配信日時 2021/08/06 11:02

フリーライダーの集団心理 ~見て見ぬふりはなぜ起こるのか~【カレッジサプリ】

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令和3年8月6日(第2724号)


フリーライダーの集団心理 ~見て見ぬふりはなぜ起こるのか~


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 2508字/読了時間3分)


■こんにちは。紀藤です。

昨日はコーチング研修。
その他3件のアポイント。
また、大学院の打ち合わせでした。



さて、本日のお話です。

人が集団になることにより、
様々な作用が起こることを

「グループダイナミクス」

といいます。


今日はこのお話に関して、
興味深い実験を紹介しつつ

学びと気付きを、皆さまに
ご共有させていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!


タイトルは



【フリーライダーの集団心理 ~”見て見ぬふり”はなぜ起こるのか~】



それでは、どうぞ。



■突然ですが皆さまは、

「電車内で体調が悪くなった人」

に遭遇をしたこと、ありますでしょうか?


そして、そんなとき、

(自分を含めて)周りの人は
どのような対応をしがちなのでしょうか。



■、、、と考えてみると、

往々にして、

「体調が悪くなったのを目撃したら、
 周りの人が我先に助けに行く」

というより、

「皆が様子を見つつ、
 そのうちの誰かが声を上げるのを待つ」

というパターンのほうが、
多いようです。


”困っている人がいても、
 他にたくさんの人がいると
 誰かが声をあげるんじゃないか”

と思ってしまい、

言い換えると、

「見て見ぬふりをしてしまう」

という現象は、少なくないようです。



かくいう私も、

電車内で喧嘩をしている
サラリーマンに遭遇したことがありましたが
見て見ぬふりをしてしまった口であります(汗)




■おそらく、感覚的に
わかるであろう、このお話。


実際にどうなのか?

と、ある実験が行われました。

Darley&Latnae(1968)による、
「電話によるコミュニケーション」の実験です。





どのような実験かと言うと、

被験者を複数名集めて
このように実験内容が伝えられました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<被験者に伝えた実験内容(パターン1)>

1,この実験は、電話によるコミュニケーション実験です。

2,各電話ボックスの電話で、お互いに情報交換をし
  グループで課題を解決して下さい。
  
3,参加人数は、「2人」です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



■ちなみに、被験者は複数います。

別のグループの被験者には
以下のよううに伝えられました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<被験者に伝えた実験内容(パターン2)>

1,この実験は、電話によるコミュニケーション実験です。

2,各電話ボックスの電話で、お互いに情報交換をし
  グループで課題を解決して下さい。
  
3,参加人数は、「6人」です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



■、、、さて、どこが違うか
お気づきになられましたでしょうか?

そう、

「参加人数」

が違うのです。

(2人か、6人か)


そして人数が違う条件下で、
ある”アクシデント”を起こします。


参加者の一人が急に体調不良になり、

「ウッ、、、胸が苦しい!
 助けてくれ」

と言うようにシナリオが組まれています。

電話でのコミュニケーション中です。
ゆえに、参加者しかいません。

誰かが、医者などに
助けを求める必要があります。



参加者が2人ならば、
自分と相手のみ。

つまり、声をあげるのは、
自分しかいません。


一方、参加者が6人であれば、
自分以外にも参加者がいます。

他の人が、声をあげてくれるだろう、、、
という選択肢が生まれ得ます。



■結果、どうなったのでしょうか?


この実験を通じて、
以下のことがわかりました。


一つは

『人数による「援助率」の違い』

でした。

2人の場合、援助率はほぼ100%ですが、
3人の場合、約80%になり、
6人の場合、約60%になるのでした。


もう一つは、

『人数による「援助するまでの時間」の違い』

でした。

2人→6人につれて、
援助するまでにかかる時間が
長くなっていきました。



すなわち、

『人数が増えるほど、
 援助率が下がり、 
 援助するまでにかかる時間も伸びる』
 
ことがわかりました。

、、、という実験。



■うーん、実に興味深いです。

参加者2人だったら
皆助けていたはずでしょう。

ただ、6人になると、

「他の人が助けてくれるだろう」

と皆に起こりがちというのは、
まさに集団心理。


その深い部分には、

「自分だけが声をあげて
 面倒に巻き込まれるのは嫌だ」

という思いもあるのかもしれません。


そして、こういう心理を、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 
『サッカー効果』

他のメンバーが手を抜くのを見た人が、
自分だけ損をすることを避けるために
自分も手を抜こうとすること

Jackson&Harkins(1985);Kerr(1983)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

といいます。



■そしてこの話は、
決して他人事にできません。

というのも、このようなメカニズムは

「大人数集まった会議」

でも起こりうるし、

「人混みで起こった
 (自分が巻き込まれるかもしれない)トラブル」
 
など、日々の生活で
頻繁に起こりうる話だからです。



■人が多くなると集団心理が働き、
いわゆる、

「フリーライダー」

が生まれやすくなる。。。


このことを認識しておくのは、
”見て見ぬふりの集団心理”を
生み出さないためにも、大切なことでしょう。



■ちなみに、上記の

「フリーライダー」を発生しづらくするには、
いくつかの施策が有効です。


それは、

・役割分担を明確にする
 
・責任を明確にする

・情報共有をする

などの調整です。


例えば、

「あなたが今日の会議の主担当です」
(=役割分担を明確にする)

「参加した人は、自分の意見を必ず言うこと」
(=責任を明確にする)

「今回のゴールと、皆に期待していることは◯◯です」
(=情報共有をする)

などを事前に行えば、

人数が増えても、
集団心理のマイナス効果を
低減できる可能性は高まるでしょう。



■集団心理の理屈を知れば、

”傾向と対策”

も行うことが
できるようになります。


そうすれば、もしも自分が
人混みの中で体調が悪くなった際でも、


「そこのアナタ!助けて下さい!」

と、役割と責任を
特定の人に与えるように、

”誰かを名指しで援助依頼をする”

ことで、援助してもらえる率も
高まっていくのでしょう。


会議の参加も、意図的に
高めていくこともできそうです。


、、、ということで、

・人が集まると自分だけが損をしたくないという
 ”サッカー効果”が発動する。
 
・それは誰が悪い、ではなく、
 グループダイナミクスとして起こりがち。
 
・ゆえに、そういうものと理解した上で、
 事前に調整を行い、見て見ぬふりを
 防ぐ施策を行うことが重要
 
というお話でした。
  
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
本日も皆さまにとって、素晴らしい1日となりますように。

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<本日の名言>

黙って服従することは、しばしば安易な道ではあるが、
決して道徳的な道ではないのだ。それは臆病者の道なのだ。

ヴィクトル・ユーゴー(フランスの詩人/1802-1885)

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【編集後記】
家にテレビがないため、いつもオリンピックの結果が事後で知ります。
テレビがないことをちょっとだけ惜しく思った夏。
ライブ感、いいなあ。


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