配信日時 2022/02/02 13:25

「ジョブ・クラフティング研修」がもたらす効果とは ~日本人従業員への調査からわかったこと~【カレッジサプリ】

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令和4年2月2日(第2904号)


「ジョブ・クラフティング研修」がもたらす効果とは ~日本人従業員への調査からわかったこと~
~ジョブ・クラフティングを紐解く(その8)~


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3724字/読了時間5分)


■こんにちは。紀藤です。

本日も引き続き、
ジョブ・クラフティングを紐解くシリーズです。

気づいたら8回目になってしまいました・・・

深ぼれば深ぼるほど様々な論文が出てきて、
非常に興味深く感じております。

ただ、このまま潜り続けると
ジョブ・クラフティングの世界から抜けられなくなりそうで
ものすごくマニアックになりそうな予感もしております(汗)

、、、ということで、本日にて
「ジョブ・クラフティングシリーズ」を
一旦完結とさせていただければと思います。



本日は、日本の東京大学、慶應義塾大学の
「ジョブ・クラフティング」の研究の論文から
ご紹介させていただきたいと思います。

論文のタイトルは、

『Effects of a Job Crafting Intervention Program on Work Engagement Among Japanese Employees:
 A Randomized Controlled Trial』(2020)
(日本人のワークエンゲージメントに対するジョブ・クラフティング介入プログラムの効果:
 ランダム化比較実験)
Asuka Sakuraya*, Akihito Shimazu, Kotaro Imamura and Norito Kawakami

でございます。

要は、

「ジョブ・クラフティング介入プログラムをやって、
 何がわかったのか?」
 
というお話。

それでは参りましょう!

タイトルは



【「ジョブ・クラフティング研修」がもたらす効果とは ~日本人従業員への調査からわかったこと~】



それでは、どうぞ。



■ジョブ・クラフティング。

”仕事を手作りする”

という考え方です。

そしてジョブ・クラフティングには3つの次元がある、
とご紹介させていただきました。

こんな内容でございました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<ジョブ・クラフティングの3つの次元>

1)タスク境界(task boundary)
 →仕事そのもの(を創意工夫する)

2)他者との関係性(relational boundary)
 →人との関係(を築く)

3)認知的な境界変化(recognition boundary)
 →仕事の捉え方(を変え、意味や意義を見出す)
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(もう、このフレーズ7回くらい書いているので、
 「仕事」「関係性」「捉え方」の3点セットが、
 染みついてまいりました・・・)
 


■そして、このジョブ・クラフティングを高めることは

”個人資源を高め、
そしてワークエンゲージメントにつながることがわかった”
 
とのこと。


そして、今回の実験では、
それらを実際に探求するため、日本の組織において

”「ジョブ・クラフティング介入プログラム」
(=「ジョブ・クラフティング研修」ごときもの)を行ったら
 どのような結果が得られたのか”

について調査をした内容となります。

内容は、日本人従業員合計281名の対象者に対して

・介入群(ジョブ・クラフティング介入プログラムを行った)
・対照群(ジョブ・クラフティング介入プログラムを行わなかった)

を分けて比較検討するということで、
興味深いものです。


(、、、というのも通常の企業研修では、
 そのように成果を図りたくとも、
 リソースやコストの関係でなかなかできません。

 そういった意味でも、特に人事の方などは
 ご興味を持たれるのではないかな、とも思っております)



■さて、では具体的に
どのような介入を行ったのでしょうか?

以下、概要を整理してみます。


(ここから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

<日本人のワークエンゲージメントに対する
 「ジョブ・クラフティング介入プログラム」の効果: ランダム化比較実験 の概要>
 
 
●目的
・日本人従業員を対象に、ジョブ・クラフティングの介入が、
 3ヶ月後、および6ヶ月後のワークエンゲージメントに及ぼす効果を調査すること

※副次的な結果として
 ・ジョブ・クラフティングの効果
 ・ジョブ・クラフティング・スコアが高い人と低い人に分けた結果への影響
 を検討した


●方法

◯対象者
・今回の調査は6つの職場(民間企業5社、小学校1)が参加した
・会社や小学校の窓口で案内メールを使って募集した。
・現在仕事をしている&2回の介入(ワークショップ)に参加できる人を募集
・介入群:対照群=138名:143名 と1:1になるように設定

◯介入方法
・著者が開発したジョブ・クラフティング介入プログラム。
 3種類のジョブクラフト(仕事のタスク、関係性、認知)に焦点を当てている内容。
 
*ワークセッション:
・ジョブクラフトの事例を冊子にまとめて参加者に配布
 合理的なジョブクラフトの計画を立てる(各120分)
 ※上記は1回目の内容、2回目の内容は論文に記述なし

