配信日時 2022/08/31 09:18

ミドルシニアの職務パフォーマンスには「居場所感」が大事【カレッジサプリ】

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令和4年8月31日(第3114号)


ミドルシニアの職務パフォーマンスには「居場所感」が大事


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2832字/読了時間3分)

■おはようございます。紀藤です。

昨日は2件のアポイント。
その他、研修の提案企画など。



さて、本日のお話です。

最近、中高年(ミドルシニア 40-59歳)について
色々と調べているこの頃。

その中で、ある論文を読み、
その内容がとても勉強になりました。

ということで、本日は以下論文、


田中聡、石山恒貴(2020)
“職場の人間関係が中高年正社員の職務パフォーマンスに与える影響:居場所役割感の媒介効果に着目して.”


の内容を紐解きつつ、
学びのおすそ分けをさせていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!

タイトルは、



【ミドルシニアの職務パフォーマンスには「居場所感」が大事】



それでは、どうぞ。



■ミドル・シニアの課題についてまとめていたら、
こんなお話が出てきました。


◯「居場所感のなさ」:
 6~7割のミドル・シニアは居場所感を見出せていない

◯「自ら相談することが苦手」:
 誰に相談すればよいかわからない、そもそも相談するのが恥ずかしい

◯「学習機会がない」:
 40代以降、職場で学べることは減る。また自主的に学んでいても、学びと実務が分断されている。

◯「相談されなくなる(≒社内孤独死になる)」:
 相談されても「で、答えは?タイプ(明確に答えない)」「ちなみにあの件タイプ(別の話にそれる)」
 「オレが正解タイプ」「自分で考えろタイプ」「早とちり誤爆タイプ(勝手に相談内容を解釈」等で相談されなくなる、

(※参考:石山 恒貴、パーソル総合研究所(2018)『会社人生を後悔しない 40代からの仕事術』.ダイヤモンド社)

他多数、、、。




■なかなか手厳しい意見ですが、
確かに、そうかも、、、と思うものが多くありました。


もちろん、全員が全員
そうではないとしても、

40代からは
仕事の重要性を求められる機会が少なくなり、
また仕事上の新たな成長機会が少なくなり、

職務パフォーマンスが下がっていくというのは、
日本企業における構造的な問題もあり、
今後も続く、重要な課題として認識されているようです。



■そして、その中でも
重要な要素の一つが

『居場所感』

とする考えがあります。

ちなみに、
働く上での居場所、つまり

「働く居場所」=

キャリアづくりにおける自分の状態、
仕事上の役割、人間関係、心の動きなどの
個人の認識や精神状態を表す総合的な概念(花田,2013)

を意味するそうです。

居場所には、人間関係や役割、
いろいろなものが関わってくる、ということですね。



■そして別の研究では、
この「居場所感」について研究し、
3つの要素で構成されることを明らかにしました。

**

「職業生活における心理的居場所感」(中村・岡田(2016))は
以下の3因子で構成される。

1,居場所役割感(人から頼りにされている ※特に心理的居場所感の基底となる)
2,居場所安心感(居心地の良さを感じる)
3、居場所本来感(自分らしく行動でき、それで良いと感じる)

**

うーん、なるほど。

頼りにされるが一番大事で、
居心地の良さや、自分らしく行動できることが
「居場所感」を作るのか、、、。



■ただ、こうして整理せずとも、

「自分が上司や同僚に、
 必要とされている(頼りにされている)感覚」
 
はなんだかんだ重要だというのは、
否定する人は少ないかと思います。

逆から考えてみれば、

「いないと困るっちゃ困るけれども、
 特に頼りにしているというわけでもない」
 
と思われていたとしたら
それはちょっと寂しいものです。。。

とすると、この居場所感が職務パフォーマンスにも
影響がありそうなことは想像できそうです。



■、、、と、やや前置きが長くなりましたが、この

「中高年の居場所感と
 職務パフォーマンスの関係」

について、研究で掘り下げたものが、
冒頭にご紹介した論文。



■この論文の研究の目的、
およびに、調査方法と結果を、
以下のざっくりまとめてみました。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【論文まとめ】
“職場の人間関係が中高年正社員の職務パフォーマンスに与える影響:
 居場所役割感の媒介効果に着目して.”  田中聡、石山恒貴(2020)


