配信日時 2022/08/22 10:23

「プロティアンキャリア」とはなにか ー論文「変幻自在のキャリア:四半世紀の旅」よりー【カレッジサプリ】

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令和4年8月22日(第3105号)


「プロティアンキャリア」とはなにか ー論文「変幻自在のキャリア:四半世紀の旅」よりー


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2346字/読了時間3分)


■おはようございます。紀藤です。

昨日日曜日は、
終日コーチングのワークショップへの参加。

特定の技術ではなく、
一つの話題を対話を通じて掘り下げることで
内側から気づきが生まれることを実感した1日でした。

また夕方から12キロのランニング。



さて、本日のお話です。

週末にキャリアについてのワークショップを行いましたが、
それに関連して、改めてニューキャリア論といわれる
「プロティアンキャリア」を提唱したダグラス・ホール氏の論文、

Hall, Douglas T. 2004.
“The Protean Career: A Quarter-Century Journey.”
(変幻自在のキャリア:四半世紀の旅)を

を読んでみました。

今日はその内容について、
ご紹介させていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!


タイトルは、



【「プロティアンキャリア」とはなにか
 ~論文「変幻自在のキャリア:四半世紀の旅」より~】



それではどうぞ。



■プロティアンキャリア。

これは、

何にでも変身できる神プロテウスが語源。

”変幻自在のキャリア”

として、
ボストン大学 経営学部の教授である
ダグラス・ホール氏が提唱したものです。


このプロティアンキャリアの特徴としては、

1、組織ではなく個人が主導権を握る
2、個人のコアバリュー(価値観)がキャリアを決定する
3、主な成功基準が主観的(心理的成功)である

とされています。


論文の表現を借りると

”自己決定的で、
組織の報酬よりも個人の価値観に左右され、
個人、家族、そして「人生の目的」のために働くキャリア”
 
と(直訳ですが)表現されています。


「人生の目的」のために働く、、、

なんだかとても大きい気もしますが、

100年時代と言われる中で、
個々が素子ではなく自分の責任において
働くことの舵を握るという文脈においては
時代に合っているようにも感じます。



■ちなみに、

このプロティアンキャリアを
ホール教授が考えたのは、家族の影響があったそう。

こんなエピソードが紹介されていました。

(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

”私の父はエンジニアとして教育を受け、
 大企業で技術職や管理職としてキャリアを積んでいた。
 
 40代になると、経営コンサルティング会社に務め、
 経済的にも非常に上手くいっていた。
 
 しかし、プロジェクトのために殆どの時間を主張先で過ごし
 家族との時間は第2週の週末だけ、飛行機で帰ってきていた。
 
 そして何度も飛行機に乗るうちに、フライトの乗務員と
 父はすっかり仲良くなった。
 
 
 ある金曜日、彼は残業でいつもの飛行機に乗れず、夜行列車で帰った。
 
 その土曜日、家に帰ると、
 ”彼の飛行機”が墜落した、という知らせを受けた。
 乗っていたのは乗組員だけで、全員死亡していた。
 
 その後、父は仕事を辞めた”

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)

とのこと。


■その後、ホール教授の父は、

家族を中心とした生活を再構築し、
これまでと違うキャリアを歩み始めたそうです。

そして、少年時代のホールに
「何でもできるとしたら何をするのか?」
と問い続けたそうです。


このような話が、
プロティアンキャリア、

すなわち、組織でなく個人、
経済的成功でなく心理的成功
「人生の目的」のために働くキャリア

の発想につながったといいます。

「会社が自分をどうしたいのか?ではなく
 あなたは自分自身ををどうしたいのか?」

このことを突きつけているのが
プロティアンキャリアの根底の考えだと感じます。



■ゆえに、

伝統的キャリアが語る
「組織へのコミットメント」ではなく

プロティアンキャリアでは

「プロフェッショナルとしてのコミットメントや、仕事のやりがい」

という態度が重要となるのです。


■そしてこのプロティアンキャリアの実現においては
「2つのメタコンピテンシー」が重要、と語られます。

それは

1,アダプタビリティ(適応性)
2,アイデンティティ(自己認識)

の2つです。

アダプタビリティは、
環境の変化に対して、上手く”適応”できる能力のこと。

アイデンティティ(自己認識)は
自分の価値観や動機、能力などを認識すること。


適応することは大事ですが、
自己認識がなく、何をどうしていきたいのか、
何が得意なのかというアイデンティティがなく、

適応行動だけ高いだけと、それは
「カメレオン行動」となります。

つまり、

”自分の道ではなく、他の誰かの道を歩んでいる”

となるわけであり、
プロティアンキャリアのコンセプトとは離れます。

ゆえにこの2つのメタコンピテンシーの
両方があってこそプロティアンキャリアが実現できる、

とのこと。



■そして、どうすれば具体的に
プロティアンキャリアを実現できるのか?

その秘訣として、


『自分だけの才能、つまり
 自分が好きで伸ばしたい、使いたい才能を見つけること』


と述べられています。

それ以上の詳細については
この論文では触れられていませんでしたが
上記の領域を判断するにあたって、
ホール氏は彼の同僚が語るプロティアンのあり方を
以下のように紹介していました。

いわく、

「プロティアンのあり方の一つとは
 天職のような強さで自分の道を心で追い求めること」

であり、天職とは

・自分自身や家族だけでなくコミュニティに貢献する
・自分の天才性に関わる
・自分の能力を共通善のために使っている

などのに現れるようです。

宗教観も色濃く反映される考えですが、
天職(英語でCalling)のごとく、
何か大きなものに突き動かされている感があるとき、
それは天職にたどり着く道の中なのかもしれません。


■また、

どうすればプロティアンキャリアの道を
心で追い求めているのか?

を確かめることができるための
自己評価の問いとして、以下のようなものを紹介しています。


<プロティアンキャリアの自己評価

1,ここ数年、様々なプロジェクトや仕事を請け負ってきたか?
2,自分に挑戦し、成長を支えてくれる人間関係のネットワークを持っているか?
3,意識的に学びの機会を求めてきたか?
4,「バルコニー」にあがって、個人的な考察のプロセス(日記、ブログ、学習の記録など)を行ってきたか?


特に最後の質問(4)は、
自分の道を追求する、最も簡単で最も安くすむ方法である、
と言います。

自分自身を観察することで、
より多くのことを発見できる、

つまり日々振り返りをしているかというのも
プロティアンキャリアの要素とも言えるようです。



■ということで、
以上、論文からポイントをご紹介させていただきました。

なかなか大きな話ですが、
あくまでも「組織ではなく個」にフォーカスしている
わかりやすいキャリアの考えとして学ぶことがある考えだと思います。

人生100年。

社会と関わり続ける中で
”働く”ということは大切な舞台だと思います。

そして、それを長く楽しむために

・学び続けているか
・挑戦し続けているか
・振り返り続けているか

こうした日々の姿勢は
やっぱり大事なのだな、

そんなことを感じた次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

積極的に考え、積極的に行動する人ほど、
積極的に遊び、積極的に心身を癒やしている。

つまり、仕事が充実している人間ほど、
余暇も充実しているということだ。

ビル・ゲイツ

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【編集後記】
個人的に、この考え方めちゃくちゃ共感します。
最終的には人がそれぞれ幸せになれば良い、と思います。

ずっと働かなくても良いと思いますが、
定年後のお仕事もお金だけではなく、社会とつながる、
貢献手段であり、時には有効な時間の使い方だと思います。

余り過ぎる時間は、時に苦しくなります。
なので、必要とされるスキルを身につけつづけること、
とても大事な準備だと私は思っています。

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