配信日時 2022/05/28 08:36

ピア・コーチング研究からの学び(後編) ~成功させるための4つのポイントと実践の3STEP~【カレッジサプリ】

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令和4年5月28日(第3019号)


ピア・コーチング研究からの学び(後編)
~成功させるための4つのポイントと実践の3STEP~


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3158文字/読了時間4分)


■おはようございます。紀藤です。

昨日は終日、
人材開発の外部パートナーとして
関わらせて頂いている金融会社の人事の皆様へのコーチング、
ならびに企画の打ち合わせでした。

また夜からは大学院の授業で
「マネジリアルコーチング論」でした。

耳の痛いフィードバックって、
やっぱり苦手だなあ、、、と思った日。



さて、本日のお話です。

昨日は、

【ピア・コーチング研究から学び(前編) ~同僚同士のコーチングって効果ある?の巻~】
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4197017/

というタイトルで、

「同僚(ピア)によるコーチング研究」

について、皆様にご紹介させて頂きました。


内容としては、

・ピア・コーチング研究の概要

そして、

・ピア・コーチングの影響として、
 変化への対応、目標へのサポート
 信頼感の向上、スキルの開発、等々が実現された
 
という効果の示唆について
お伝えさせて頂きました。



、、、が、実際、

同僚とコーチングをすれば
100発100中、うまくいくというはずもなく、
それにはいくつかの要因もあるようです。

本日はそのお話について、
皆様にご共有させていただければと思います。


それでは早速まいりましょう!


タイトルは、



【ピア・コーチング研究からの学び(後編)
 ~成功させるための4つのポイントと実践の3STEP~】



それでは、どうぞ。



■「上司」という仕事は、大変です。

チームの目標を咀嚼し
多様な人材を活用しつつ、

他の部署との交渉を行い、
意思決定を行う。

プレイヤーとマネジャーの
両輪を多くの場合回しながら、
部下の育成を行っていく。

そんな中で、
その中でチームと部下を思いつつ
成果をあげようと奮闘される世の上司の皆さんには、

その心中を察するとともに、
心から尊敬の念を覚えています。



■、、、とちょっと話が
脇道にそれてしまいましたが、

そんな上司の負荷が高まる中で
”上司だけ”が職場の学習を促すわけではありません。

職場全体、すなわち”面”として
人を育てるという組織文化を作ることは、

上司の部下育成の負担を減らすとともに、
学習する組織を作る上でも重要なことです。


そして、応えきれていない
従業員の成長や学習のニーズに役立つのが

『ピア・コーチング』
(=同僚同士のコーチング)

と言われています。



■さて、そんな「ピア・コーチング」。
様々なプラスの影響があることがわかりました。

繰り返しになりますが、

・変化への対応、
・目標へのサポート
・信頼感の向上、
・専門性開発への貢献

などなど。

いいことはありますが
ネガティブな影響は論文では語られていません。
 
しかしながら

「ピア・コーチングが成果につながるかどうかは、
 いくつかの予測因子がある」
 
ことも、この研究ではわかりました。



■そしてそれは、皆様がもし
自組織でピア・コーチングを行おうとするのであれば、
おさえておきたい大事なポイントになるかと思いましたので、
以下ご紹介させていただければと思います。

※論文より、紀藤の解釈を少し入れて
 補足させていただいております。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<ピア・コーチングの成果を予測するもの>

◯準備段階
・パートナー選びのインプット(ピアを選ぶ際に情報収集があったか)

◯パートナーとの関係性
・お互いの学習スタイルが適合しているか(学び方がマッチしているか)
・仕事をする上での感情的な要素があるか(業務的・無機質な関係ではない)
・相互に尊敬し合い、プロフェッショナルな関係性であったか

※Kathy Kram, Polly Parker(2008)Peer Coaching: A Relational Process for Accelerating Career Learning
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

とのこと。


、、、どうやらこう見ると、

”「パートナーとの関係性」が重要”

なようです。

これは上司ー部下のコーチングでも、
その他のプロフェッショナルのコーチングでも
同じように当てはまりそうです。

基盤づくり、信頼づくりが
やっぱり対話には大事なのでしょう。



■加えて、興味深いことに、

「ピア・コーチングを(プロジェクト終了後に)
 自主的に続けるかどうか」
 
に関して言えば、

”「自分の専門性の開発に役立った」と感じている人は
 ピア・コーチングを続ける”
 
