配信日時 2021/08/04 10:54

ダニング・クルーガー効果 ~自分を高く評価していたら危険?!~【カレッジサプリ】

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令和3年8月4日(第2722号)


「ダニング・クルーガー効果」~自分を高く評価していたら危険?!~


株式会社カレッジ 紀藤康行
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(本日のお話 3565字/読了時間4分)


■こんにちは。紀藤です。

さて、本日のお話です。

「ダニング・クルーガー効果」

という興味深い研究があります。

これは、

「無能な人ほど、自分の能力を
 過大に見積もってしまう」
 
というお話。


今日はこの論文と、そこからの学びを
皆さまにご共有させていただければと思います。

それでは早速まいりましょう!


タイトルは、



【ダニング・クルーガー効果 ~自分を高く評価していたら危険?!~】



それでは、どうぞ。



■こんな名言があります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「無知は、知識よりも自信を生むことが多い」

 チャールズ・ダーヴィン(1871)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「知らないこと」が、
自信を生み出してしまうことがある。

今から100年以上も前に
ダーヴィンが言いましたが、

実際こういうこと、
まま起こっているようですね、、、(汗)


そして、このことを
研究によって実証したのが


『ダニング・クルーガー効果』


と言われています。



■「無知」は実に危険です。


この事を考える上で、
ある銀行強盗のエピソードがあります。


1995年、米国ピッツバーグにて
マッカーサー・ウィーラーなる人物が
白昼堂々、銀行強盗に入りました。

変装もせず、正面突破です。

、、、まあ、当然捕まりますよね(汗)



そして、警察に捉えられた後、
ウィーラーは監視ビデオに移っている
自分の姿を見せられ、こう呟きました。

「レモンジュースを飲んだのに・・・」

、、、と。

曰く、ウィーラーは

”レモンジュースで顔をこすると
 ビデオテープのカメラから見えなくなる”
 
という説(というか噂話)を
信じていたらしいのです。

なので、

「白昼堂々、変装もせず正面突破(!?)」

で銀行強盗をした、
とのこと。



■そんな、ネタみたいな話やん、、、

と思いそうですが、
これ、実際にあった話。


これは、何が引き起こしたかというと

「自分が信じる理論は正しい」

と盲目的に信じてしまったこと、

広く言えば「無知」が引き起こした自体、
といえるでしょう。


もう少し細かく言えば、

「自分が信じていることを
 客観的に見極める能力がなかった」
(=メタ認知力がない)

ことが招いた結果です。


さすがにレモンジュースは、、、
と思いそうですが、

もっと身近なことであれば
私達も同じようなことをしていそうです。



■たとえば、

数々の心理学の文献でも、
同じような事が言われています。


・社会的に無能な少年たちは、
 自分が社会的な礼儀を欠いていることに
 ほとんど気づいていない

(※学生時代の自分を振り返り、耳が痛いです汗)


・テストの成績が悪い学生は、
 成績の良い学生に比べて、どの問題が正解するかを
 正確に予測できない

(※はじめてのTOEICテストを
  10年くらい前に受けたときに、
 「こりゃ700点くらいとれたな」と思ったら
  実際は400点だったことを思い出しました(汗)


・事故に遭ったドライバーは
 熟練した経験豊富なドライバーに比べて、
 反応テストでの自分のパフォーマンスを正確に予測できない
 
(※無謀な運転をする人は、
 自分がそうであることに気が付かないのですね)
 

、、、というように。



■つまり、


『能力がない人は、
 自分の能力を正しく見積もれない』


のです。


このことについて、
ミシガン大学のダニング・クルーガーは

「実際にどうなんだ?」

ということで、以下
実験をしてみました。


それが、こんな3つの実験でした。


1)ユーモア・・・

「何が面白いと感じるのか」
プロのパネリストの結果と本人の予測を
照らし合わせてスコアをはかる


2)論理的推論・・・

法科大学入学試験から引用して
20項目の論理推論テストを行う


3)文法・・・

「文法的に正しい英語を識別する」という
文法テスト20問を用意した


これらのテストを、
大学の学部生50~100人ほどを対象に行い、


「自分の成績は、
 全体のどのあたりに位置する思うか?」 


を自己評価させたのでした。



■すると、以下のような
結果がわかりました。


まず、1つ目が、
参加者の多くは、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『自分の能力を
 仲間と比べて過大評価しがち』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
であるということ。


そして、2つ目は、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『他の人と比べて成績が悪かった人は
 自分自身を過大評価していることに気づいていない』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
ことでした。



