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令和4年1月7日(第2878号)
組織開発は「痛み」を伴うプロセスである ~合宿を振り返り思うこと~
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3874字/読了時間5分)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は終日、
南山大学、立教大学、玉川大学合同の
診断型組織開発を学ぶ合宿の3日目(最終日)でした。
*
さて今日のお話です。
昨日まで
「診断型組織開発」のプロセスについて
・エントリーと契約
・データ収集とデータ分析
とお伝えしてまいりました。
残りのステップ
・アクション計画/実施
・評価 については、
明日以降お伝えさせていただくとして
今日は組織開発の合宿から
自分の印象的であった経験を、
鮮度が高いうちに言葉としてまとめつつ、
ご共有をさせていただければと思います。
(長いです)
タイトルは
【組織開発は「痛み」を伴うプロセスである ~合宿を振り返り思うこと~】
それでは、どうぞ。
■今回の組織開発の合宿では
3大学生の方々と一緒に、
社会人混合のチームを組みました。
そして、
・自分達のチームがコンサルタントとして
組織開発を行いつつ、
・自分たちのチームがクライアントとして
組織開発を受ける
というように
A→B→C→D→E→F(そしてA)
という円環型で組織開発をする&される、
両方の役割を味わいつつ
体験を通じて学ぶ、体験型学習です。
通称、
『Group on Group』
(略してグルポン)
とのこと。
■ちなみにこれは、
米国のNTL研究所
(National Training Laboratory
応用行動科学国立トレーニング研究所)
にて
”Tグループ”という手法で行われている
有名な方法な、6日間の内容を凝縮したものです。
これを日本で体験できる場所は
ごく限られており、
今回は立教大学大学院の中原先生
そして、組織開発の第一人者である
南山大学中村和彦先生との繋がりがあり、
今回の企画に参加することができました。
実に幸運な限りです。
■、、、がしかし、
幸運とは言えども、
一方、その体験は
”痛みを伴なう
学びのプロセスであった”
と率直に感じております。
自分が合宿で選択した行動に
一切の後悔はありませんが、
未だに3日間で
起こっていたプロセスを
自分が解釈し、消化し、
未来に繋げていくことができるのか
答えを探している状況です。
■組織開発は通常
クライアントのシステム(チーム)の状態を
”見える化”していく中で、
水面下にあった隠された真因を
”ガチ対話”を通じて解き明かしていくため、
多くの場合見たくないところを見る
「痛み」を伴うプロセスとなる、
と言われます。
しかし、今回の気付きとは
”痛み”の主語は
クライアント側の立場
(組織開発を受けるほう)
というよりも、
”コンサルタント側の立場
(組織開発を行う方)としての痛み”
を大きく感じたプロセスでした。
(具体的に言えば、
私のチームでは大学生混合メンバーの
約半数が涙する、という状況が起こっていました)
■その「涙」の理由の真因は
明確には本人の中にしかありませんが、
表層レベルでの発言で言えば
・基本的なプロセスは
やっているつもりなのに
なかなか(クライアントが)乗ってくれない
・クライアント側の姿勢として
もっと協力的になってくれてもいいんではないか
と”思ってしまう”という気持ちが
コンサルタントチームに見え隠れしていました。
しかし隠された水面下深い部分では
・どうしたらよかったのか
答えが見つからず思考と感情の
整理が追いついていない歯痒さ(感情)
・相手を受け入れたいが受け入れられないという
自分自身の価値観(価値観)
など、
コンサルタントチーム内でも
葛藤がそれぞれのメンバーに起こっており、
その感情的な揺れが
チーム内で増幅されていって、
「涙する」という現象に至ったように思われます。
■私はやや大人なので、
(まだまだ若いですけれど)
涙まですることはありませんでしたが、
私自身に起こっていた
内的なプロセスも葛藤まみれでした。
それは、
・大学生の中で一人だけ社会人、
かつ組織開発もこれまでやってきているはずなのに
望ましくない結果になってしまった「自分への無力感、不甲斐なさ」
・チームの意見を背負って
ファシリテーションしているという気負いの中、
クライアントと対峙して刻一刻と変わる状況を見極め、
対応しきれなかった「自分の能力の未熟さ」
という自分への矢印が
一番大きな思いとしてありました。
ついで、
・コンサルタントとして成果に徹底するのか、
あるいは合宿を学びの場として
クライアントの大学生を含めた学びを
最大化する挑戦の場としたいのか、
という「方向を決めきれない迷い」
そして、
・チーム全体でできている流れに対して
そこに声を大にして違うと思うと
異を唱えることに対する「心理的抵抗感」
あるいは、
・上記に通ずる、成果ではなく
人間関係に寄りすぎてしまうという
個人的な未消化の課題(マネジメントの傾向)
など、私の場合は
自分への矢印を中心にしつつ、
とはいっても自分でできることは
最大限やっているが上手くいかない、
それ以外の要因もあるはず、
しかし何が、どのボタンがかけちがっているのか
何とも明確にならない、、と
モヤモヤしている感情がうずまいていました。
■そして
コンサルタント
クライアントの各メンバーにも、
言葉にはされていない、できない
複雑な心中があったのではないだろうか
と推察します。
それは何かはわかりませんが
・承認欲求(チームに役に立ちたい、認められたい)
・自己実現欲求(貢献したい、自信を持ちたい)
