配信日時 2022/10/17 16:48

フロー理論 ー”時間が流れる感覚”が発生するメカニズムとは?ー【カレッジサプリ】

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令和4年10月17日(第3161号)


フロー理論 ー”時間が流れる感覚”が発生するメカニズムとは?ー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2666字/読了時間4分)

■こんにちは。紀藤です。

昨日日曜日は、午前中は
大学院のプロジェクト、

午後はレゴを活用した研修の
デモワークショップでした。

研修&ワークショップがたっぷりの1日で、
疲れましたが楽しい時間でした。



さて、本日のお話です。

何かに没頭していると、
あっという間に時間が経つ感覚があります。

それを学術的には
「フロー状態」と呼ぶそうです。

本日はその”フロー”について、
その理論、フロー状態になる条件などについて、
学びを皆様にご共有させていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!


タイトルは



【フロー理論 ー”時間が流れる感覚”が発生するメカニズムとは?ー】



それでは、どうぞ。



■気づいたら夕方だった。

いつのまにか1時間も経っていた。

ゲームに没頭していたら、そのまま朝を迎えた。

、、、

それが仕事であれ、
趣味のスポーツ観戦であれ、
Netflixの鑑賞であれ、ゲームであれ

時間間隔の消失を伴う体験を
誰もがされたことがあるかと思います。

すなわち、

”プレーすること,演奏すること,読むこと,考えることに没入し,
 流れるように滑らかにそのことを行っている状態”

このことを、
ミハイ・チクセントミハイは
「フロー状態」と呼びました。


■そして以下の論文で、
この「フロー理論」について
整理してまとめられており、興味深く読ませていただきました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
石田潤, and Others. 2010.
“内発的動機づけ論としてのフロー理論の意義と課題.” 人文論集 45: 39–47.
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今日はこの論文を参考に
ポイントをお伝えしたいと思います。



■まず、フロー理論ですが、

”ポジティブ心理学の潮流の一部をなすもの”

として注目されています。

なぜ注目されているのか?
その理由ですが、

”仕事においても、いかに仕事に自分の能力を発揮し,
その中でどのように充実感や幸福感を得るかがを重要”

なわけです。

今流行りの言葉で言えば
「ウェルビーイング」というやつですね。


■人は、

外発的動機づけ(お金や名声などの報酬)
からではなく、

内発的動機づけ(その行為自体が報酬になる)
によって活動が動機づけられているとき、

より「努力や成果」に繋がるとされています。

よって、その内発的動機づけを科学することは
ビジネスにとっても有益なわけです。



そして内発的動機づけを
駆動するための代表的な要因が、

・「自己決定」(自分で決められる)
・「有能感」(自分は優秀だ)
・「熟達への指向性」(成長欲求の強さ)

とわかっていますが、その他にも
内発的動機づけを高めるものがあり
その一つの「楽しさ」に
チクセントミハイは注目しました。

「楽しさをもたらす状態とは
 まさに「フロー」ではないか」

そのようにチクセントミハイは考え
内発的動機づけにつながるフローの研究を行った、

そんな背景があるそうです。



■なるほど、確かに、、、。

仕事においても

「楽しい!」
「時間があっという間だ」

という状態で日々働けたら
それは有意義で、充実していそうで、
生産性も高そう。意義深いです。

ゆえに、

”内発的動機づけ×フロー研究”

に価値がある、というのも納得です。



■さて、ではそんな「フロー理論」。

具体的にどのような特徴があるのか?
どうしたらその状態になるのか。

以下の2つのポイントについて
まとめてみたいと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【1)フロー状態の特徴】
【2)フロー状態を発生させるもの】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

です。


■まず「1)フロー状態の特徴」ですが、
以下の8点が挙げられています。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【1)フロー状態の特徴】

<1、注意の集中>
:フロー状態にあるとき,注意はすべて当該の活動を行うのに必要な情報が得られる対象にのみ向けられている

<2、意識と活動の融合>
:フロー状態では意識が活動と一体になっており,活動の中に意識が没入している

<3、自己意識の消失>
:フロー状態にある活動の最中は,自分についての意識が消失している

<4、コントロール感>
:フロー状態にあるとき,自分の活動そのものや活動に関わる対象や事物を思うがままにコントロールしているという感覚が得られる

<5、時間感覚の変容>
:フロー状態においては通常の時間感覚とは異なった時間経過を感じる(短く感じたり、逆にゆっくり感じたりする)

<6、自己目的性>
:の活動を行うこと自体が目的であり,それ以外の目的や報酬を必要としない

<7、楽しさ>
:身体的または精神的に大きな苦しさを伴うような活動であっても,フロー状態にあるときには楽しさや心地よさを感じる

<8、流れ感>
:フロー状態において,意識はあたかも水が流れるように滑らかに働いている
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

ふむふむ、なるほど、、、。

マラソンなんて、
身体的に苦痛なはずなのに、
<7,楽しさ>をたしかに感じます。
苦しいけど、楽しい。苦楽しい。
まさに、フロー。


■次に、

「2)フロー状態を発生させるもの」

を見てみたいと思います。

以下3つの条件が挙げられています。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【2)フロー状態を発生させるもの】

<1、達成目標の存在>
:達成しようとする目標状態が明確であることによって,それだけ意識や心的機能の秩序性が閾まり,フロー状態が発生しやすくなる

<2,課題の適度な困難度>
:達成しようとする目標や課題の困難度は適度であることが望ましい

<3,フィードバック>
目標や課題の達成度についての適切なフィードバックが得られることがフロー状態の発生を促す
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)


とのこと。

うーむ、なるほど。
これも実に納得です。



■と、このように整理をすることで、

フローというもののメカニズムが理解できて、
それを適切に扱うことに近づくように思います。



ちなみにこの文脈で見ると
”フロー”は素晴らしい!と
見えるかもしれません。

あくまでも、これは状態の話です。
ポジティブもネガティブもありません。


むしろチクセントミハイは

”人に苦痛を与える行為や残虐な行為,
 暴力行為,戦闘行為,犯罪行為などにおいても
 フロー状態が発生し得ることを指摘している”
 (Csikszentmihalyi,1990)
 
とのことです。


いわゆる中毒症状も
まさにフローに当てはまりますし、

ゲーム中毒なんてまさに、
先述のフロー状態を発生させる3点セット、

<1、達成目標の存在>
<2,課題の適度な困難度>
<3,フィードバック>

ががっつり組み込まれています。

ある意味、恐ろしいことです。



■ただ、上述のように
それを引き起こすメカニズムを知ること。

そうなっている状態を理解すること。

そうすることでフローを自分にとって望ましい形で、
コントロールすることにも近づくようにも思います。

モノもフローも使いよう。

うまく活用していきたいものですね。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

目の前にある仕事に全神経を集中せよ。
太陽光線も焦点が合わなければ火をつけられない。

グラハム・ベル(スコットランドの発明家)

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【編集後記】
この理論面白い、惹かれる、と思うものが
ことごとくポジティブ心理学であることに、驚きます。
やっぱり、この領域が好きなんだなあ。
これからも、もっともっと深掘りしていきたいと思います。


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