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令和3年9月17日(第2766号)
レディング大学の論文「コーチングの有効性」から学ぶこと
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2781字/読了時間3分半)
■こんにちは。紀藤です。
昨日は8件の個別コーチング。
また、夕方からは大学院の打ち合わせでした。
*
さて、本日のお話です。
最近コーチングが続いているため、
コーチングの効果についての
論文を調べてみました。
その中で、イギリスのレディング大学の
「職場でコーチングの有効性」
なる論文が、興味深いものでした。
本日はその内容を皆さまに
ご共有させていただければと思います。
それでは参りましょう!
タイトルは、
【レディング大学の論文「コーチングの有効性」から学ぶこと】
それでは、どうぞ。
■コーチングの技術。
日本でも近年ますます
注目されているように思います。
特にオンラインが当たり前になり
リモートでのコーチングが
比較的安価に受講できるようになってから、
身近感がさらに加速したようにも思います。
まだまだコーチング市場は
米国に比べると日本は
1/10くらい(らしい)ですが、
・個としてのキャリア
・組織に依存しないキャリア
を考える上で、
ますます注目されるようになっている
と思っております。
■さて、そんなコーチング。
大事大事とは言われつつ、
「実はその効果を
証明した研究がない」
とされておりました。
それは、様々な理由がありますが、
・上司・部下のコーチング
・同僚同士のコーチング
・社内・社外のコーチング
・コーチングで行われている対話の内容
など様々な変数があり、
どの要素が、
どのようなインパクトを与えるのか、
明確にできないことが一つの要因のように思います。
■そんな中で、
イギリスのレディング大学の論文、
『職場でのコーチングの有効性:
コーチングによる、学習とパフォーマンスの成果のメタアナリシス』
※原題:Jones,R.J.,Woods,S.A.and Guillaume,Y.R.F.(2015)
『The effectiveness of workplace coaching:
a meta-analysis of learning and performance outcomes from coaching』
なるものが、その課題に対して、
向き合った一つの論文のようです。
■コーチングについても
研究した論文はいくつもありますが、
この研究では、
文献検索でコーチングについての研究を探し、
それを横断した「メタ分析」を行ったことが特徴です。
コーチングに関して見つかった
54件の研究より、
分析の基準を満たす
17件(n = 2267人)を抽出し、
”コーチングの効果を
それぞれの研究を横断して分析してみる”
という内容です。
■ちなみに研究は、
米国で7件、英国で2件、
オーストラリアで3件、ノルウェーで2件、
エジプトで1件、イスラエルで1件、
デンマークで1件実施されたもの。
組織については
サービス業、製造業、建設業、公共・政府機関など、
さまざまな組織や産業で行われました。
対象者の多くは、上級管理職または、管理職。
その他の職業としては、看護師、高校の校長、教師など。
加えて、
「社内外のコーチによる
職場でのコーチングのみを対象」
とし、
・上司・部下間(1on1・メンタリング等)や
・同僚間のコーチング(ピアコーチング)
の事例は除外しています。
■さて、ではどのようなプロセスで、
研究を行ったのでしょうか?
まず、研究者たちは
「コーチングは
学習とパフォーマンスの向上に役立つはず」
という仮説からはじめました。
コーチングには、
学習やパフォーマンスに役立つと思われる
以下の3つの要素が含まれるからです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<コーチングが効果的な理由>
1)コーチングは、「目標設定」を行うため
目標設定は、パフォーマンス向上の手法として確立されている
(Locke & Latham, 1990; 2002; Morisano,他)。
2)目標は、経験学習を促進するため
目標設定は、仕事中に行われる活動を特徴とし、
実践と経験による学習を促進する(Kolb, 1984)
3)上位に関連し、コーチングは
職場での実践を通じた学習を奨励するため
コーチングは学習を、仕事のパフォーマンス行動に移すことを促進する。
トレーニングのパフォーマンス効果の障害としてしばしば挙げられる
”転移”の問題を解決することになる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
、、、とのこと。
まあ、直感的にそうだよね、
と思えることをあえて定義した、
という感じでしょうか。
■さて、そんなコーチングですが、
どんな影響があるのか。
論文の結論を伝えると
【コーチングは、
「感情面」「スキル面」「個人レベルの成果」に
ポジティブな効果を示す】
ことがわかりました。
ちなみに、
感情面、スキル面、個人レベルの成果を
どのように測るかというと、
成果指標として、先行研究で
支持されている以下内容を使用したとのこと。
例えば
・感情面(例:仕事の満足度、Luthans & Peterson, 2003)
・スキル面(例:コンピテンシースキル、Taie, 2011)、
・成果(例:生産性、Olivero et al, 1997)
等の研究項目です。
■そして、
上記の成果に影響を与える変数として
特に以下の4つを変数として調査しました。
1,360度フィードバックの有無
2,コーチングの提供形態(face to face、またはオンライン・電話)
3,コーチのタイプ(外部、または内部の者)
4,コーチングのスケジュール(セッション回数、介入の期間)
上記の4つ。
■まず仮説では、
”1,360度フィードバックの有無”
について、
「多面的なフィードバックがあった
コーチングのほうが、良い成果があるのでは?」
と研究者は仮説を立てたのですが、
実際には、
”360度フィードバックを”伴わない”コーチングの方が、
成果に対して有意に強いポジティブな影響を与える”
という結果が出たとのこと。
予想外です。
また、
”3,コーチのタイプ(外部、または内部の者)”
についても、
「外部の雇用者の制約にとらわれないほうが
成果に大きな影響を与えるのでは?」
と研究者は仮説を立てましたが、実際には、
”コーチングは「社内のコーチ」によって
行われたほうが、より強い効果がある”
ことがわかりました。
これも予想外。
ちなみに、
2,コーチングの提供形態(face to face、またはオンライン・電話)
4,コーチングのスケジュール(セッション回数、介入の期間)
については、
数の多寡、手法の違いについて
有意な違いがみられなかったそうです。
■よって、
結果をまとめると、以下のようになります。
【コーチングは、
感情面、スキル面、個人レベルの結果に
ポジティブな効果を示す】
そして、
【360度フィードバックがない場合、
社内のコーチによって実施される場合により効果を示す】
という結論です。
■、、、と
だいぶかたい感じの
ご紹介となってしまいました(汗)
ただ興味深いのは
”実際に仮説どおりに
研究結果がならなかったこと”
ではないでしょうか。
きっとそうだろうな、
と思っても細かく見ていくと、
”必ずしも
仮説どおりにならない”
というのは、
安易な思考から、
より深く探求する必要性を
考えさせてくれるように思います。
ということで、
コーチングに関わる皆さまにとっては
一つの参考になれば幸いです。
でも、コーチングは
成果にやはり繋がるのだな、
と(コーチング提供側として)
改めて自信に繋がりました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
大多数の決定が、いつでも真実だとは限らない。
ヨハネ・パウロ一世(ローマ教皇/1912-1978)
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【編集後記】
論文を読むのは時間がかかりますが、
整理をすると、とても学びになります。
大変だし、マニアックですが今後も続けていきたいと思います。
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