配信日時 2022/03/03 08:58

書籍『組織におけるストレングスベースのリーダーシップ・コーチング』を読み解く(4) ~第2章 強み:定義とモデル(後半)~【カレッジサプリ】

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令和4年3月3日(第2933号)


書籍『組織におけるストレングスベースのリーダーシップ・コーチング』を読み解く(4)
 ~第2章 強み:定義とモデル(後半)~


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3488字/読了時間5分)


■おはようございます。紀藤です。

さて、本日のお話です。

「組織におけるストレングスベースの
 リーダーシップ・コーチング」

について、非常によくまとめられている、

Doug MacKie (2016)
『Strength-Based Leadership Coaching in Organizations
An Evidence-Based Guide to Positive Leadership Development』
https://www.amazon.co.jp/dp/B01CEFQWMI/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_WFSJHK5H0CHCFSB5WMK9

を、一章ごとに解説してまいりたいと思います。

各章立ては以下の通り。

<第1章:組織におけるストレングスベースのアプローチの紹介>
<第2章:強み:定義とモデル>
<第3章:ポジティブ・リーダーシップ理論>
<第4章:強みの特定と評価>
<第5章:リーダーシップ開発へのポジティブなアプローチの有効性を示す証拠>
<第6章:強みの開発>
<第7章:組織におけるポジティブなリーダーシップ開発のためのコーチング>
<第8章:リーダーやマネジャーとしてストレングスベースのアプローチを用いる>
<第9章:ストレングス・ベース・アプローチによるチーム開発>
<第10章:ストレングスベースのリーダーシップ・コーチングの背景と限界>

今日は「第2章(後半)」となります。
それでは早速まいりましょう!


タイトルは、



【書籍『組織におけるストレングスベースのリーダーシップ・コーチング』を読み解く(3)
 ~第3章 強み:定義とモデル(後半) ~】



それでは、どうぞ。



■「強み」を語る上で、

強みという言葉の”定義”、そして
”強みのモデル”の全体像を概観することで、

よりストレングスベースのアプローチが
見えやすくなってきます。

「第2章」はまさにそんな内容です。

昨日は前半を見てまいりましたので
本日は後半に行きたいと思います。

※前半の内容はこちら
https://1lejend.com/b/detail/HSfoIRnMfw/4121063/

それでは早速見てまいりましょう!



■第2章の内容は以下の通りです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<第2章: 強み:定義とモデル>

【はじめに】
【強みのモデル】
【「状態-特性の連続性」に応じた強みの差別化】

↓↓本日はここから
【強みとパフォーマンスの関連性】
【やりすぎた強み】
【文脈にあった強み】
【強みと決断の余地】
【まとめと結論】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



(↓ここから後半)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【強みとパフォーマンスの関連性】

◯強みとパフォーマンスの関係(逆U字型になる)

・強みがリーダーシップのパフォーマンスにどのように影響するかはポジティブ組織心理学の分野で多くの研究がされているが、「逆U字」を描くとされている。(Kariser and Ocerfield,2010)

・つまり、「強み」も最適な発現量があり、多すぎても少なすぎても、マイナスになる。
 例えば、“強みに対する自信が傲慢になる”など。


◯リーダーシップ脱線の研究から得られた証拠(逆U字型になる)

・強みはやりすぎると弱みになる。過剰な活用や、文脈上の誤用という形で現れる。
 強みの過剰な適用は「偏った」リーダーシップと呼ばれている。


◯パーソナリティ研究からのエビデンス(逆U字型になる)

・性格と職務遂行能力についても、「曲線(逆U字型)」の関係を示す証拠が示されている。(Le et al,2011)。

・例えば、パーソナリティの「良心性」が誇張されて“優柔不断”として現れる、あるいは「情緒安定性」が“無関心さ”として現れるなどがある。

・アサーティブネスとリーダーシップの関係を調べたデータによると(Ames and Flynn,2007)、
 中程度のアサーティブネスは成果の達成を促進するが、高いレベルのアサーティブネスは対人関係の質を低下させ、他者を介した達成を難しくすることがわかっている。
(何事もバランスが大事である、ということ。スイートスポットがある)


◯ポジティブな感情に関する研究からのエビデンス(逆U字型になる)

・直感的にポジティブな感情はパフォーマンスと関連しているようにみえる。
 楽観主義、自信、希望をより多く持つ人は、目標を長く継続し、多くの努力をし、挫折から回復する。
 積極的な行動の増加にも影響している。

・一方、「“ポジティブな感情”と“積極性”の関係」も曲線的(逆U字型)であることがわかっている。
 ポジティブな感情が高いと、物事が上手く言っていると認識されるため積極的に行動する必要が減るから、と想定される。

