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令和4年7月6日(第3058号)
「IT業界でコーチングって本当に効果あるんかいな?」を調べた実証実験
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3032字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は3件のアポイント。
並びに、8キロのランニング。
*
さて、本日のお話です。
クライアント企業様で
IT業界の方が多くいらっしゃいます。
IT組織で働くエンジニアの皆さまは
求められる技術が目まぐるしく変わり
常に勉強し続けなければいけないですし、
自分がよくわからない技術も
自ら調べ、取り組み、覚えていくなど、
エンジニアの方は本当にすごい、
自分には真似できないと、
毎度のこと、頭が下がる思いがします。
そんな業界がゆえに
色々と人の課題もあるようで、
(モチベーションの低下や離職など)
クライアント企業から
(離職防止ややエンゲージメント向上への施策として)
「コーチングを導入したい」
というご相談もいただくこの頃。
*
そんな中、
「IT業界におけるコーチングの事例」というのは、
先行研究としてどれくらいあるのかな、、、
と調べていたところ、
まさに!というテーマのこんな論文がありました。
『IT組織における人材育成のためのコーチング』
松尾 雅史, 山崎 功, 柿澤 晋一郎, 山脇 慶之, 藤木 佑衣, 小川 義孝, 野口 敦, 白柳 美保子, 高橋 奈美, 上神谷 愛(2010)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/proceedingsissj/6/0/6_1-4R/_article/-char/ja/
、、、ということで、
今日は(特にIT業界の人事の方向けに)
上記論文について、概要と学びについて
ご共有させていただければと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは、
【「IT業界でコーチングって本当に効果あるんかいな?」を調べた実証実験
~論文『IT組織における人材育成のためのコーチング』より~】
それでは、どうぞ。
■この論文、
「一般社団法人 情報システム学会」なる、
IT組織が加入する団体の全国大会で発表された論文
だそうです。
ゆえに著者の皆さまは、
それぞれITシステムの会社に所属される、
有志の方のようす。
その方々が、
「IT業界で管理職向けにコーチング研修を導入している企業を耳にするが、
実際、コーチングの効果が語られるのは聞いたことがないよね」
↓
「コーチングって本当に効果あるのかいな?、
と疑っている読者も多いのではないか、と推測する」
↓
「じゃあ、実際に自分たちでクライアントの立場で
コーチングセッションを受けてみて、
IT業界が抱える人材育成の課題に寄与できるかを実証実験しよう」
ということで、書かれたレポートです。
もう、現場に即していて、
研究テーマの背景から切実でたまりません、、、。
■まず、この論文では、
”IT業界の人材課題”について記述をしています。
特に職場の現状において、
入社3年の「若手社員」について、
いくつかの課題がある、と述べました。
例えば、
・全体の70%今日の受講者(96人中71人)が
モチベーションの低下、ならびに
将来の不安を訴えている
など。
■著者らは、
その中で対応する様々なIT人材育成手法を調べ、
以下の5つがあることがわかった、と述べます。
以下の5つです。
1,コーチング(クライアントのやる気や能力を引き出し、未来に向けて自主的な行動を促すコミュニケーション技術)
2,カウンセリング(クライアントの過去に何があったのか、それがどのように影響しているのか心理療法を用いながら分析し、現状問題となっていることを解決する)
3,メンタリング(豊富な知識を持つ指導者が、クライアントの業務面・心理面での成長を支援し、やる気を高めたり、向上心を育てたりする)
4,ティーチング(指導者が持っている知識、技術、経験などを学び手に伝える)
5,トレーニング(基礎的な行動を反復しながらクライアントに技術を身に着けさせていく)
※論文内より引用
そして、その中でも
コーチングについては
”クライアントが専門とする分野に精通していなくとも、
素晴らしい成果を残している事例もある”
ということで、
若手エンジニアが取り組む技術や専門性に詳しくなくとも、
機能しうる技術ではなかろうか、、、
ということで
コーチングについて調査をすることにした、
と述べています。
■そして以下のような条件で、
研究メンバー自身がクライアント(受け手)としてコーチングを受け、
実証実験をすることにしました。
◯期間:
・1~2回の単発的なセッションではコーチングの有意性を評価するのは尚早であると判断。
3ヶ月程度の期間で実施した。
◯1セッションあたりの時間:
・60分を目安とした
◯目標の設定について:
・目標達成度を測るため、原則、目標を設定して実施(強制はしない)。
・各セッションでは目標達成に向けたテーマを個別に設定して実施する
◯記録の方法:
・各セッション後、コーチングレポート用紙に
セッション前後の心の変化やセッション経緯を記録し、実証実験結果を残す工夫をした
■そして上記を
実施した結果、果たしてどうなったのか?