■特に下位4分の1の成績の人は、

”自分をめちゃくちゃ
 過大評価している”

のでした。


例えば、文法のテスト。

下位4分の1の人は、
以下のような結果になりました。



◯{実際のテストの結果、自己の能力}
 =10パーセンタイル

(実際は、自分より下に10%しかいない)


◯{自己評価でのテストの結果、自己の能力}
 =62パーセンタイル

(自己評価では、自分より下に60%以上いると思っている)




そして、これらの結果は、

1)ユーモア、
2)論理的推論、
3)文法

いずれの結果でも
同様の結果になったのでした。


つまり、


【能力が低い人は、
 自分の能力の不足に気づかない】
 
(=メタ認知力が不足している)


ことが、研究結果として
わかったのでした。



■では、「能力が低い人」には

どのように、自分の能力の低さに
気づかせることができるのか?


、、、ここが気になるところです。


なぜなら、


「能力がない人」に対して

”能力がないことを自覚させる”には、

”能力をつけさせる”しかない、


わけです。

しかし、

「メタ認知力を高めて、
 自分を正しく見積もれるようにする」

ことが、

「無能から有能への第一歩」
になるわけですが、

そもそもそれが出来たら
「能力がある状態」なわけですから、

まさにパラドクスです。





■いずれにせよ、

ダニング・クルーガーは、
このパラドクスにチャレンジしました。


それは、


・「自分が能力がない」ことに気が付くための、
 
・「必要なメタ認知スキルを身につけるトレーニング」を行い、
  
・参加者の変化を調べる


という実験を行ったのです。


具体的には、


”論理的推論について
 信憑性を検証するためのトレーニング”
 
を被験者には実施をする。


そして、対照群には、
”関係のないタスク”を
同じ時間やらせました。



■結果としては、

相変わらず、

「下位4分の1の参加者は、
 自分のことを過大評価していた」
 
のですが、

とはいいつつも、

「全体的にはかなり校正されていた」
 
ことがわかりました。


つまり、


【自分の能力がないことに気付くための
 「メタ認知力を高めるトレーニング」は、
 一定の効果がある】
  

と言えるのでしょう。



■と、ここまでが
論文内容のご紹介でございました。


ここからは感想ですが、


よく研修でも、

「問題児と言われている人ほど、
 その事に気づかない」
 
と言われます。

しかし、まず能力を高めようとするなら、

”自分の能力がどれくらいかを
 正しく認識する”

ことが極めて重要なことに
なるのでしょう。

(特に下位4分の1などの人に対しては、、、)



■すると、こと「能力を高める」という観点で
考えてみると

「自分で自分をどう思うか」
(内面的自己認識)

そして

「他人が自分をどう思っているか」
(外面的自己認識)

を一致させていくプロセスが
「メタ認知」を高める重要な要素になりそうです。



とすると、
そのためのアクションとして

「定期的に、自分がどう見えているか
 他者からのフィードバックをもらう」

ことは、自らを磨く、
重要な活動だと言えそうです。



■そして論文を読みながら、


TOEICの点数を過大評価していたり、

中学生のとき、ハンドボール部で
メンバー14人中、背番号が14番
(つまり一番ヘタ)だったのに、
「自分は出来る!」と思い込んでいたことなど、

その他、色んな出来事を思い出しました(汗)


まさに、能力が低い人は
自分のことを理解できていない、
典型であったと思います。

今は多少なりとも自己認識が
マシになっていることを願いつつ。



※本日のお話は、以下論文よりご紹介いたしました。
『Unskilled and Unaware of It: How Difficulties in Recognizing One's Own Incompetence Lead to Inflated Self-Assessments』
(無能であることに気づかない:自分の無能さを認識することの難しさが、自己評価の肥大化につながる)
 Journal of Personality and Social Psychology誌より(2000年1月)
https://www.researchgate.net/publication/12688660_Unskilled_and_Unaware_of_It_How_Difficulties_in_Recognizing_One's_Own_Incompetence_Lead_to_Inflated_Self-Assessments
 
 
最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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<本日の名言>

あなたを支配するのは、出来事ではない。
その出来事に対するあなたの見方が支配するのだ。

マルクス・アウレリウス(古代ローマの皇帝/121-180)

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【編集後記】
論文が最近おもしろいと感じてきました。
自分の読解力のレベルもまだまだと感じますが、
これも少しずつ伸ばしていきたいと思います。

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