコール依存症
・児童虐待
・同性愛 他
などが挙げられるようす。
■ある時代では病気でなかったものが
社会的に”病”と見なされていく。
(あるいは病ではない、と見なされる)
そして”病”と診断されると、
自分や周りから”病人”と認知し認知され、
それによって
何らかの精神的・肉体的を影響を受ける。
すなわち
「病は物語のかたちで存在している」
というわけです。
■ただ、このことを考えると
「逆」も考えることができます。
つまり、治療や回復も、
何らかの”物語の変更”をすることで、
捉えることができるのではないか、
ということ。
そして
「セラピストとクライエントが
共同で物語としての自己を構成していく実践」
を『ナラティブ・セラピー』と呼び、
社会構成主義を理論的基礎とした
医療現場での活用として用いられています。
■そしてその内容が
私たちの日常でも
転用可能の内容にも感じましたので、
以下ご紹介させていただければと思います。
少し長いので、今日は
”ナラティブ・セラピーの前提”
にのみ、解説したいと思います。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【ナラティブ・セラピーの3つの前提】
<1)現実は社会的に構成される>
:われわれが生きる現実が
ひとびとの共同作業によって形作られることを意味する。
たとえば、私一人が物思いにふけって作り上げた自己イメージは
それだけでは現実とはならない。
他者との関わりの中で、
他者が私に対して思い描くイメージとぶつかり合い、
すり合わされる中で、現実の私が形作られていく。
<2)現実は言語によって構成される>
:現実を構成するうえで、
言語が決定的な役割を果たすことを意味する。
現実は、言語の網の目によって維持され、
一定のまとまりをもつものとして経験される。
言語の体系にそって現実は理解される。
<3)言語は物語によって組織化される>
:言葉は物語の形式をとることによって、
意味の一貫性とまとまりを獲得する。
様々な出来事の中から、重要な出来事と
そうない出来事が区別されて、
出来事と経験の連鎖が一つの物語となったとき、
我々は過去から現在へと至る経過を理解する。
現実は物語の形式に翻訳されることで
明瞭な形をとる。
※上野千鶴子(2001)『構築主義とは何か』.勁草出版 P50-51
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
■なるほど、、、。
こう見てみると、
日常の様々なところに、
その具体例を見ることができるように思います。
例えば
「ウチの会社らしさ」
などもそう。
こうした風土のイメージなども、
明確に、物体としてそこにあるものではありません。
色々な側面があるけれども、
「自分たちは◯◯である」と皆で、共同して定義し
そしてそれを積極的に語ることによって
そちらに引き寄せられていく、
という作用もあります。
まさに、
”1)現実は社会的に構成される”
に当てはまるな、と思いました。
■あるいは、
”2)現実は言語によって構成される”
の話も興味深いです。
例えば、
”エスキモーは雪の表現を6種類持つ、
なんて話を、私は思い出しました。
(※ちなみに
「降雪=カニク」
「溶かして水にする雪=アニウ」
「積雪=アプト」
「きめ細やかな雪=プカク」
「吹雪=ペエヘトク」
「切り出した雪塊=アウヴェク」の6種
だそうです)
他では「雪=snow」の一種類で、
それが”現実”として捉える文化もあれば、
「雪=6種類」と言葉によって
その”現実”が違うものとして認知される文化もある。
*
ちょっと話が飛躍するかもしれませんが、
英語では「主語」が構文の中に入る一方
日本は「主語」を省略する言語である、
というのは有名です。
そこから、
誰の意見なのか、
誰が誰に対してなのか、
を明確に意識するような動きも、
少なからず出ているのでは、と思います。
(という英語学習中級者の意見でした)
■言葉って、深いですね。
ということで、長くなりましたので、
ナラティブ・セラピーの具体的な実践については
明日に続けたいと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
全ての偉大な真理は、
最初は冒涜の言葉として出発する。
バーナード・ショー
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【編集後記】
研修プログラム開発の際には、
大体一人だと行き詰まることが多分にあります。
そんな時に、壁打ちとなってアイデアを出してくれるスタッフさんや
夜遅くまで、一緒に文字修正など付き合ってくれるデザイナーである妻(社員)に
改めて感謝だな、と思う今日この頃。
一人でできることなど、たかだか知れていることを
大学院のチームでの課題解決のワークで痛感いたしました。
相乗効果の力、大いに活用していきたいと思います。
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