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令和4年10月19日(第3163号)
「OJT」の効果の研究
ー論文「職務遂行能力自己評価に与えるOJTの効果 —地方自治体職員を対象として一」より
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2625字/読了時間4分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は外部人事パートナーとして
サポートさせていただいている会社へのコーチング。
自分の考えを適切に表現するための
「言葉を持つ」こと、大切だなと感じた1日でした。
*
さて、本日のお話です。
部下育成の行動について
「OJT」なるものがあります。
ただ、意外とOJTとは
一体いかなるものなのか?
という定義が曖昧だったと思い
調べてみました。
今日はOJTの論文、
“職務遂行能力自己評価に与えるOJTの効果 —地方自治体職員を対象として一.”
(國城、榊原. 2005.)
からの学びをご共有させていただければと思います。
それでは早速参りましょう!
タイトルは
【「OJT」効果の実証研究
ー論文「職務遂行能力自己評価に与えるOJTの効果 —地方自治体職員を対象として一」】
それでは、どうぞ。
■「OJT」という言葉自体は、
様々な組織で使われ、
実際に導入されている内容かと思います。
ご紹介の論文では
”職場内訓練(On the Job Training)では,
業務に必要な知識・技能を主として職場の上司や先輩が,
教育的な配慮を加えながら業務遂行の過程で習得させようとする方法”
と述べられています。
■また、そのルーツを遡ると
OJTとは元々、戦時中の造船所で行われていた
職業訓練の一つが「OJT」だったそう。
生産現場の人材育成を効率的に実施する指導方法として
「1)見せる(show)」
:学習者が何をすべきかデモンストレーションする
「2)説明する(tell)」
:学習者がすべきことと、なぜそうしなければならないかを説明する
「3)行う(do)」
:学習者に仕事をやらせてみる
「4)チェックする(check)
:学習者が正しく実行しているときは褒め、改善すべき点をフィードバックする
というステップがあり、
これがOJTのルーツであったそう。
(Dooley 2001; Rothwell and Kazanas 2004)。
■、、、というように
OJTにも様々な歴史や定義があるようですが、
”一般的にOJTとは
「上司ー部下間における発達支援関係」
と把握されることが多い”(小林 2000)
ということで、
「上司が部下の発達を
職場において支援する取り組みのあれこれ」
と大きく理解してよいのかな、
と思います。
■さて、そんなOJT。
実際にどんな効果があるのかを、
調べた研究がございます。
それが、先述の
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
“職務遂行能力自己評価に与えるOJTの効果 —地方自治体職員を対象として一.”
(國城、榊原. 2005)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
の論文でございます。
曰く、
”「日本企業の能力開発は,職場内訓練 が主体である」と述ぺているように,
わが国での能力開 発の方法としてもっとも重視されているのが OJT である。
しかし, OJT の有効性に関する注目すべき実証的研究は見あたらない。”
(論文より引用)
ということでOJTについての効果を
検証してみようではないか、
ということで書かれた論文となります。
■では、一体どのような内容なのか。
以下ポイントをまとめてみます。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【論文まとめ「職務遂行能力自己評価に与えるOJTの効果」】
<目的>
職務遂行能力に対するOJTの効果を分析すること
<対象>
・地方自治体職員 603名
(性別 男性 374名、女性 229名)
(年齢:20代 3名、30代 303名、40代 291名、50代以上 6名)
<研究内容の詳細>
1、”職務遂行能力向上の内容を構造的に分析”する。
2、”職場における有効なOJT内容を明確化”する。
3,”職場における有効なOJTが職務遂行能力向上にどのような影響を及ぽしているか”を分析する。
<能力向上に影響を与えるOJTの行動>
職務遂行能力向上に影響を与える「上司のOJT行動」
として以下16項目2因子が抽出された
◯{職場指導}
・上司は自ら手本・見本を示した
・上司は仕事を手伝ってくれた
・上司は正しい執務態度を率先してとった
・上司はよく励ましてくれた
・上司は仕事上の誤りを直した
・上司は自分の経験や考え方を披露した
・上司に仕事を教えられた
・上司は仕事の助言をした
・上司は的確な指示・命令をした
・上司は遠慮なく注意をした
◯{権限委譲}
・上司はまとまった仕事を一貫して行わせた
・上司はまず仕事を実際にやらせた
・上司は権限を委譲した
・上司は意思決定の場に参画させた
・仕事の企画原案の作成を任せられた
・上司は能力より若干高めの仕事を担当させた
(※上記、因子負荷量が高い順から並べています)
(※職務遂行能力向上尺度は、以下の3種類とされています
1)業務推進能力:企画立案、課題設定、目標設定、実行計画など
2)職務遂行態度:積極性、実行力、責任性、協調性、判断力など
3)職場運営能力:審査・点検能力、進捗状況把握能力、傾聴能力)
<OJTの効果としてわかったこと>
★3種の能力向上尺度すべてに対して
『権限委譲』が優位な正の効果を示した。
※一方、「職場指導」はいずれの能力向上に対しても有効ではなかった
※引用・参考:國城、榊原. 2005.
“職務遂行能力自己評価に与えるOJTの効果 —地方自治体職員を対象として一.”
産業・組織心理学研究 18 (1): 23–31.
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
とのことでした。
■なるほど。
OJTにも様々な行動がありますが、
「能力向上」に役立ったのは、
『権限委譲』
であったというのは
なかなかに興味深いです。
論文の著者はこのように考察しています。
”部下に仕事上の模範を示したり,
部下の仕事の誤りを正したりというような
上司による,部下への直接的な教育・指導が
部下の能力向上に有効に結びついていないということを明確に示すものであった。
一方.職務機会提供と自由裁量付与こそ
部下の能力向上に対して有効な,上司による唯一無比の OJT であった。
言い換えれば.部下の自ら学ぶ姿勢を尊重し,
そのような機会を部下に与える上司の行動が
OJT の有効性を高めていたといえよう”
とのこと。
■山本五十六の有名な格言
『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。』
そして、それに続く後半である
『話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。』
ものを思い出します。
特に、後半部分が今回の論文でいう
「上司の有効なOJT行動=権限委譲」に
当てはまるようにも感じました。
■ただし、今回の研究対象者は
30~40代の人が多く、
そういった意味で、
具体的な指導を必要としてなかった、
ということもあるのかもしれません。
よってこれも小規模の理論ということには
なるかと思いますが、
OJTとはなにか、
どのような行動が効果的なのかを
考察する上で学ばせていただきました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
強いだけ、威張るだけではガキ大将の座は安泰ではない。
ある程度みんなの自由を認め、楽しく愉快に遊ばせる知恵や工夫がないと、
人心を掌握できない。
水木しげる
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【編集後記】
人は自分のことが一番見えない、というダニングクルーガー効果を感じるこの頃。
人は自分が可愛いもので、つい自分に甘めにつけてしまうこともありますし、
それは周りからのフィードバックがもらえなくなる年長者ほど、多い気もします。
フィードバック探究、大切にしたい、と思いました。
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