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令和4年2月18日(第2920号)
「フォロワーシップ」とは何か(その6)~「構築主義的なアプローチ」を紐解く~
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3456字/読了時間6分)
■おはようございます。紀藤です。
昨日は終日、大学院の対面授業。
リーダーシップワークショップ演習という
3日間の授業の初日でした。
体を動かしつつ、感性を働かせながら
お互いの考え方を知る、協力するなどの
相互作用を体験しましたが、
とてもよい学びの時間になりました。
そしてやはり「対面」の威力とは
こういったところにあるんだな、と体感しました。
オンラインでしか会っていなかった
大学院での仲間との距離が1日だけでも
ぐっと近づいているような気がしています。
またこのお話は改めて
皆さまにもご共有できればと思います。
*
さて、本日のお話です。
先日よりお伝えしておりました
フォロワーシップについて、
本日もお伝えしてまいりたいと思います。
(本日含めてあと2回で終了予定です)
それでは早速まいりましょう!
タイトルは、
【「フォロワーシップ」とは何か(その6)~「構築主義的なアプローチ」を紐解く~】
それでは、どうぞ。
■フォロワーシップ。
この単語一つだけですが、
実に奥深い。
当初はこんな6回も書くつもりは
なかったのですが、書き始めると
色んな研究者が、色んな観点から
考えてきたテーマなのだな、、、
とその世界の広さに
目を細めてしまう気分です。
*
さて、今日はその中での
フォロワーシップの、
『構築主義的なアプローチ』
(コンストラクショナルなアプローチ)
について紐解いてみましょう。
■ちなみに、
”構築主義的な”視点とは
一体どのようなものでしょうか?
一言で言えば、
”ものごとの意味は
人と人が社会的に集まって
共に創造していくという考え方”
のことです。
ちなみに、
構築主義とは他にも
・構成主義とか
・社会構成主義とか
・社会構築主義とか呼ばれます。
正式な説明は、
”現実に存在していると考えられる対象や現象は、
客観的もしくは物理的に存在しているのではなく、
人々の認識によって社会的に構築されていると考える社会学の理論的立場”
(コトバンクより)
とのこと。
ゆえに、
”構築主義的なリーダーシップや
フォロワーシップの見方”
とは、
「人々がお互いの関係の中で
相互作用を与え合いながら、
リーダーシップやフォロワーシップという
関係性や、行動、アイデンティティを
共に作り上げていっている」
という立場からのアプローチとなります。
■さて、ではそんな
構築主義的なフォロワーシップ。
どのようなものが
具体的にあるのでしょうか。
その中でも過去の研究で
いくつかありますので、
以下ご紹介していきます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<構築主義的なフォロワーシップ_一覧>
1)「リーダーシップ・アイデンティティ構築プロセス」
2)「共同制作」
3)「ポスト構造主義的アイデンティティ観」
4)「リレーショナル(ディスカーシブ)アプローチ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とのこと。
横文字が多めですが、
私(紀藤)なりの解釈も踏まえて
平たくお伝えしてみたいと思います。
■まず、
1)「リーダーシップ・アイデンティティ構築プロセス」
ですね。
これは、
”ある個人が、リーダーまたはフォロワー
いずれかのアイデンティティを確認する”
ときに、リーダーやフォロワーが発生する
というお話かと。
例えば、
「私はリーダーです!」と
ある人が言ったとします。
そしてその主張に呼応して
周りの人が「そうですね、あなたはリーダーです」と
何かしらの形で認めたとき、
小難しい言い方で言えば、
”その人の主張を認め、
リーダーとしてのアイデンティティを付与したとき”、
そこにリーダーやフォロワーという
認識(アイデンティティ)が生まれる、
というわけです。
、、、とすると、たとえ、
肩書が「マネジャー」だからといって、
そのマネジャー自身がリーダーとしての
アイデンティティを確認しなければ、
つまりそのマネジャーが
リーダーとしての主張をしない、
あるいはフォロワーが
「あなたをリーダーとして認めない」
となったとしたら、
そこにはリーダーシップも
フォロワーシップも生まれない、、、
となります。
■次に、
2)「共同制作」(Co-Production)
ですね。
リーダーとメンバーの交換理論(LMX理論)
という理論があります。
これは
”お互いが良好な関係であるほど
効果的なリーダーシップが発揮される”
という考え方に基づいて、
「”フォロワーの積極的な関わり”によって
リーダーシップの成果を「共同制作」している」