<研究の目的>

・中高年の仕事に対する意欲や
 職務パフォーマンスに及ぼす影響を論じた実証研究は限定的である。

・本研究では、変わりゆく日本企業の「職場の人間関係」に着目し、
 それが中高年の職務パフォーマンスに対して、いかなる影響を与えるのかを検討する。


<研究の仮説>

◯仮説1)
 LMX(上司と部下の交換関係)は
 中高年の居場所役割感を媒介して、
 職務パフォーマンスに正の影響を与える  
(=上司との関係がよいと、居場所役割感が高まって、職務パフォーマンスが高まる)
 

◯仮説2)
 職場チームワークは
 中高年の居場所役割感を媒介して
 職務パフォーマンスに正の影響を与える
(=チームワークがよいと、居場所役割感が高まって、職務パフォーマンスが高まる)
 

<調査の方法>

◯調査対象者:
 300名以上の民間企業に勤務する40-59歳の正社員

◯調査手法:
 Webモニター調査で要件を満たす対象者を抽出。
 合計1633名の有効回答者に質問紙調査を行った。
 
◯質問項目:
 1,職務パフォーマンス(7項目)
 2,居場所役割感(9項目)
 3,LMX(12項目)
 3,職場チームワーク(4項目)
 の各尺度を構成する質問項目を用いた質問紙調査を行った。
 
 
<研究の結果>

◯仮説1,2共に支持された。  
 
具体的には・・・

・「LMX」の向上→「居場所役割感」の向上→「職務パフォーマンス」の向上
・「職場チームワーク」の向上→「居場所役割感」の向上→「職務パフォーマンス」の向上

つまり、上司との関係/チームワークが良いと、居場所役割感が高まり、
職務パフォーマンスにプラスの影響があることがわかった。
  
◯結果の補足

・また影響度を見ると
 「LMX」はβ=.29、「職場チームワーク」はβ=.41と
 ”職場チームワークのほうが職務パフォーマンスに与える影響が大きい”ことがわかった
 
・また職場チームワークは「β=.05」と一部ではあるが
 職務パフォーマンスに直接影響を与えることがわかった
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。



■さて、こちら見てみて思ったことがあります。

それは、


「やっぱり、居場所感ってめちゃ大事だなあ」


ということ。


そして、
この「居場所感」を高めるものに
媒介しているもの(影響しているもの)が

・LMX(上司と部下の交換関係)
・職場チームワーク

であるわけです。

そして、この発見には、
大いに実践的な意味がある、と感じます。



■例えば、上司との「1on1」もそうです。

1on1には、様々な意味があります。

キャリアや目標、振り返りなどを通じて
「部下の成長支援」を行うという目的で
行っている企業は多いです。

ただ、この「1on1」も
部下の成長支援という観点”だけ”でなく、

”上司と部下の交換関係を高める”
(LMXの向上)

という意味も含まれています。

とすると、

「1on1」を通じて、LMXが向上し、
それが居場所役割感の向上に繋がり、
職務パフォーマンスにも影響を与える、

と見てみることで、「1on1の質」という観点にも、
新たな視点が包含されるのではなかろうか、
と思うわけです。


また職場における対話
「チームワーク」についても同様です。

居場所感を媒介して
職務パフォーマンスを高めるとわかると
その重要性が更に理解できるかもしれません。


■と、いうことで、

「中高年の職務パフォーマンスと居場所感」

の論文とそれにまつわるお話でございました。

この論文が、もちろん
すべてのケースに当てはまるわけではないですし、

上司と部下の年齢逆転(年下上司)等の影響で
1on1や関わり方も変わってくることは否めません。

しかし、「居場所感」というキーワードは

中高年が直面しやすい課題であり、
どの世代にも同じことが言えるお話だな、

と思った次第でございます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

自分には確かな居場所がある。
自分を必要としてくれる場所がある。
その安心感があればこそ、人は強く生きられるのです。

ドロシー・ロー・ノルト
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【編集後記】
居場所感、新しいキーワードを学びました。
どんどん広がるなあ、、、どこまで広がるんだろうか。
まだまだこの領域の、ごく一部しか見ていないような気もします。
解像度は荒くとも、全体地図は手に入れて大学院を卒業したいと思います。


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