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令和4年9月22日(第3136号)
コーチングの13の理論に基づくアプローチ
ー論文「理論的伝統とコーチングジャンル:領域のマッピング」より(後編)
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話3194字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日はチームビルディング研修の実施。
ならびに1件のアポイントでした。
その他論文のまとめなど。
ちょっと焦ってきております。
*
さて、本日のお話です。
先日よりお伝えしております、
以下の論文について、本日も続けて参りたいと思います。
Cox, Elaine, Tatiana Bachkirova, and David Clutterbuck. 2014.
“Theoretical Traditions and Coaching Genres: Mapping the Territory.”
Advances in Developing Human Resources 16 (2): 139–60.
(理論的伝統とコーチングジャンル:領域のマッピング)
本日は、「コーチング・アプローチの多様性」をテーマに
ご紹介をしてまいりたいと思います。
それではまいりましょう!
タイトルは、
【コーチングの13の理論に基づくアプローチ
ー論文「理論的伝統とコーチングジャンル:領域のマッピング」より(後編)】
それでは、どうぞ。
■エグゼクティブ・コーチング、
チーム・コーチング、
マネジリアル・コーチング、、、。
コーチングって一体、
どれだけあるんだ?!
と深ぼる程に沼にハマっている
そんな状態ではございますが、
それくらい色々な登り方がある、
幅広い支援の方法である、というのは
間違いなさそうです。
名前がつけられ、
人々の間で合意がなされると
そこに新たなる存在が生まれることを
「社会構成主義」などと言いますが、
まさにそんな風に
コーチングも色々なアプローチ方法が
生み出されてきたようにも感じます。
■、、、と、余談はこれくらいにして、
本日のメインのお話である、
「コーチングの多様性」
についてお伝えいたします。
”コーチングを人材開発に活かす”
という観点でみた時に、
どのようなパラダイム(物の見方)があり、
そしてどのような理論に基づいた
コーチングのアプローチがあるのかについて
説明をした項目となります。
それでは以下、論文のまとめです。
(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【コーチングアプローチの多様性】
・コーチングアプローチの大半はもともと心理療法の分野で開発されたものであり、結果的にコーチングに適応された。
・あるアプローチはポジティブ心理学の理論分野から来ており、別のコーチングはオリジナルの理論であったりする。
・個々に紹介されたもの以外にも、エグゼクティブ・コーチング、パフォーマンスコーチング、キャリアコーチング等様々なジャンルのアプローチがある。
**
【人材開発における実践のための「3つのパラダイム」】
・以下3つのパラダイムが、コーチングを組織や従業員の人材開発のニーズに適合し得ることを説明できる考え方である。
(Bates,2002,Bate&Chen,2004)
<1)学習パラダイム>
・個人の学習経験の提供。最終的に組織レベルでの学習システムの構築に繋がる可能性がある。
・アンドラゴジー(成人学習理論)を含む理論に支えられており、あらゆるタイプのコーチングは原則的にこのタイプに合致する。
<2)パフォーマンス・パラダイム>
・個人レベルにでは、”個人の行動の成果に焦点”を当てる。個々の従業員が持つ専門知識や価値を、組織の戦略的目標と結びつける場合にのみ価値をもつ、とされる。
・組織レベルでは、”組織のパフォーマンスを向上させるために、いかに問題を解決し、機会を活用するか”を重視する。
<3)仕事の意味づけ>
・個人が”どのように仕事を経験し、どのように意味を見出すか”に関心が向けられたパラダイム。
・目指す成果は、「個人にとって有意義な仕事を可能にし、社会的に責任ある組織を構築すること」とされる。
・多くのコーチングアプローチはこのパラダイムと親和性が高い、とされる。
**
【コーチングの13の具体的な理論に基づくアプローチ】
1)心理動的アプローチ
(The psychodynamic approach to coaching/学習パラダイム)
・現在の行動や感情は、以前の経験に根ざした意識に強く影響されているという前提を持つアプローチ。
・コーチは、無意識の働きについての気づきを、実践を深めるために利用する。
2)認知行動学的コーチング
(Cognitive-behavioral coaching/学習&パフォーマンス・パラダイム)
・目標達成の妨げとなる、認知的・感情的な障壁を自己認識し、より効果的な思考・行動スキルを身につけることを目指すアプローチ。
3)解決志向アプローチ
(The solution-focused approach to coaching/学習&パフォーマンス・パラダイム)
・クライアントが望む未来の状態を定義し、その状態を達成するための思考と行動の道筋を構築することを支援する。
・問題の発生理由を特定する=必ずしも解決する方法がわかるわけではない、という前提に立つ。
4)人間中心アプローチ
(The person-centered approach to coaching/学習パラダイム)
・条件が揃えば、人はポジティブで建設的な方法で成長する傾向があるという前提に立つ。
・肯定的な見方や、質の高い傾聴などを提供する。
5)ゲシュタルトアプローチ
(The Gestalt approach to coaching/学習パラダイム)
・クライアントの意識が向いている経験や外的な世界を、必要に応じて創造的に変更する支援を行う。
6)実存的コーチング
(Existential coaching/学習&仕事の意味パラダイム)