そうです。



■ゆえに、これらのことを整理すると、

「ピア・コーチングを
 実践・活用していくための戦術」

として以下のことが言えます。

(以下、再度論文より)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<ピア・コーチングを実践・活用するためのステップ>

◯STEP1:相性のよいパートナーを選択をし、良い関係を築く

・お互いの学習スタイルの理解
・感情的なつながりの形成
・相互尊重、プロフェッショナルな関係の構築 を行う


◯STEP2:ピア・コーチングを成功させる

・効果的に行うためのスキルを学ぶ
(傾聴・質問・フィードバック等
・それぞれの専門性を成長させるピア・コーチングを行う
 (※ここにはトレーニングや工夫が必要になりそうです)


◯STEP3:学習戦術としてピア・コーチングを使い続ける人が増える

※Kathy Kram, Polly Parker(2008)Peer Coaching: A Relational Process for Accelerating Career Learning
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

何を重視すべきかというと

・パートナー選び
・ピアコーチングの成功(特に専門性の開発!)
・継続

という構造を大事にすると、
文化として根付きやすくなる、

とも言い換えられそうです。



■そして、最後に、

「ピア・コーチングを成功させる」ための
(やっぱりいちばん大事な)
”お互いの関係性づくり”

について、
4つのポイントを抑えておくことが特に重要である、
と提案されています。


これまた、とても大事だなあ、と
思いましたので、以下共有したいと思います。

(ここから)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<ピアの関係性をつくるための重要な4つの要素
(≒ピアコーチングを成功させるための4つのポイント)>


1)信頼と協力の風土:

・仲間(ピア)はお互いに共感を得る必要がある。
(友達になる必要はないがそうなる可能性はありうる)

・批判的な友人の刺激的な質問は、お互いの発展を支援するが、緊張関係も生むので境界を設定する事が重要である。

・逆に親しみすぎて、効果的なコーチングの役割に必要な距離感が損なわれないようにするとも大事。

・また組織風土は、お互いの関係の質に影響を与える。
 よって、組織がピア・コーチングのスキルを学び、実践する機会を提供している場合、
 個人は相互学習関係に参加するために必要な感情的能力を開発する可能性が高くなる


2)オーセンティシティ:

・信頼関係を築くにはパートナー同士が仲間に対しても自分自身に対しても誠実でオープンであること。
 懸念や問題を提起し、表現することが必要。

・深い部分に入ると、感情が生まれる。そこには時に緊張が生まれる。
 相手と自分の感情を適切に分離し、保持することが重要。
 共感・暖かさ・純粋さを適切に表現することによって感情を管理することができる。


3)対話と会話:

・「共有された探究、共に考え、共に内省する方法」が対話。

・仲間の役割は、耳を傾けること、明確にするための質問をすること、感情的・認知的空間を開放しておくこと。


4)振り返り(内省)とフィードバック:

・個人の行動に対する意識を高め、パフォーマンスに影響を与える根本的なニーズ、
 メンタルモデル、信念の構造を明らかにすること。

・ダブルループ学習には、表面的な回想ではなく、深い内省が不可欠である

※Kathy Kram, Polly Parker(2008)Peer Coaching: A Relational Process for Accelerating Career Learning
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)



■まとめると、”関係”を作るためには、


・相手に対して、共感や純粋さを表現すること。

・批判的なスタイルは上手に扱うこと。

・自分自身が誠実で、オープンであること。

・対話を通じて、共に探究し、内省すること。

・お互いの信念や思い込みに、気づき・気づかせ合うこと。


という姿勢・行動が大事、ということ。


こうして見てみると、そこには

批判や評価をするとか、
相手より優位に立つとかの
保守的なコミュニケーションとは無縁です。

全く別の、もっと感情的で
純粋で深いものであることに
改めて気が付きます。



■そして、そのようなことから
生み出される関係性が「学習」へと影響を与え、
「専門性の開発」へと連鎖していくことは、
実に面白い因果だと感じます。


「心理的安全性」など、
感情や関係性に触れられる理論も注目されていますが
その重要さに思い馳せた論文でございました。

皆様のご参考になれば幸いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

お互いに助け合わなければならない。
これは自然の掟である。

ラ・フォンテーヌ(フランスの詩人/1621-1695)

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【編集後記】
今日もこれから大学院の授業。
6月も、もりもり頑張れそうです。
(ちょっと休みたい気もしますが、今年は頑張る!)


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