と、それが叶えられない間のようなもの
かもしれませんし、そうではないかもしれません。
いずれにせよ、
「こうしたいけどできない」
という迷いが多くの人の心中に
生まれていたように思いました。
■そのような心境が
・エントリーと契約
・フィードバック
・アクション計画
等の組織開発の各アクションの
象徴的な場面の中で渦を巻くように
凝縮して表出し、
”クライアントチームと
コンサルタントチームが
上手にダンスができない”
(=反発とまではいかずとも、
お互い歩み寄って進められない)
という現象になり、
その現象を解釈する心理的過程の中で、
コンサルタントメンバー個々の中に
痛みが表出していたのでした。
■そういった事象を引き起こした
個別具体的な行動でいえば、
・コンサルタントチームの
具体的な関わり方の失敗
がまずは挙げられます。
例:クライアントの言葉を使わずにすすめる
クライアントに意思決定を委ねられない
クライアントの価値観を尊重しきれていない
ゆえに、それらのズレを
できる限り引き起こさないために
「診断型組織開発」
「プロセスコンサルテーション」
等の”基本型”を知っておくことは
(地雷を踏まないためにも)
重要なことだと思います。
■しかし、同時に考えたいのが、
上記の基本型を知っても、
それでもなお、より深い側面・変数もある、
ということです。
とはいいつつ、
皆が特定の型に沿って行う中で、
気持ちが離れてしまったのには、
コンサルタントの関わり方は大きな要因でしたが、
それ以外の変数も、あったように思うわけです。
つまり、
コンサルタント、あるいは
クライアントの組み合わせが違ったら
別の結果になっていた可能性も考えられる
ということ。
■組織開発における
隠された真因としての水面下のプロセスには
1)コミュニケーション
2)意思決定のされ方
3)目標の共有
4)役割分担
5)手順や進め方
6)リーダーシップ
7)暗黙の決まり事
8)雰囲気や風土
9)お互いの関係性
10)メンバーの状態
等があるといいますが、
各項目を構成する”更に深い部分”がある、
と感じているのです。
■人は理屈でわかっても
感情がついてこないこともあります。
それを子供だ、と言ってしまえば
それまでなのですが、
”価値観が違う”
”ぶっちゃけ好きになれない”
という、
これまでの継続した関係の中で生まれた
「関係性の澱」のようなものが存在する可能性もあります。
それは
表面には出てこないし、
人前で語られることもあまりなくとも、
過去の特定のワンシーンが
「ゴースト」のように背後にいて
それがお互いの距離、本音を言わないように
なることもあります。
■さらに深く潜ると
個人レベルの話も、
影響しているかもしれません。
”自分が優秀でありたい”
”重要なポジションでありたい”
”自分がやらねば”
という、
・本人自身のこだわり
・あるいはコンプレックス的な気持ちの裏返し
等が
特定の影響力が大きい人に現れると
周りに影響を与え、集団の雰囲気、規範、
リーダーシップに影響を与えている可能性も、
大いにあります。
■上記の深い側面なるものはは、
可能性という私の推察です。
しかし、「組織開発」は
もともと集団精神療法から
発展してきた歴史を持つように、
実際に進めていく上での
・表面的なアプローチの要因(現在)
だけでなく
・関係性の要因(過去・現在)
・個人的な要因(過去・現在)
様々なものが影響しています。
それらを抱えながら
バラバラに動く手足を持つ個人が
3人、4人と集まって奏でる、
ダンスのようなものだと思います。
多様な相手と、
即興的に合わせて上手に踊るのは
大変なプロセスだと改めて痛感します。
■それを上手に進めるためには
まずもって技術が必要であり、
それを自分のものとするには
理論と経験という学びをシャワーのように浴び、
場数を積むしかない、と思います。
ゆえに、繰り返しとなりますが
その道を歩むための武器として
「診断型組織開発」
「プロセスコンサルテーション」
等の”基本型”を知っておくことは
やはり必要不可欠です。
今回の我々チームの
”痛み”の直接的な原因も、
それを逸脱はしていなかったが、
抑えきれていなかったことが、影響しています。
だからこそ、基本型、そして
そのパターンを増やすことは、
成功確率を増やすためにとても大事な努力だと思います。
■そして、場数を踏みながら、
即興的にその状況に対応できる理論、
”束の間の理論”を構築できる、
プロフェッショナルな実践家
(=反省的実践家)
となっていく道を歩むことが
人と組織に関わる人にとって、
重要な行動となるのであろう、
今現在は、そんなことを感じている次第です。
この問いは、もう少し掘り下げて
整理をしていきたい、と思いました。
改めて、今回の企画を
共に歩んだ人々への感謝を込めて。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
人生で最も輝かしい時は、いわゆる栄光の時でなく、
むしろ落胆や絶望の中で、人生への挑戦と未来への完遂の展望が
湧き上がるのを感じたときだ。
フローベール(フランスの小説家/1821-1880)
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【編集後記】
果たして、あのときのアプローチが
自分でなかったらどうだったのか、
自分だったらどうだったのか、
他にできたことはあったのだろうか、、、
あるいはクライアントのメンバーが
違っていたら別の結果になっていたのだろうか、
そういったいくつかの選択肢を考えつつ
今回このような状況に至ったことは、
自分にとって結果的に僥倖であったと
振り返って思えるようになる気がします。
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