・人間を表現する3つの原則(関連性、不確実性、実存的な不安)に基づくアプローチ。
・クライアントの世界観を、現在の関心ごとの文脈から記述的に探っていく。
7)存在論的コーチング
(Ontological coaching/学習&仕事の意味パラダイム)
・クライアントの「あり方」を変えるきっかけとなることを目指したコーチング。
・言語、感情、体の姿勢などを分析し、クライアントの変化の触媒となるように働きかける。
8)ナラティブ・コーチング
(Narrative coaching/学習&仕事の意味パラダイム)
・クライアントを語り手と捉え、セッションで使用された物語の素材を用いて、自分の物語、アイデンティティ、行動のつながりを特定する。
・クライアントが自分のアイデンティティ(自己概念)と行動について構築したストーリーを探究し、役に立たないのであれば、これらのストーリーを変更するように支援する。
9)成人期の心理的発達とコーチング
(Psychological development in adulthood and coaching/学習&仕事の意味パラダイム)
・人は、個人の生涯を通じて、意味付け、世界観、自我の成熟における発達上の変化が起こるという理論に基づくアプローチ。
・発達の軌跡を知ることでコーチはクライアントの多様なニーズをより良く理解することができる。
10)超個人的アプローチによるコーチング
(The transpersonal approach to coaching/学習&仕事の意味パラダイム)
・個人を超えた次元を認識し、完全性と喜びの感情を提供する方法で、他者とつながる経験を促進する。(スピリチュアリティ)
・コーチは創造性などを用いてクライアントと関わる。
11)ポジティブ心理学のアプローチによるコーチング
(Positive psychology approach to coaching/学習&パフォーマンス・パラダイム)
・問題や弱点から、機会や強みに一貫して注意を向けるアプローチ。
・人の経験のポジティブな部分に焦点を当てたポジティブ心理学に基づいている。
12)交流分析とコーチング
(Transactional analysis and coaching/学習&パフォーマンス・パラダイム)
・クライアントの自我の状態、人生の脚本、相互作用などの概念に基づいたコーチングの相互作用的アプローチ。
・コーチとクライアントが、動機、目標を深く理解するためのフレームワークやわかりやすい言語が含まれることが特徴。
13)NLPアプローチによるコーチング
(The NLP approach to coaching/学習&パフォーマンス・パラダイム)
・神経言語学とされるものがNLPであり、個人が現実を構築する方法を示すパターンを認識する支援をする。
・様々な環境的な文脈の中で、内的な経験をコントロールしようとする。
※Cox, Elaine, Tatiana Bachkirova, and David Clutterbuck. 2014.
“Theoretical Traditions and Coaching Genres: Mapping the Territory.”
(理論的伝統とコーチングジャンル:領域のマッピング)より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)
■さて、ご覧になられて、いかがでしょうか。
まとめてみて、個人的には
「ふう、、、」という感じでございますが(汗)、
感想としていくつか思うことがありました。
以下2点、述べてみたいと思います。
*
まず1つ目は、
「コーチングを人材開発の実践につなげる3つのパラダイム」と
整理しているところがわかりやすい、
と思いました。
1)学習 2)パフォーマンス 3)仕事の意味
それぞれ個人・組織において
いずれも成果に繋がる視点が上記3点だと思います。
コーチングのアプローチの有用性を示す
興味深い切り口だと思いました。
そして、2つ目が
「心理療法的なアプローチ」を基盤としている理論が多い、
と感じたことです。
論文の説明にも「大半は心理療法から派生している」とあったように
ゆえに深く、その人の内的世界、生きている物語や囚われというものにも、
切り込んでいるアプローチが多く見受けられました。
同時に、実際のところとても大事な考えである、とも感じました。
目標を決めて、現実を理解して
ギャップを把握して、はい、それに向けて頑張りましょう、
というシンプルな構造はわかりやすいですが、
実際は個々人が生きている世界は、もっと複雑です。
現在の自信のなさ、
それに影響を与える過去の出来事、
不安感や抵抗感を強く感じる現状、
それに関連する自分の価値観や囚われ、
等、現実の問題に深く関わっているものとも思います。
それらの抽象的な”心”に関わるものを
わかりづらいものとして切り捨てるのではなく、
追求していこうとするところに、
コーチングの複雑さと深みがある、
と私は感じました。
■、、、ということで、
全3回にわたって、
論文「理論的伝統とコーチングジャンル:領域のマッピング」
を紐解いてみました。
実際にこれを理解することと
実践することは万里の隔たりがありますが、
この世界を探求する、一つのきっかけとして
参考になれば幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
見聞を広くしなければならぬ。
小さな考えでは世に立てぬ。
大村益次郎
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【編集後記】
色々と朝からバタバタとしており、メルマガがかけておりませんでした。
頭が働かず、仮眠をしたらこんな時間になっていました。(もはや仮眠ではない)
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メルマガのご感想は、このメールに直接ご返信いただければ紀藤にのみ届きます。
どんなことでも、お気軽にご連絡くださいませ。
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