・同様に「“ポジティブな感情”と“創造性”の関係」も曲線的(逆U字型)になっていることが示されている(Davis,2008)。
 過度の楽観主義は、準備不足やリスクの過小評価につながるというマイナス面がある(Grant and Schwartz,2011)。
 またあまりにもポジティブすぎると、空虚で不誠実な感じがしてしまうことも。

・最近の研究では、パフォーマンスの高いチームのポジティブ比率は3:1と言われている。
 つまりネガティブなコメント1件に対して、ポジティブなコメントが3件程度、とされている。
(※ポジティブ度も高ければよい、というわけではない。
 ある程度、自信のなさや、悲観的な視点、リスクなども考えたほうが、積極性や創造性が生まれるということは着目に値する)


◯まとめ
・リーダーシップの脱線、パーソナリティ、ポジティブな感情に関する研究より、
「“強み”として考えられる変数(楽観性・自信など)」と「パフォーマンス基準(積極性・創造性など)」は、曲線的な関係(逆U字型)である。
・強度や文脈に関係なく、無秩序に強みを活用すると、パフォーマンスに悪影響を及ぼすことを強くしている(Kaiser and Overfiels,2011)。

**

【強みのやりすぎ】

◯ストレングスベースのアプローチは弱みや文脈を無視してよいわけではない

・ポジティブ心理学の研究は、強みを過度に活用することの危険性よりも、強みに基づいた行動がないことの悪影響に焦点を当てている(Grant and Schwartz,2011)。

・しかし、ストレングスベースのアプローチは、弱点を無視したり、文脈や強度を考慮せずに強みを適用することを意味しない。

◯強みが過剰に発揮されると、パフォーマンスにネガティブな影響がある

・たとえば、ナルシシズムなどは自信や自己信頼が過剰になった例である。

・また、「偏ったリーダーシップ」(Kaplan and Kariser,2013)も過剰使用の例である。例えば、
 戦略的なリーダーシップと、戦術的なリーダーシップ、あるいは強引なリーダーシップと支援的なリーダーシップについても、一方を過剰に使用するのではなく、バランスをとる必要がある。

**

【コンテキスト(文脈)での強み】

◯成功には「特性」と「環境」の相互作用が必要

・“外向性”はリーダーシップ行動と正の相関関係を示している。
 しかし、この特性が機能するか、あるいは機能しないかという「文脈」はある。
 例えば、営業部門で、顧客や取引先と継続的に関わり、信頼関係を築く上では必要不可欠だが、静かに考えることが当たり前のIT部門などでは、必ずしも機能しないかもしれない。

・よって、強みは“適用される状況や環境”に併せて適用する必要がある。

**

【強みの決定権のゆとり】

◯強みを試す柔軟性が必要

・自分の成長にストレングスベースのアプローチを役立てるためには、“自分の役割で結果を出す方法をある程度選択できること“が必要である

・そうすれば、最適な効果を得るために、“強みの組み合わせ”をいろいろと試すことができる。

**

【まとめと結論】

1)「状態-特性連続体モデル」は、感情・性格・特性・才能など、強みの発達のしやすさについても、比較的変えやすいもの、安定しているものがあることが示唆を与えている。
  強みの開発も、状況に応じて選択をすることも重要。

2)「強みとパフォーマンスの関係」は「逆U字型」である。
  強みの過剰使用、文脈を考慮しないやり方に注意しなければ、弱みになってしまう可能性もある。

3)ストレングスベースのアプローチでは「成長思考」は非常に重要である。
 相対的に固定されている知能という“特性”でさえも、発達する可能性があり、そこには成長思考が寄与している。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(↑↑ここまで)


■さて、いかがでしょうか。

後半のまとめとしては、

「強みとパフォーマンスの関係は
 『逆U字』型である」
 
というお話が特徴的であったと感じました。

強みとは、その文脈で発揮されるもの。

相手に合わせて調整しなければ、
強みも弱みとなってしまう可能性もある。

ゆえに、自分が持っている特性・才能・感情なども

”どれくらいのさじ加減が
 強みとして活用されるのか”

について、ボリュームを調整するかのごとく、
自己認知・自己調整の必要があるかと思います。



■ということで、次は

「第3章 ポジティブ・リーダーシップ理論」

について紐解いていきたいと思います。 

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<今回 取り上げた書籍はこちら>

『Strength-Based Leadership Coaching in Organizations
An Evidence-Based Guide to Positive Leadership Development』
Doug MacKie (2016)

https://www.amazon.co.jp/dp/B01CEFQWMI/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_WFSJHK5H0CHCFSB5WMK9

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【編集後記】
昨日は4件のアポイント。
また社内での3-5月の目標設定など。
会社メンバーである妻が育休あけのため、4月以降の活動について話し合いました。

また、この著書を地味に読み進めてまとめていくのが、実に楽しいです。
3月前半が少し落ち着いていることもあって、こういったことに時間をとれるのがありがたい。
今のうちに諸々読みたかった本など、読み進めて、まとめたいと思います。

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