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令和3年8月15日(第2733号)
今週の一冊『京都花街の経営学』
株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2654字/読了時間4分)
■こんにちは。紀藤です。
現在、茨城に来ております。
昨日は雨の中での身近な親族の法事でした。
その他、大学院の動画をみたり、読書をしたり。
*
さて、本日のお話です。
毎週日曜日はお勧めの一冊をご紹介する、
「今週の一冊」のコーナー。
今週の一冊は、
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『京都花街の経営学』
西尾 久美子(著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4492501762/ref=cm_sw_r_tw_dp_7R9YVZFGC5BC841M8AK4
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です。
■「舞妓はん」。
日本に色濃く根付いており、
伝統文化の一つとして
認知されている象徴のような存在が
”芸舞妓さん”ではないかと思います。
しかしながら、実際
いわゆる「芸舞妓の文化」が、
どのような歴史があり、
現在どのように
成り立っているのか…
について、
少なくとも私はこれまで
考える機会はありませんでした。
■そんな中、先日、
「舞妓はんの、
人材育成の仕組みがすごい!」
と聞き、そこから読んだのが
今回の一冊でした。
いくら伝統芸能とはいえ、
長期継続的に存続させるためには
それなりの仕組みが必要です。
それは、
・お客さんを集め続ける
「マーケティング」の仕組み、だったり
・伝統芸能を維持し続ける
「人材育成」の仕組み、だったり
・関わる人を雇用するための
「人材採用」の仕組み
、、、など
実に様々なものが
システムとして出来上がっているからこそ、
実現されているのだと思います。
■変わりゆく世の中において、
求められ続けるためは、
「伝統文化だから」
では説明がつかない、
”(ある意味)経営の仕組み”
があるわけです。
では、一体、
どのような仕組みが
芸舞妓の世界に存在しているのか?
このことについて、
神戸大学大学院の経営学者が
フィールドワークをもとに解き明かした本が、
今週ご紹介の一冊なのです。
■例えば、
・15歳から始まる舞妓修行。
現代っ子との「労働観のギャップ」を
どのような工夫で埋めているのか?
とか、
・礼儀作法、立ち居振る舞い、
長唄・小唄、三味線などの芸事。
1~2年の短期で一人前にする仕組みとは?
とか、
・顧客の満足度を最大化し、リピートを継続する
紹介、評価、フィードバックの仕組みとは?
等々、読んでいくと、
「これは企業の人材育成・採用にも
学ぶところがあるぞ」
と思わされます。
■一つの例を挙げてみると、
「採用」の工夫もそう。
今だとネットで
舞妓さんに応募をする
若い子も少なくないそうです。
(舞妓さんは通常、中学に卒業した後、
サービス業の専門職という立ち位置で
就職をすることになる)
例えば、
「修学旅行で舞妓さんにあって、
めちゃくちゃ可愛かった!
私も舞妓さんになりたい!」
みたいに応募をされる
若い方ももちろんいます。
、、、しかし憧れだけで入って
うまくいくはずもありません。
ゆえに、
「舞妓さんの採用サイト」でも、
1日の生活やリアルな過ごし方も書いていたり、
(下記で紹介していますが、
意外とおしゃれなサイトです)
面接に来た応募者に、
お母さんと呼ばれる置屋の責任者が
リアルな現実、すなわち
京都花街のしきたりを伝えたりして、
「そんな甘くないどすえ」と、
”「リアルな現実」を伝える”
わけです。
すると、
その時点で多くが辞退する、、、
ということもしばしば
■実際、京都花街の
「おおきに財団」の求人サイトを見てみると、
こんな事が書かれていました。
※参考:「舞妓になるには」
https://www.ookinizaidan.com/kagai/maiko/howto/
・仕込みは、大体1年間、先輩のお姉さん芸妓舞妓もいる置屋に住み込み、
置屋のお母さん、お姉さんの手伝い、掃除、舞踊の稽古。
その間にもお母さんやお姉さんから京の花街言葉、
挨拶やしきたりなど花街の行儀作法を徹底的に教え込まれます。
・朝はお姉さん芸妓舞妓より早く起き、
夜はお座敷が終わるまで待ち、
衣裳の後片付けなどの手伝いもしなければならず
寝るのは深夜になることもしばしば。
とのこと。
しかし、
採用後のミスマッチで、
せっかく途中まで育てた人材が
抜けてしまうということは、
経営視点でみたときも、
大きな痛手になるわけです。
、、、であれば、
・ミスマッチがない採用
・採用をしたらやめない工夫
なども実に重要になります。
これも、
「京都花街の文化に馴染むための
採用・一句制の上での工夫」
とも言えるのでしょう。
(人事関連の専門用語で言えば、
「リアリスティック・ジョブ・プレビュー」とか
「組織社会化」の仕組みとも言えそう)
■その他にも、
・「盃の姉」制度(いわゆる教育のメンター制度)
・五花街の始業式(1年に1度の花街全体の評価制度)
・「女紅場」なる学校(OFFJTとONJTの往還の仕組み)
・フィードバック制度(顧客・先輩からのフィードバックがサービスに組み込まれている)
・舞妓さんのキャリア制度(独立、起業含め)
、、、等、
上手に仕組みができあがっており、
学ぶことが実に多いなあ、
と感じさせられた一冊でした。
■お茶屋での
舞妓さん遊びというのは
京都の企業にとっても
一つのステータスになっているそう。
「一見さんお断り」という
敷居が高いサービスでもあるため、
体験するのはハードルがありそうですが
日本文化を知る上でも
チャンスがあれば一度は
お茶屋に行ってみたい、、、
と思わずにはいられませんでした。
(「やってみたいことリスト」に
加えてみました。)
ということで以下、本のご紹介です。
(ここから)
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350年以上の歴史をもち、
いまだに人々を惹きつける京都花街----。
なぜ350年も続き、なぜいまだに人々を惹きつけ続けるのか?
そんな疑問をもとに、気鋭の経営学者が5年におよぶ
フィールドワークを敢行、その成果が本書に結実しました。
本書が他の京都花街に関する書籍と一線を画しているのは、
著者が「経営学者」である点です。
「舞妓はんはかわいいなぁ」
「芸妓はんはきれいやなぁ」という感嘆に終わることなく、
京都花街を350年以上続く「ビジネス」としてとらえ、
その強さの秘密を分析しています。
350年間も続き、今なお多くの人を惹きつけ、
その売上規模を拡大させている経営の秘訣は、
現代の日本企業の経営にも多くの示唆を与えてくれるはずです。
そういった経営学的分析がある一方、
他ではあまり知られていない「京都花街・豆知識」も充実しています。
舞妓さんの修業内容と日常生活、花街のIT化、
「旦那さん」になれる条件、舞妓さんと芸妓さんの見分け方、
舞妓さんに会える場所などなど......
本書を読めば、京都花街通になれることも請け合いです。
※Amazon本の紹介より
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ここまで)
学びは、身近に転がっていますね。
興味深い一冊でした。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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<今週の一冊>
『京都花街の経営学』
西尾 久美子(著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4492501762/ref=cm_sw_r_tw_dp_7R9YVZFGC5BC841M8AK4
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【編集後記】
本日は終戦記念日ですね。
何気なく先日池上彰さんの番組を見ていて、
防衛問題などに思いを馳せていました。
帰ったら積ん読になっていた『China2049』を読もう、と思ったり。
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