*フォローアップ:
・メールや手紙によるフォローアップを行い、
 参加者がセッションの内容を覚えやすくし、実践できるようにした
・2回目の介入後1ヶ月間は、ジョブ・クラフティングに関する質問をいつでも受け付けるようにした


●結果

・今回の「ジョブ・クラフティング介入プログラム」は、
 全体としてはワークエンゲージメントに対して有意な効果があるとは示せなかった
 
・それは、ワークエンゲージメントに対して
 ジョブ・クラフティングを行うことは効果があるという先行研究と
 矛盾する結果であった
 
・ただし、元々ジョブ・クラフティングが低い対象者(サブグループ)に絞ってみると、
 小さな効果ではあるが、ワークエンゲージメントの向上に有意な介入効果を示した
 

●考察:

・今回の調査結果から「ジョブ・クラフティング介入プログラム」が
 ジョブ・クラフティングが少ない労働者のワークエンゲージメントを
 効果的に高めることができた
 
・よって、ジョブ・クラフティングをあまり行わなかった労働者の幸福度を向上させるための
 新たな戦略として利用できる可能性がある
 
・ベースライン時(介入前)のジョブ・クラフティング行動に応じて(高いor低い等)、
 ジョブ・クラフティング戦略が異なることを示唆しており、
 対象者に応じてジョブ・クラフティング介入プログラムを調整する必要がある
 

※参考:
Asuka Sakuraya*, Akihito Shimazu, Kotaro Imamura and Norito Kawakami (2020)  『Effects of a Job Crafting Intervention Program on Work Engagement Among Japanese Employees:
 A Randomized Controlled Trial』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ここまで)


という(大まかな)内容でした。


(※ちなみに「注」ですが、
上記は論文からの一部の紹介です。

詳細についてはより詳しい結果、考察が
数字のデータも含めて書かれておりますので、
ご興味がある方はそちらをご参照くださいませ。)


■、、、ということですが、
ご覧になられてみて、いかがでしょうか。


「ふーん、なるほどね。
 結局、ワークエンゲージメントに対して
 ジョブ・クラフティングの介入はあんまり効果がなかったのね」

でおしまい、、、

というお話ではありません。

これらの結果だけではなく
プロセスをじっくり眺めてみると
色々と考えさせられるように思います。



■例えば、

・ジョブ・クラフティングはワークエンゲージメントに対して
 効果は小さいものの、有意な影響がある
  ↓
・そして、それは「介入のやり方」よっても違ってくる

というのは、
まさに人材開発における大いなる示唆だと感じます。
(当たり前っちゃ当たり前なんですけど)


しばしば検討される

・参加者のレディネス:事前に参加者のレディネスを高める
・介入回数・継続性:介入の回数、フォローアップ等に継続的な施策にする
・プログラムの内容:グループ対話、過去の経験の振り返り等の気付きのしかけ

なども影響していることも改めて考えさせられます。

・対象者も「元々出来ている人 or 出来ていない人」と分けて効果を測る
 プログラムを変える

という部分もそう。



■とすると、これまでの研究結果から

”ジョブ・クラフティングが
ワークエンゲージメントに影響を与える”

ということは、概ね理解が出来たとしても、
介入の方法による結果の違い、
それ以外の要素(年齢・性別、職場環境、個人のパーソナリティ等)も
多分に含まれているということも理解した上で、

「どう現場に活かすのか」

を考える必要があるのでしょう。


そう考えると、
これらの研究結果を踏まえて
大事にしたいスタンスとは、


『絶対的な正解を追い求めない。
 その時々で成果を発揮できる”小規模の理論”を探し続ける』


という姿勢の大切さ、
そこに一つの答えがあるようにも感じます。



■「これさえやっときゃOK」という

シンプルな答え、ウルトラCの答えは
人・組織に関しても、それ以外のものでも、
転がっているものでないのでしょう。


今回のジョブ・クラフティングに関しても、
またその他の様々な分野においても

先人たちの研究結果と理論と経験の蓄積は、
自らが経験せずとも”すでにある”ものです。

そしてそれは、興味を持って深ぼることで
手に入れることができます。


ゆえに、先人たちの功績に尊敬の念を描きつつ
そんな「巨人の肩」に乗せていただき

より成果に繋げられるよう、貢献できるように
学ぶ続けることが大事なのだろう、、、

そんなことを改めて感じた次第です。



まだまだジョブ・クラフティングも掘り下げられそうですが
今回で一旦、一区切りとさせていただきます。

改めてお付き合いいただいた皆さま、
ありがとうございました!

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

仕事が楽しみならば人生は極楽だ。
苦しみならばそれは地獄だ。

ゴーリキー (ロシアの作家)

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【編集後記】
茨城でのリモートワーク3日目です。
(どちらかというとワーケーションに近い気もします)
ここ数日は仕事を少し減らして大学院生モードになっております。
こうして論文を読んだり、学びをまとめたりできる時間があること
本当にありがたいな、と思います。


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