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令和3年8月30日(第2748号)
リンゲルマン効果 ~人が集まりゃ”社会的手抜き”が起こる?!~
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2534字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
本日は、
「個人とグループの心理」
について、ある有名な論文を
ご紹介させていただきたいと思います。
それでは早速まいりましょう!
タイトルは
【リンゲルマン効果 ~人が集まりゃ”社会的手抜き”が起こる?!~】
それではどうぞ。
■ソーシャルローフィング(Social Loafing)
という用語があります。
・Social= 社会的な
・Loafing= ぐうたら・無為
という単語の組み合わせで、
訳すと「社会的手抜き」となります。
定義は、
”集団で行動するときには、
単独で行動する時に比べて
個人の努力が低下する”
(Latane, Williams, & Harkins, 1979, p.822)
とされております。
■うーん、これ、
言わずもがな、皆さまも、
なんとなく感じられますよね。
例えば、
「チームメンバーが増えて、
総合力は高まっているはず。
しかし、思ったよりも
パフォーマンスが高まらないぞ?」
と疑問に感じたこと。
学生生活でも
社会人になってからでも
かつての人生で多少なりとも
ご経験があるのではないでしょうか?
■この「社会的手抜き」に関して、
最初に発見した人、
それが、フランスの農業技術者の
「リンゲルマン」と言われています。
そこから
『リンゲルマン効果』
として、
個人とグループのパフォーマンス研究において、
多数引用されることとなりました。
■さて、この『リンゲルマン効果』、
一体どのようなものか?
説明するにあたって、
少し歴史を振り返ってみたいと思います。
*
時はさかのぼり、1880年代。
1881年、リンゲルマンはまだ学生でした。
そこで、彼は農業分野において、
「馬、牛、人、機械」がもたらす作業の
相対的な効率を調べる実験をしました。
農業技術者ですから、
人も、牛も、機械も区別せず、
「どれが一番パフォーマンスがよいのか?」
を探求しようとしたわけです。
■その中で、リンゲルマンは
1882-1887年に、男子学生ボランティアに、
「人間の労働者がどのような働きをするか?」
を、荷物を押したり引いたり実験を通して、
行ってみたのでした。
(これが最初の社会心理学実験だった、
と言われています)
■リンゲルマンは、
男子学生にこういうわけです。
「最大の力で引っ張ってください」
条件を変えつつ、複数回に亘って
男子学生にロープをひっぱってもらいました。
そして、全データを並べてみると、
あることがわかったのでした。
それが、
『グループのサイズが大きくなると
パフォーマンスが低下する』
という事実だったのです。
■結果は、こうでした。
「単独」で引いた場合、
個人の平均パフォーマンスは”85.3kg”。
しかし、
「7人グループ」で引いた場合、
個人の平均パフォーマンスは”65.0kg”となり、
「14人グループ」で引いた場合、
個人の平均パフォーマンスは”61.4kg”
となりました。
■そして、まとめると、
以下のようになりました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<グループサイズと個人パフォーマンスの関係>
{人数} {個人パフォーマンス平均} {トータル}
1人(単独) = 1.00 1.00
2人グループ = 0.93 1.86
3人グループ = 0.85 2.55
4人グループ = 0.77 3.08
5人グループ = 0.70 3.50
6人グループ = 0.63 3.78
7人グループ = 0.56 3.92
8人グループ = 0.49 3.92
※単独で引っ張った場合の
個人パフォーマンスの平均を1.00とする
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■なんだ、何が起こっているのだ?
8人グループのトータルは、
「4人分」しかないことになります(汗)
こと荷物を引っ張るという作業の場合、
人が増えれば増えるほど、
どんどん手を抜いてしまう傾向にある、
となったわけです。
■ちなみに、この理由について
リンゲルマンは考察したのですが、
”「調整力の低下」のため”
としました。
つまり、
「タイミングをあわせて
力いっぱい引くことが難しかった」
(=努力の同時性の欠如)
というわけです。
それが
パフォーマンスを生み出せなかった要因ではないか、
としたわけです。
■しかし、時を経て
Steiner(1972)は、
”実際のグループ生産性は、
潜在的な生産性からモチベーションと
調整の損失を差し引いたものに等しい”
と言いました。
つまり、
同時に力を発揮する調整力の低下もあるけど、
”社会心理学的な
「モチベーション」も影響している”
といったわけです。
■そしてそのメカニズムは、
次第に明らかにされていいきます。
リンゲルマンが
1880年代に実験をしてから、約140年。
様々な研究者が、
人が集まって起こるメカニズムを
研究/論文を発表してきました。
そして、
人々が集まることによって、
プラスの相乗効果が働き、
1+1が2以上になるように、
生産性が高まることを
「プロセス・ゲイン」と呼び、
一方、人々が集まることによって
依存的になったり、率直にモノが言えなくなり、
全体の力が、個人個人の能力の総和よりも
低くなってしまうことを
「プロセス・ロス」と呼びました。
■、、、と少し歴史を振り返って
「リンゲルマン効果」
を見てみましたが、
これらの話が教えてくれる
大切な教訓とは、
”ただ人を集めれば、
パフォーマンスが高まるわけではない”
というメカニズムである、
と私は思います。
■もしチームでプロジェクトに
取り組んでいる場合でも、
「手が足りない」ということで、
人でを増やしたところで、
”ただ闇雲に増やすだけ”
では、パフォーマンスが高まるどころか、
一人あたりの個人パフォーマンス平均は、
下がってしまう可能性すらある、
、、、この危険性を
リンゲルマン効果は教えてくれているように思うのです。
■人々が集まった際には、
様々な作用が起こりえます。
その中の大いなるダイナミズムの一つが、
”ソーシャルローフィング(社会的手抜き)”
です。
このことを理解した上で、
プロセスロスにならないよう
傾向と対策を練り、
プロセス・ゲインに持っていけるよう
成果を求めていくことが、
マネジメントにおいても
重要な要素になるのでしょう。
■ちなみに、
チームが相乗効果を発揮する
(=プロセス・ゲイン)ためには、
チーム全員が、
・チーム視点/リーダー視点/動的視点を持ち
1,目標を握り続ける
2,課題を探し続ける
3,相互フィードバックする
等の工夫が必要と言われております
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中原 淳 (著), 田中 聡 (著)
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ということで、誠に深きかな、
人と組織。
今日も明日も、
引き続き向き合ってまいりましょう。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<本日の名言>
きみは人生を安易にしたいか。
それならば常に群衆の間にとどまれ。
そして群衆と一緒になって、われを忘れよ。
フリードリヒ・ニーチェ(ドイツの哲学者/1884-
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【編集後記】
昨日日曜日は読書。
またAmazonプライムで気になっていた
『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』を視聴。
もちろん時代背景もありますが
この時代の熱量には大いに刺激を受けました。
なんとなく満足して、それを受け入れるだけではいけないな、
なんて思った次第です。
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