統計評価をまとめると、
以下のようになったそうです。
◯各セッションごとの評価
1)コーチングを受けて「スッキリした」 78%(56回/72回)
2)コーチングを受けて目標達成へ「前進した」 82%(59回/72回)
3)コーチングを受けて「良かった」 93%(67回/72回)
◯全体セッションを通じた評価
1)目標設定が無くてもコーチングは有効か 82%(9人 /11人 )
2)IT知識のあるコーチだったか 42%(5人 /12人 )
3)コーチとの相性がよかったか 83%(10 人 /12人 )
すなわち、各セッションごとの結果は
・コーチング後の心理的に満たされた状態になり、
・かつ、何らかの「気づき」があったと判断できる
とし、全体セッションを通じた評価も
・コーチにIT知識がなくとも、コーチングは有効
・目標設定がなくとも、コーチングが有効
という結果になった、
とこの論文では結論づけています。
■そして最後に、
IT組織の若手社員の不安や課題に対する
以下のアンケートを取りました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
Q,コーチングがキャリアパスをイメージすることを助ける手法であったか?
もしくは助けてくれるであろう手法であるか?
Q,コーチングが自分の将来への不安を払拭する手法であったか?
もしくは払拭してくれるであろう手法であるか?
Q,コーチングが若手社員が持っている以下の問題を払拭できる手法であったか?
(キャリアパスがイメージできない/目標が持てない/仕事への熱意が薄れている
モチベーションを自分で保てない/上司から評価してもらえていない)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
結果、すべての項目において70%以上の回答者が
「そのような手法であると思う」という回答になった、
となりました。
■あくまでも、
一つの視点からの論文ではありますが、
このように記載があると、
「コーチングどうなのよ?」という疑問に対しても、
一定の見解が持てるようにも思えます。
もちろん、
”今回は本プロジェクトのメンバーが
クライアントとなって実証実験をする”
という設定であったため、
どうしてもコーチングに対するバイアスは
避けられないでしょう。
(コーチングを調べていて
良さそうだ、と期待が高まれば、
プラシーボ効果が発動してしまうとか)
*
あるいは論文の参加メンバーのような
人材育成に興味がある方が対象だからこそ、
効果があったのでは、
という見方もできるかもしれません。
■ただ、それでも
・IT業界の専門知識が必要と思われる領域でも、
コーチが専門知識がなくとも機能した
・コーチング経験が浅いコーチでも機能した
という結論を、
客観性を持ち込んだ分析の上で
見つかったということは、価値があることだと感じます。
そしてコーチングスキル云々以上に、
・”自分の話を聞いてもらう機会”
・”対話を通じて考えを整理する機会”
”・質問を通じて、新しい視点を獲得する機会
という振り返りや、
話すことそのものの効果を示してくれる事例は、
今職場で必要なことを改めて教えてくれているように感じます。
■、、、ということで、
IT業界でコーチング、1on1など
拡げていきたい、と考えられる人事の皆さまにとっては、
一つの武器になり得る情報かもしれません。
*
最後にGoogle Scholarでは、
トップページの検索窓の下に
『Stand on shoulders of giants(巨人の方に乗れ)』
と書かれていますが、
先人が研究した情報を調べることは
大いなる武器になる、、、と改めて感じた次第です。
私も乗って乗って、乗りまくりたいと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
知識は、我々が天に飛翔する翼である。
ウィリアム・シェイクスピア(イギリスの劇作家/1564-1616)
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【編集後記】
挿木をしたミニトマトは、あえなくしおれてしまいました。。。
根を張らない中で、急に環境を変えると、
生き残るというのはかくも厳しいものか、、、
と教訓めいたものを感じました。
根をはることが大事で、
根を張った環境を大事にすることも大事です。
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