配信日時 2022/06/17 08:21

部下を育てる「9つの促進行動」 ~マネジャーと職場学習の研究から学ぶ~【カレッジサプリ】

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令和4年6月17日(第3039号)


部下を育てる「9つの促進行動」 ~マネジャーと職場学習の研究から学ぶ~


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2560文字/読了時間3分)


■おはようございます。紀藤です。

昨日は終日、中堅社員の方向けの、
ストレングス・ファインダー研修のDAY2でした。

強みにフォーカスをしたアプローチを
マネジャーの方も含めて学び、実践することで

「心理的安全性を確保するとともに、
 チーム内の相談行動を増やそう」

という趣旨で実施をいたしましたが、
皆様のやってみようという気持ちを感じられ、
嬉しく感じました。

皆様の現場での実践を
切に応援しております!

また夕方から10キロのランニング。



さて、本日のお話です。

コーチング研修をやっていて
しばしば耳にするお話が

「”挑戦行動の促し”は難しい」

という声です。

話に耳を傾ける(=傾聴)はできても、
背中をぐっと押すような行動は
ちょっと躊躇してしまう。


様々な組織のマネジャーが
同じようなことを語られている、

と(私の経験則ですが)
感じております。



今日はこのお話に関連して、
一つ興味深い論文がございましたので

その内容について皆様に
ご紹介させていただければと思います。

それでは早速参りましょう!


タイトルは、



【部下を育てる「9つの促進行動」 ~マネジャーと職場学習の研究から学ぶ~】



それでは、どうぞ。



■話に耳を傾けることはできるけど、

「何かやってみよう!」

と提案することは躊躇する。


この感覚、お持ちの管理職、
(あるいは外部支援者のコーチなどでもあっても)
決して少なくないのでは、と思います。


”受け止める”という行為は、

そこに拒否や否定などはなく、
こちら側のスタンスの問題なので、
比較的徹底することはできますが、


こちらから挑戦の促しをする、
背中を押すとなると、

相手の心理的抵抗感を想像し
プレッシャーを与えてしまうのでは、、、

などと不安になることも
あるのかもしれません。



■そんな前置きの上、
こんな論文がございます。

それは


『ラインマネジャーと職場学習 ーボランタリー組織から学ぶー』
(Beattie(2006).
Line managers and workplace learning:Learning from the voluntary sector.)


という論文です。


どういった事が
書かれているかといいますと、
ざっくり以下のようなお話です。

**

(研究の背景)

・人材育成のために職場学習が重要。
 そこには公式学習(研修・トレーニング等)と
 非公式学習(チーム開発、知識共有)等がある。
 
・特に非公式学習において
 ラインマネジャーが果たす役割・責任は大きい。
 
・ただ、これまでの研究において
 マネジャーが果たす人材開発の役割について
 「マネジャーの行動」に焦点を当てたものが少ない。
 

(研究の目的)

・ラインマネジャーが
 どのような”学習支援策”を行っているのか明らかにする。


(研究の方法)

・子供やてんかん患者などを扱ったソーシャルケア慈善団体と
 社会福祉団体におけるラインマネジャーを対象に
 研究者が3週間滞在し、参加者を観察した。
 
・また60名のキーパーソンに半構造化インタビューを行い、
 データを分析した

**

というお話です。



■そして、その結果わかったことは、

「9つの促進行動(Facilitative Behavior)」が
あることがわかりました。

そして、その9つは階層性があり、

・多くのマネジャーがやっていること(観察頻度:多い)
・経験あるマネジャーのみがやっていること(観察頻度:少ない)

と段階があった、とのこと。

ということで以下、
9つの行動をまとめてみます。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<マネジャーの部下への促進行動>

※観察頻度が少ないもの(実践難易度が低いもの)から
 レベル1→レベル9(実践難易度が高い)で整理します
 

◯レベル1:「配慮(Caring)」
・サポートする、励ます
・親しみやすい、安心させる
・コミットしている、関わってくれる、共感する

◯レベル2:「情報提供(Informing)」
・知識の共有
・情報発信

◯レベル3:「プロフェッショナルである(Being professinal)」
・ロールモデル(模範)となる
・基準を設定する
・計画と準備をする

◯レベル4:「アドバイス(Advising)」
・教える
・コーチングをする
・ガイドする、カウンセリングする

◯レベル5:「評価する(Assesing)」
・フィードバックを提供する
・承認を与える
・育成ニーズを把握する

◯レベル6:「思考する(Thinking)」
・反射的・展望的思考
(過去に起こったこと、起こりうることを
 時間をかけて考える)
 
◯レベル7:「権限委譲する(Empowerment)」
・任せること
・信頼すること

◯レベル8:「他者を育成する(Developing Developer)」
・従業員の技能/知識の習得を促す
・他者の育成につなげる

◯レベル9:「挑戦を促す(Developing Developer Challenging)」
・他者を刺激し、知識やスキルを獲得するよう促す
・他者を刺激し、ストレッチさせる

※Beattie(2006).Line managers and workplace learning:Learning from the voluntary sector.
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)



■さて、見てみていかがでしょうか。

マネジャーの皆さまは

ご自身の行動と照らし合わせて
共通するところや、相違するところなど
考えられた方もいらっしゃるかもしれません。



この論文曰く

「配慮する(レベル1)」
「情報提供する(レベル2)」
「プロフェッショナルである(レベル3)」

などは基礎レベルであり、
殆どのマネジャーがやっていた一方、

「権限委譲(レベル7)」
「挑戦させる(レベル9)」

などは、観察される頻度も少なく
管理職として出世し、経験を積むことで
見られるようになる行動である、

とのことでした。



■もちろんこの論文も
ある2つの組織を切り出したものであり、
全てに当てはまるとは限りません。


またボランタリーセクターとのことで

営利を目的とした組織ではないため、
この内容が営利を主目的とした民間組織とも、
やや置かれている状況が違うかもしれません。


論文の中でも、

”資本主義企業の内部にある、
「短期的な成果を求める文化」を
 これまでの研究は過小評価しているのでは?”

(=資本主義社会における営利企業は
 能力開発よりも業績を求めてしまう圧力が
 どうしてもかかってしまう)
 
とも述べられています。



■とはいいつつ、

人の育成を支援する上で

これらの9つの行動は
共通するものも感じますし、

「マネジャーが行う
 支援行動の種類と難易度」

について示唆を与えてくれるようにも感じます。



■そしてコーチング行動で

”聞くことはできるけど
 背中を押すような行動が難しい”
 
という話にも

レベル1:配慮する
レベル9:挑戦させる

という違いと似たものを感じ、
興味深く思った次第です。


そして色々なパターンの支援行動、
できるようになると幅も広がりそうですね。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

ほんものの上司と部下は、
互いを管理の苦痛から解放している。
全てを把握し、全てを支配するなんていう役割は放棄してね。

デイル・ドーデン(米国の実業家・作家/1950-)
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【編集後記】
ベランダの家庭菜園にあぶらむしがついており、
ものすごい勢いで増殖しておりました(汗)

「雪だるま式に増える」ってこういうことか、、、と
戦々恐々とした次第です。。。


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