という考え方です。
これ、どういうことかというと
従来はリーダーシップの成果は
「リーダー中心に作り出される」
と考えられていました。
しかし、
「リーダーシップの成果」についても、
”フォロワーは受動的な受け手ではない。
フォロワーは共同貢献者である”
とか、
”フォロワーの積極的な関わりが重要。
フォロワーを能動的な貢献者に役割を昇華させる”
という考えを、
フォロワーシップの考えに付与したのです。
これがフォロワーシップの考えに
新しい視点を吹き込みました。
■そして、3つ目。
3)「ポスト構造主義的アイデンティティ観」
なるものですね。
またややこしい言葉が出てきました(汗)
”構造主義”とは、
人間の社会的、
文化的諸事象を可能ならしめている
基底的な構造を研究しようとする立場、
(コトバンク)
とされています。
人々の自己像も、
それが絶対的あるのではなく、
社会と密接に絡み合っており、
複雑な条件や結果の文脈の中で
発現していると見ることが必要、
と唱えたものです。
*
例えば、中国と日本と中東と欧米では、
その文化が違います。
そして、その「文化の文脈」で
望ましいリーダー像、フォロワー像も
変わってきます。
(例えば、欧米だと
”自分の意見をはっきり言ったほうが望ましい”
みたいな話聞いたりしますよね)
また、「時代という文脈」でもそう。
今と100年前ではまた違っています。
そんな複雑な条件や結果の文脈を理解した上で
(=ポスト構造主義的な分析を用いて)
”フォロワーのアイデンティティを
理解することが重要である”
としたのがこの立場です。
そうすることで
フォロワーとリーダーの相互作用の中で生まれる
アイデンティティや、複雑な状況を理解できる、
としました。
(、、、と私は理解しております)
■そして最後、
4)「リレーショナル(ディスカーシブ)アプローチ」
ですね。
ここで言う、
”ディスカーシブ”とは、
「多方面に渡る、散漫な、次々と飛ぶ」
という意味です。
これもちょっと難しいのですが
”フォロワーについて
「成果を生み出すためにリーダーと関わり、
相互作用し、交渉するアクター」として位置づける
リーダーシップの言説的アプローチ”
よ説明されています。
なんのことやら、、、
ということですが、
人は対人関係において、
コミュニケーションを行います。
つまり対話・会話がなされますし、
アイコンタクトを含めてやり取りが発生します。
そして、その中で
言葉だけを抽出するならば、
・リーダーが「リーダーっぽい言葉を使う」
・フォロワーが「フォロワーっぽい言葉を使う」
シーンが見受けられたりします。
例えば、いつも
「結局それってこういうことでしょ」
(まとめる言葉)
「なるほど!おっしゃるとおり。勉強になります」
(追従する言葉)
というような、
その文脈における言葉の使い方に着目することで
誰がリーダーで誰がフォロワーかは見分けることができる、
というのはあるものです。
それらの影響を与える行為(言語、行動等)を分析し、
リーダーシップを構築しているか、していないかを見る、
というアプローチです。
これも文脈の中で役割とかだけではなく
”言説的な影響もある”という意味で
新しい視点を与えてくれるような気がします。
■、、、と、いうことで
「構築主義的なフォロワーシップのアプローチ」
について代表的な考え方を
ご紹介させていただきました。
こう見てみると、
どれも構築主義ということで
似ている考え方であることがわかります。
そしてここから
学びを言葉にするならば、
やっぱり、
「リーダーはフォロワーがいるからこそ
リーダーである」
と思いますし
「それぞれの役割は、
関係の中から相互作用として共創される」
という構築主義の影響を理解できます。
そういう意味では、
リーダーもフォロワーも
どちらが偉いなどではなく、
「皆がそれぞれの役割を演じている
一つの舞台」
と捉えてもよいかもしれませんし、
全体としての成果を生み出すために、
それぞれの役割と、
それが生まれるルールを理解する。
そうすることでまた
俯瞰的なものの見方ができるようにも思います。
■それでは、次回、
フォロワーシップシリーズについて
最終回としてまとめさせていただきます。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
お互いに助け合わなければならない。
これは自然の掟である。
ラ・フォンテーヌ(フランスの詩人/1621-1695)
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【編集後記】
対面型の授業、やっぱりいいなあ、としみじみ思いました。
場所が変わるとルールも変わり、いつもと違う人が影響力を
発揮しているようにも見えます。人は多面的でいろんな観点で
お互いに知り合う事って大事だな、と改めて思います。
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